おまかせフルコース
担当の人がにこやかに言う
「ああ、今回初めてなんですね、では当店、系列店でも大人気のおまかせフルコースになさいますか?」私は同じようににこやかに、お願いします!と答えた。
髪にカラーをしてもらう、待っている間にお飲み物は何がいいですか?と聞かれて
「紅茶をお願いします」と言う。
紅茶を飲んでしばらくすると、妙に眠たくなってきた……
ういいいん、ういいいいん
と遠くで音が聞こえる
ういいいん、ういいいいん
重たいまぶたをうっすら開ける、そこには完全に坊主になった私がいた。
「なんでどうしてあのう、これは夢なんですよね」
と言ってみたが頭皮は涼しかった。
店長さんがやってきた。
鏡の向こうの私は想像以上に似合っていなかった。
「これはどういうことなんですか?」
そういうとにっこり笑って。
「当店ではお客様のご要望により、お客様の髪を使ってかつらを作らせていただいております」
加藤様は少しカットするとおっしゃっていたので、一旦全部剃らせていただいた後に、適切な長さでかつらを制作に入らせていただきます。
「は?え?は?」
あたふたしている私に、店長さんは来店した時のファイルに挟んだ紙を見せてきた。
そこにはかつらにチェック、カラーにチェック、今よりカットにチェック。
更に【騒ぎません、全て委ねます】にチェックが入っていた。
私は呆然とし「こんなの見えない!」
と言ったものの、通用しなかった。
今日は仮のかつらを貸し出されるという、後日かつらが仕上がったら、連絡が入るとの事。
私は泣きながらサインをした。
ついでに次回来店の予約もとった。
説明書の文字は確かに小さかった、私の頭はそれより小さく見えた。
帰宅後、スマホに通知が鳴った。
「Hair Bald head 全国店舗突破!
次回予約完了しました。
お友達紹介割引、次回来店時引きです。
なお、全剃りコースは人気の施術のためキャンセルは不可です」
画面を消してから、店のロゴを懸命に思い出した。
の文字だけ、やけに大きかった気がする。
それでも私は、あれは「お洒落だったな」と思い出していた。
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