40 また楽しくなりそうだ
血と暴力の表現があります。苦手な方はブラウザバック!
「おはよ」
「お゙はよ゙うございます…」
オーウェンがゆっくり、ゆっくりとベッドから起き上がる。
僕は徹夜した。楽しかったね。魔術式を書き込むのは。
本当は、暴力とかから守る為の防衛魔術だけを付ける予定だった。けれども、興が乗った僕は、『オーウェンが他者から危害を与えられたら僕に通知がくる魔術』や『オーウェンに危害を加えたらに全自動攻撃システムが作動する魔術』。『オーウェンに危害を加えたら直ぐに全世界へ放送する魔術』とか。流石に後ろの2つは外した。やった人が可哀想かな?って思ったからだ。
(このワンコが危害を加えられる事は無いに等しいし、もう大丈夫かな)
僕は『貴方の防衛魔術は本気を出した私でも壊せないわ』と目を合わせたら人を殺せるくらいの最強『宰相』から言われているのだ。つまりは、そこら辺の一般人が壊そうとしても絶っっっっ対に壊れない!
しかし…
(どうやって渡そうかな…?う〜〜ん…そっと鞄とかに入れちゃう…?いや怪しまれるよなぁ…。
と言うか、2日前に会ったばかりの人を無理矢理部屋にあげてる時点で怪しい奴だし…。そんな奴から物を貰っても困るよね…!?)
どうしよう。盲点だった。
オーウェンが異様に懐いてくれていたから、自分の行動を振り返っていなかった。
冷や汗がつぅッと頬に垂れる。
「大丈夫ッスか?」
オーウェンのヒンヤリした手が僕の頬を包む。
「顔色が凄く悪い…」
(良い子だね…オーウェン…。
そんな良い子を無理矢理部屋にあげるとか最低だな自分…まぁ、こうするしか思い付かなかったのもあるんだけど…)
「そ、その…いきなり部屋にあげてごめんね…」
オーウェンはこの言葉がしっくりこないのか『う〜ん』と考え込んでから、意味が分かったのか、笑顔を向けた。
「謝罪は必要ないッスよ!ってかありがたかったし!それよりも、ベッドを占領しちまってすいません。
どうぞッス」
おぉ…貴方は女神かな…?
オーウェンは男だけど。
「ふふふ。もう大丈夫だよ。
それよりも、これをあげたくて」
サッと赤色の紐で閉じた紺色のお守りを取り出す。
「なんスか?これ?」
大体は日本に似ているのだが、神社とかお守りとかの文化は無いらしい。
それは知っていた。以前、イリアに『神社とか無いの?』って聞いてみたが『ジンジャって何ですか?』って聞き返してきた。
イリアだけが知らないのかなぁってその時は思ったが、ジェイコブさんも知らなかったので無いんだなって知ったよ。
「遠〜〜〜〜〜い国に伝わる大事な人の健康を願うものだよ」
嘘は言ってない。遠〜〜〜〜〜い国=日本だし。
「へぇ…!ありがとうございます!」
オーウェンがニカッと笑うと八重歯が少し見えた。可愛いね。
「お2人共、ご飯を持ってきましたよ!」
イリアがワゴンごと入って来た。
「よし!朝食をサクッと食べて登校しようか」
「はいッス!」
✼
と、言うのが朝の出来事だ。
今、僕はまだ寮に居た。
修羅場の、ね。
「陛下にはもう報告しましたから!」
「…っ…!でも、オレは…」
目の前に繰り広げられているのは言い合いだ。
昨日の若い男性の執事とオーウェンの。
何故、こうなったかと言うと…
まず、ご飯を食べて制服に着替えた。無論、ここで女性とバレない様に細心の注意を払ったよ。
次に、学校へ向かう為、外に出た。
最後に、偶然シーツを天日干しにしようとした執事に鉢合った。
って感じだね。
(この若い執事を脅すか?)
そう言えば、朝食時に驚いた事がある。
オーウェンの食べ方だ。マジで綺麗。僕と同じくらい。マナーとかは死ぬ気で学んで、マスターしていると笑っていた。
喋り方は教わってないからまだよく分からないらしく、入学式の日は執事が『偉そうにしとけ』って言ってたから、よくパン屋の前で威張り散らす元貴族のお坊ちゃんを真似したらしい。だからあんなにムカつく感じだったんだね。参考にする人材を間違ってるって言っといた。
ん゙ん゙。話を戻そう。つまりは、出自以外、普通の王族として暮らせるのだ。
それなのに虐めるなんて鬼だな。
喋り方くらいは教えてやれよ。ホントに。
(それにしても…)
チラリと目の前を見る。
「この私がペコペコしてやってるのに謝罪の1つもないし!これだから庶民は嫌なんだ!!」
オーウェンは俯いて黙り込み、執事はギャイギャイと吠えている。
五月蝿いなぁ…。黙らせるか
「ねぇ、執事さn」
「うるさーい!!!!」
バキャッッッ!
執事が血を吐きながら宙を舞って、地面に転がり込む。
「ぐッ…!ぎ、ギャァァァ!痛い!痛いィィ!!」
赤くなった左頬を押さえ叫びまくる執事。
(綺麗な右ストレートだったなぁ)
円を描く様に吹っ飛んでいったからね。ちょっと可哀想だって思うくらいに。
まぁ、スッキリしたけど。
「オレはもう我慢しない!
だから、陛下達が殴りに来るなら殴り返してやる!そう伝えとけよ!!」
ビシッと指を指して、ハッキリと告げた。
「行こっ!ルシアさん!」
「フフッ。うん、そうしようか」
クルリと踵を返して扉に手をかける。
「同じ教室だから、オレ、嬉しいッス!」
「え?同じ教室なの!?」
「そうッスよ!オレ、一応王族ッスから!」
(それはまた楽しくなりそうだ)
ニッと口の端を上げた。
これにて第2章完結でございます!ゴチャゴチャッてしてしまったので、後で修正しますね!
明日、キャラクターのプロフィールを投稿します!
お楽しみに〜!




