表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/53

2-6:勇者様公認の魔法使い……?

 馭者(ぎょしゃ)の男性に言われたとおり、しばらく道なりにまっすぐ走っていると、一際目立つ赤い屋根の家が見えた。


 ムイは扉のノックして、「たのもー!」と声を掛けた。


 中から人が出てくる様子はなく、ムイはもう一度扉をノックして、さきほどと同じ声掛けをした。しかしそれでも誰も出てこないので、ムイはもう一度ノックし、声を上げようとしたときだった。


「あー、もう! 聞こえてるわよ、うるさいわね! 今何時だと思ってんの!?」


 ダン、と勢いよく扉が開かれ、中から赤毛の女性が出てきた。


 吊り目でいかにも気の強そうな女性は、クルクルの巻き髪を振り乱しながら、キョロキョロと辺りを見回し――やがて足元にいたムイの存在に気づき、「ひょわっ!?」と驚きの声を上げ、ぴょんと後ろへ飛び退いた。


「な、な、な……なんなの、アンタ?!」


 警戒する女性に、ムイは落ち着いた口調で答える。


「ムイはムイだ。おまえ、マホーリア?」

「いきなり失礼な物言いね、このガキ……!」


 女性はため息を挟んでから、


「そうよ。アタシがマホーリアよ。かの有名な勇者、アロン様公認の魔法使い、マホーリア・スカーレット!」


 自慢げに自己紹介したマホーリアを、ムイはただ静かに聞き流しながら、こう話す。


「ムイ、マイゴなった。たすけてくれ」

「はぁ? 何このガキ……少しは驚いたり、尊敬したりしてよね」


 マホーリアは不満を垂れつつ、「……で、迷子、ですって?」とムイの話を聞く姿勢に入ってくれた。


「お生憎様だけど、アタシ、迷子の子は受け付けてないから」


「でも、サカナのおっさん、おまえにあえばユーシャのとこつれてくれる、いってた」


「はぁ? 何、サカナのおっさんって……ん? ってか、待って……アンタ今、勇者って言った?」


「うん。ムイ、マイゴ。ユーシャさがしてる。それと母」


「え? え? え? ……ちょっと待って、母ってどういうこと? アロン様を探してて? 母を探してて? え、でもアロン様は……。母って、誰のこと?」


「母は、ユーシャのおくさん!」


「〜〜〜〜〜っ!?」


 マホーリアはムイの言葉を聞くと、その場で膝から崩れ落ちてしまった。


「……マジ?」

「なー、ユーシャのとこ、つれてってくれ」


 どうやらマホーリアの耳に、ムイの声は届いていないらしい。

 すっかり意気消沈してしまっているマホーリアを見て、ムイは困惑状態だ。


「マホーリア、ムイのこえ、きこえるか?」

「あ、アロン様……」

「これ、ダメなやつ」


 ムイは悩んだのち、マホーリアの腕を掴むと、そのまま家の中へ引きずっていった。

 それから床に寝転がせ、家の中から枕と毛布を探し持ってきて、マホーリアの頭の下に枕を敷いてやり、さらに毛布を掛けてあげると、毛布の上からトントンと尻尾で優しくさすった。


「げんき、もどーれー」


 数分して、それはようやく効果が現れ、マホーリアは突然身体を起こした。


 意識を取り戻したマホーリアの瞳は、さきほどの生気の抜けたものとは正反対で――すっかり、執念に燃えたぎっていた。


「アロン様を横取りした女……絶対に許さないッ!!」


 怒りで身を震わすマホーリアを見て、ムイはやれやれと、こう呟くのだった。


「……これ、めんどうなヤツ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ