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あ久しぶりですね。


遅れてすいませんでした。詳しいことは活動報告にて。

「そこのお方、助けてはくれまいか!?」


 なんだろう、ものすごく面倒臭そうだ。

 そんな時は無視に限る。聞こえてませんよー、アピールしとけばなんとかなるでしょ。………多分。

 俺は歩みを強めた。


「ちょ、ちょっとぉ!待ってぇ………!」


 なんか、うん………。出て1分も立たない内にキャラ崩壊しやがった。

 さっきまで堅物そうだったのになんだこの変わりようは。痛いにも程がある。


「おう、待てよ兄ちゃん」


 挙げ句の果てに不良にまで目をつけられた。

 これお前のせいだからなとその女子を睨むが全く気にした様子はなく、むしろ俺が巻き込まれたことに喜んでいるようにも見える。

 なんでこう俺ってついてないかね………。俺は二人の不良に振り向くと笑顔で、はい、何でしょうか?と問う。


「おい兄ちゃん。あんたここのルールってもんを教えてやる………よッ!」


 いきなり殴りかかってきた。ルールと言ったって引っ越して来たばっかりなのでわかるわけないじゃん。てか、そんなルールあってたまるか。

 反射的に俺はそれを避けるとバックステップの要領で後退する。

 そして両手を挙げる。これ以上喧嘩をしても疲れるだけだしダルい。不良達の狙いはあの女子だろう。

 俺には関係ない。


「別に俺はやりあう気なんて無いし邪魔はしないからさ」

「言っただろう。ここにはルールがあるって、他人の領域(テリトリー)に入っておいて黙って帰らせるわけにはいかねぇぜ」


 お前は野犬の群れか。テリトリーって、八十年代のアニメじゃあるまいし。

 もう一度殴りかかってきた不良の一人の腕を持ったまま後ろに受け流すとそのまま体落としをした。

 体落としとは柔道の技の一つで護身術でも教わることがあるかなりマイナーな技でもある。


「グハッ」


 それに加え引き手を離したため重力に吊られるまま固い地面に背中から衝突した。不良は肺から空気が抜けたため苦しそうにもがく。


「てめぇ………!」


 もう一人の方も向かってくるが見え見えな蹴りをハラリとよけて足を引っ掛ける。

 これで地面を支える足が無くなった。あるのはそのまま倒れて頭を地面に打つ不良の未来だけだ。

 静かに喧嘩は幕を閉じた。




◆ ◆ ◆ ◆


「すいませーん、この店主特製ティラミスと北海道産生クリームのショートケーキを二個ずつくださーい」

「い、いや。ちょっと食い過ぎなのでは………」

「あっ?俺はお前の初めてを守ったんだからこのくらい普通だろ」


 そう言うと出されたティラミスを一口食べる。うわぁ、超うめぇ!

 甘さ控えめのチョコクリームとチョコスポンジの層がたまらなくマッチしてやがる!う、腕が止まらない。


「い、いや、奢るとは言ったけれども………、もう少し考えてはくれまいか?」

「むり」

「即答!?」


 俺はお前を助けたんだぞ。当然対価は支払ってもらう。

 俺はその女子に振り向いた。結構な美少女だ。それにこんな話し方だ、クラスでもかなり浮く存在だろうと予想する。

 

「そういえばお前名前何て言うの?」

「い、今さら………、こほん!私の名前は小雪槙春(こゆきまきはる)って申す」

「………男みたいな名前だな。名前と姓反対だろ、普通」

「結構気にしてることをズバズバ言うのだな………」


 お前は気にしてても、俺はしないから。しっかし、よくこんなお店知ってたな正直意外だ。女子力的な問題でだ。


「だってここ私の家だし………」

「えっ、マジ?てか読心術………」

「声に出てましたよ」


 そうカウンターから声をかけてきたのは、さっきティラミスを運んできてくれたナイスミドル。


「父さん、言わなくていいのに」

「え、ちょ………は?」


 父さん………?

 ギギギと効果音がつきそうなほどガクガクに振り向くと微笑みながら手を降るナイスミドル。


「………すいませんでしたぁ!」


 とりあえず額から血が出るほど強く土下座をかました。




◆ ◆ ◆ ◆


「いやー、ついに我が娘も男友達を作ったのか~」  


 ナイスミドルはしみじみと呟いた。俺はじっと聞き入っている。いや、正確には聞き入らされているといった方が良いだろうか。

 さっきから小雪の自慢ばかりを言いながらチラチラとこちらを見つめてくる。まるで、なにかを期待するように……。

 無料でもらったショートケーキも喉につまりそうだ。今の俺の顔は多分顔文字で言う(T-T)な感じだと思う。

 本当にすごいんだわ、ナイスミドルの視線と後ろの小雪の土下座が。小雪はナイスミドルにギリギリ見えない位置でずっと額を床につけている。おい、あれ痛くないのか?

 少し心配したが大丈夫だろう。勘が告げている。

 てか、お前友達居なかったんだな……。俺と同類か。悪い気は……しないな、うん。

 

「あの、そろそろ帰りたいんですが…」


 空をみれば暗くなり始めている。六時を少し過ぎたところだった。

 ナイスミドルは壁にかかっている時計を一瞥すると「もうこんな時間か」と呟き店の奥に引っ込んでいった。うわー歩き方が優雅だ~。本格的に作法とか学んでるひとだわー。

 親子でこうも違いが出るのかね……。色々と残念。


「おーい、お土産いるかい?」


 いつの間にか顔を見せた腕には白の箱が握られている。


「とりあえずケーキ入ってるからね。あまり揺らさないように」


 あぁ、この人いい人だ。俺は思った。 


 次回は来週中には投稿すると思います。……多分…。

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