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ネット上の恋

作者: 玲瓏

君の一番に

成りたいわけではない

君の二番に成りたいんだ

君が一番に

大切な人と

喧嘩したり

仲が悪くなったとき

君を支えられる

二番に成りたいんだ

でも分かって欲しい

僕の一番は

君なんだ




 なぜだか分からない。

 僕は日頃よく利用してるゲーム攻略サイトの、雑談掲示板にこの詩を投稿した。


 当然の事だが、掲示板の住民からの冷やかしや、冷たい言葉がレスされた。

 だけど、彼女だけは違った。 彼女からのレスは、


「私も…。そう思うよ」


 その時に僕は理解したんだ。


 僕は彼女の顔も声も、僕と彼女を繋いでる文字を打っている手さえ知らない。


 でも僕は、そんな彼女に惹かれてるんだと思う。

 いや、惹かれてるんだ。


 だけど、このインターネット上だけの関係では彼女に気持ちを伝える事も出来ない。


 だからこそ、僕はあの詩を書いて、そして投稿したのだろう。


 あなたの一番にはなれないのは分かってる。だからこそ、あなたの二番にさせてください。




 時間は経って、僕と彼女はサイト内で相談し会ったり、たわいもない話をしていた。


 そんな時に彼女が一つのスレを立てた。


 タイトルは"引退"します…と。


 僕は一瞬頭が白くなったが、そこに書かれている理由を熟読した。



 彼女は婚約したとの事だった。


 引退の理由に続いて、彼女がサイト内で仲の良かった人などに宛てたメッセージがあった。


 僕は当然、自分に宛てたメッセージを探した。

 でも、スレ内のどこを探しても僕に宛てたメッセージは見つからない。


 数分経つと、住民達が彼女にメッセージをいれ始めた。


「ありがとう」


 とか、


「幸せになれ!」


 とか…。


 僕は何て入れれば良いか分からないまま、僕自身もサイトから離れた。




 サイトを離れてから1ヶ月くらい経った時に、僕は携帯の機種を替えることになった。

 携帯のメモリーは全て消えてしまうとの事なので、携帯内のスケジュールなどのファイルを整理していると、あのサイトの名前が目に映った。


 僕は携帯を替える事を機に、これを最後のサイトへのインと決めて懐かしいサイトを開いた。


 雑談掲示板を開いても、見慣れないスレばかりが目に付いた。


 だけど、掲示板の最下層に、あのタイトルがあった。


「君と私」


 僕が投稿した詩のタイトルをスレタイトルとして投稿したスレだ。


 懐かしむようにスレを開き、詩を読み直す。



 今改めて読むと分かった。


 この詩は嘘をついていた。

 僕は…彼女の一番に成りたかった。


 だけど、決して叶わぬ恋…。

 僕は逃げていた。



 僕はスレを変更した。 "あなたの一番に成りたかった"…と。


 すると不意にレスが入った。

 最下層のスレなんて誰も来ないはずなのに…。




「私には一番だったよ♪」




 僕は泣いた。


 嗚咽が近所にも聞こえているのも気にせず、僕は泣き続けた。



 それから、そのスレは動くことなく、大量のスレに埋もれて消えていった。

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