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魔王に転生しましたが、勇者と魔獣の子供との異世界家族生活、はじめます!  作者: みおゆ
第1話:転生したら魔王で母で、勇者とともに暮らすことになりました
3/53

1-3:ピンチは回避できたけど

「――ムイ!」


 ムイは二人の兵士から首に槍を掛けられ、身動きが取れないようにさせられていた。ムイは目に涙をいっぱい溜めて、わたしに助けを求めていた。


 わたしは次に兵士を睨みつけ、咄嗟にお願いする。


「離してください。その子は、わたしの――」


 ……一瞬悩んで、わたしはこう言い切る。


「――わたしの子です。離してください」


 長々とこの子との経緯を話している場合ではないし、ここは嘘も方便だ。


 すると、兵士たちは途端にわたしを見て動揺しだし、そのうち一人の兵士が、


「ま……魔王……!?」


 ――と、呟いた。


「……魔王……?」


 わたしは訳もわからず首を傾げる。


 一方、兵士たちはムイを離して、すぐにこの場から離れていった。


 ……よかった、ひとまずムイは解放してもらえたみたいだ。


「ムイ、大丈夫!?」


 わたしはすぐにムイの元へ急ぐと、ムイも震えながら立ち上がって、わたしに抱きついてきた。


「母ー! ごわがっだー!」

「ケガはない? 大丈夫?」

「いだいとご、ないぃ……!」

「……よかった。ムイ、これからは勝手に一人で走っていっちゃダメよ?」

「……うん」


 わたしはムイを一度強く抱きしめてから、優しく離した。ムイはしばらく嗚咽を上げていたけど、やがて涙も引っ込んでいった。


 ムイが落ち着きを取り戻したところを見計らって、わたしは何があったのかを聞いてみることにした。


「ムイ、さっきのあれは……どうしたの?」

「……ムイ、はじめてみるとこみつけて……おもしろそーでいったら、いきなりつかまった……」

「そんな、どうして……?」


 ムイは小さく首を横に振った。きっとムイ自身も、事情がわからないのだろう。


 ――しっかし……兵士側の事情はよくわからないけど、こんな小さな子にいきなり手を上げるなんて、それは余程の事情があるんでしょうねぇ……?


 フツフツを湧き上がる怒りを抑えつつ、わたしはふと兵士の言葉を思い出す。


 兵士がわたしを見て言った――『魔王』という言葉を。


「まさか……本当にわたし、魔王に転生して……?」

「母、どーした?」


 わたしは「なんでもないわ」と言って、ムイの手を取った。


 とにかくこの町へは近寄れない。また違うところへ向かうとしよう。


「母、ここいかないのか?」

「うん。ここはちょっと危なそうだから、違うところへ行きましょう」

「……そっか」


 しゅんとするムイ。そんなムイの姿を見て、ちょっぴり心が痛むわたし。


 本当は連れて入って、ムイについて聞いて回りたいところでもあるけど、また兵士と鉢合わせしたら危険だ。何をされるかわからない。


 ここはひとまず離れておくというのが、無難なはず。


 寂しそうに町を見つめるムイ。わたしは膝を折り曲げて、ムイと目線を合わせて伝える。


「……今は入れないけど、しばらくして……安全になったら町へお出かけすればいいわ。今はムイの、本当のお母さんを探しにいきましょ?」


 ムイは、また泣きそうな顔になる。


 ――やっぱり、町へ入りたいのかしら……。でも、今近づくのはやっぱり危険だし……。


 ……なんて考えていると、ムイはわたしの横を黙ったまま通り過ぎてしまった。


 とぼとぼと先を歩くムイ。わたしはただ、半歩後ろをついて行くことしかできなかった。

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