オマケ2 オーウェンの過去
_父さんが嬉しそうな顔をして言っていた。オレはこの家の扉の前に捨てられていた。それは、子がいない自分達に神様がくれたんだって。
血が繋がってなくても愛してくれた父さんも母さんもオレは大好きだ。
だから、その話を聞くのが好きで好きでたまらない。だって、父さんや母さんはその話をする時に、とっても幸せそうな顔をするのだ。
「私達のオーウェンは働き者だね」
母さんはもういい年だから、ベッドから起き上がれなくなった。
「ニシシシ、オレは働くのが大好きだから!」
明るく笑う。母さんが大好きだと言ってくれたこの顔で。
(だから、そんな顔をしないでくれよ…!)
申し訳なさそうな幸せとは程遠い顔。
それから、母さんは笑顔も見せず、亡くなった。病気だった。でも、治すには多額のお金が必要だったのだ。それを母さんは最後までオレ等に言わずに死んだ。
父さんはお金さえあればと悔やんで、それから逃れる為に酒を浴びる様に飲んだ。
毎日、毎日、毎日。酒を浴びる様に飲む父さんは、人が変わった様にオレに暴言を吐き始めた。
酒が足りなくなれば殴られ、店にも顔を出さなくなった。
(オレが…オレが、頑張らなきゃ…!)
パン生地を打って焼く。
パン生地を打って焼く。
それを繰り返す、色が無い毎日。
でも、お客さんがそれを食べて喜んでくれる。それだけが、生き甲斐だった。生きていく為の支えだった。
_それなのに…
「は…?売った…?」
パン屋に向かおうとした時に言われた言葉は衝撃的なもの。
「だから、金が無いから売ったって言ってんだろ!!?」
その後の言葉は覚えていない。
家から飛び出して、ザーザーと雨が降る中、走った。
「止めて!!」
その言葉を無視して、重機はパン屋を無残に潰す。
「止めてよ…!」
どんどん、思い出が潰れていく。
「頼むから…」
膝を付き、嘆願しても止まらない。
「おい!居たぞ!」
野太いおっさんの声と共に多数の足音が鳴る。
「コイツを王城に連れてけば…何万もの金が貰える…!」
ゲヘゲヘと下品な笑い声。
そのまま、腕を引かれて、オレはフラフラと歩き出した。
(もう…どうでも良いや…)
綺羅びやかな王城に連れてこられたが、地獄は変わらなかった。
「こんな小汚い小僧が我等と血が繋がっているとは…汚らわしい」
目を合わせる度に、オレを罵る王様。
「イヤァッ!近付かないで頂戴!」
甲高い声と共に平手が飛んでくる王妃様。
「貴方が優秀であればこんな事をしなくて済むのに…」
嘆きながら、大人が泣き喚く様な『躾』をする家庭教師や執事。
_優秀ならば、『愛してくれる』
なら、優秀になれば、まだ生きていたいって思えるのかな?
✼
「入学式では、王族らしくして下さいね」
執事はそれだけ言って、何処かに言ってしまった。
(パン屋の前で喚いていた元貴族の子供みたいにしとけば良いか…)
時間が余って、何となく…そう、何となく、体育館裏に行ってみた。
「気持ち悪いぃ!」
見目の良い女子生徒がスズメを虐めていた。
「止めて!」
バッと目の前に飛び出した。
「何?誰?」
露骨に顔を顰められる。
「あ、良い事思いついたぁ!」
ダダダッと走り出したので、それを追うように走る。
「なぁ、何でスズメを虐めたんだよ?駄目だろ?」
まずは母さんがしてくれた様に諭す。
「わぁん…!男の子が虐めるぅ!」
何故か体育館前で泣き崩れた。
(何なんだよ…コイツ!)
「なぁ!?スズメに罪は無いだろ!?」
「わぁん!」
「答えろよ!何で、スズメを虐めたんだ!?」
「わぁぁん!」
(話が通じなくて怖いけど…!)
今のオレは王族だから…!
「お前はオレ様に従えば良いだけなんだよ!!それなのに反抗しやがって!!!」
寸前で止めようと思ったその手は赤髪の男子生徒に掴まれた。
「やめろ」
_ルルシア・ヴァイデット。オレの命に変えても守りたかった大事な人
オマケ〇〇視点の『誰が良いか選手権!!』は今日の20時までです!!
感想と一緒に教えてくれると幸いです…!




