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うっす。



「んで?断ったのか?」

「………まあな」

「本当にもったいねぇな!」


 俺の友人。寺山斎(てらやまいつき)は腹を抱えて爆笑している。

 ネタは勿論今朝の事だ。


「だいたい、ああいう女は遊びでポンポン男を作っているに違いないんだよ。………例外はあるけど………」


 斎はさらに笑う。終いには地面を叩いていた。

 この話に何の面白さがあると言うのだろうか?


「ひひひひ、ひー、…多分そんなこと思ってるのお前だけだぜ、絶対………ブホッ………!」


 いつまでも笑っている斎にボディブローをかました。そのまま腹をおさえてもがく斎。


「………突然それはねぇよ、優………息できねぇ………」


 当然だ。息を出来なくさせたんだからな。

 ………まったくこの話の何処に面白さがあるんだ?

 俺の愚痴を聞いて笑うとか頭でも打ったのか?

 いや、元からだったな………。

 だが、このケースは初めてだ。斎はウザくても人をバカにするような事はしないやつなのだ。

 じゃあ、何故笑ったんだ?

 もしかして――


「――隙あり!」


 間抜けな声が隣から聞こえた。

 いつの間にか復活していた斎にウィンナーを盗られた。

 あっ、そう言えば今は昼飯食ってたんだった。

 すっかり、毒気を抜かれた俺は斎の弁当から卵焼きを盗ってやった。




◆ ◆ ◆ ◆


 午後の授業というものはどうしても眠くなるモノだと俺は思う。

 俺は垂れ下がってくる瞼に渇をいれて、寝ぼけ眼を指で擦った。

 ………よりによって社会か。

 ただ聞いているだけの授業。これ程までつまらない科目は国語と社会の二つだけだと俺は思う。


「ぐー………」


 隣からデフォルメな寝息が聞こえてきた。

 潤だ。残念ウザメンがデフォな寝息を………!

 誰トクだよッ!

 女子はこんな男子の行為を可愛いと思うみたいだが、これの何処が可愛いのだろうか。

 解せぬ。


「おい、潤ッ!起きろよ。今は授業中だぞ」


 あっ、怒られた。ざまぁ………!

 っと言いたい所だが、社会科の教師は女だ。

 何が言いたいかって?


「あー、すいませんー」

「まったく………()はないからな」


 お前の()は一体いつなんだ。

 多分、教室にいる男子の全員が思っているだろう。

 今年に入ってその台詞を少なくとも50回は言っているような気がする。

 つまり、言いたいことはこうだ。

 教師のフラグ回収済みなので、学校には彼の敵が居ない、と。

 こんな些細なことで気がたってしまう俺は短気なのだろうか。




◆ ◆ ◆ ◆


 あれ以来、彼は私を見なくなった。

 私は見ているのに、彼は私が見えていないかのようだ。

 私に近付いてくるのは下心だけのクズ共だけ。

 一人違う人は居たが、私自身を見ていない。まるで多人数の中の一人になんとなく話しかけるような、そんな感じだった。

 私は彼に見てもらいたいのだ。

 お前らなんかに見てもらいたくなんてない。

 汚れる。

 しかし、本音を言うわけにはいかないので、取り繕った笑みを浮かべておく。

 それだけでクズ共は色めき立つ。バカらしい。

 私が何をしたら、彼は見てくれるのだろうか。


「はぁ………」


 人知れず私の苦悩は増えていくようだ。




◆ ◆ ◆ ◆


【帰り道】


 あー、と。どうしようか………。

 喉乾いたからコキ・コーラを買って飲んでいたのだが、どうやらナンパの場面に出会してしまったようだ。


「やめてください!」

「そんなつれねーこと言ってないで俺達と良いコトしようぜ」

「最初は痛いかもしれねぇけど、後から気持ちいいからさ」

「や、やめて………いやぁぁぁッ!」


 あぁ、ナイスちんぴら!ブラが見えた!

 心の中でサムズアップしておく。

 ………いや、助けようと思ったよ?

 でも、男の子なんだもん。仕方ないよね。


「あっ、まて………!」


 その女の子はちんぴらの隙をついてスルリと抜け出してきた。

 ………あれっ、何でこっち来るの?


「た、助けてくださいッ!」


 やっぱりぃぃぃぃぃッッ!


「嫌だよ!こっち、来んな!」

「待って、置いていかないで………!」


 女の子は追いかけてくる。

 当然、ちんぴらも追いかけてきた。

 来るなよ。


「右に行けっ!」


 二股の道が来たのでそう言ってやる。

 俺はこの地区を知り尽くしている――


――なので、左に曲がった。


「何でぇぇぇぇッ!」


 女の子の叫びが聞こえた。

 大丈夫。そっちにいけば行き止まりだから。

 最高に気持ち良いコトをしておいで。


「ふぅ………、なんて迷惑な女だ――」

「――逃がしませんよぉッ!」


 ここまで来ると執念を感じる。


「テメッ、なんで来たんだよ!」

「ヤられるなら、道ずれに………!」


 俺にそっちの気はない!アーッ♂とか言わないからね!


「待てやゴラァァァァッ!」「にげんなやぁぁぁぁッ!」


 ちんぴらが走ってきた。

 あぁ、めんどくさい。


「痛い目見たくなかったらその女をおいてけ」

「あっ、どうぞ」

「即決!?」


 俺は関係ない。オマエ、オレ、シラナイ。

 すると急にちんぴらが話し始めた。


「おい、誰かに言われたらヤバいぞ!」

「………確かに」


 うんうん、ヤバいぞ~。だからどっか行ってくんない?

 ほら、俺争いとか暴力は嫌いだからさ。


「じゃあ、口を聞けなくなるまでボコボコにするか」


 そうそう、だからどっか行ってt………………はい?

 目の前を見れば指をゴキゴキと鳴らすちんぴら。

 ちょ、何で!?

 何でそんなやる気なんなん!?

 隣を見れば女は建物に隠れていた。

 否。多分逃げたな。

 ………………………クッソォォ!あの尻軽女めぇぇぇぇッ!


「お遊びの時間だ、哀れな地味男(モブ)


 ちんぴらが主人公っぽい事言っても似合わないからぁ………!

 あぁ、めんどくせぇ!




◆ ◆ ◆ ◆


 乙女を見捨てようとした彼には制裁を与えなければ。

 そう思い私は建物の陰に隠れた。本当はそのままに逃げてもよかったが、少し気になったので一部始終を見ることにする。

 ちんぴらは携帯を取り出して、誰かと話し始めた。どうやら仲間を呼び始めたようだ。

 これには彼も耐えれないだろう。なんせこれから暴力を振るわれ力尽きるまでヤられるから。

 私は知っている。

 あのちんぴらはどちらもイケると。

 そして絶望に染まる彼の顔を見ておきたかった。

 しかし、あろうことか欠伸をした。そして小指で耳を掃除し始めた。

 なんと呑気なのだろうか。もしかしてそっちの気があるのだろうか?

 ばっちこい、かもーん!的な。

 少し経つとちんぴらの仲間がやって来た。

 皆、屈強そうだ。

 さて、彼がどう調理されるのかじっくり鑑賞しましょうか。






次回は土曜日。

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