39 魔法と魔術の違い
(これ…針の要素ないな…)
ジッと折り曲げたクリップを見つめる。
ササッと力技で元に戻した。
(仕方がない。魔術で小さい穴を開けて、そこに魔法で操った糸を通そう…)
縫い物をするのに針が無いと不便だね。まぁ、そこは魔術と魔法でカバー。
「よし」
布で出来た紺色のお守り(中身は殻)を作り上げた。
(さて、ここからが本番だね)
いつも常備している白紙の紙を勉強机の棚から取り出し、そこに魔術式を書き込む。
魔術式とは、予め魔力を込めてあるので、使用者の魔力が無くとも使える魔術だ。
(『宰相』に魔法と魔術の違いとかも叩き込まれたなぁ…。その御蔭でこうして使えているけど…あれはスパルタだったね…)
✼
森に真剣がぶつかる音が響く。
「魔法と魔術の違いはなんだと思う!?」
木刀とかでは無く、真剣で斬り掛かってくる。
蛇足だが、質問に正解しないと罰の代わりに、『宰相』だけが付けている激重ブレスレットが1つ外される。要するに僕が死にやすくなる。
「えぇっと…!」
避けるだけで精一杯の僕はその質問をじっくり考えられない。
「あ!あれだ!その対象を2倍や3倍にするのが魔法で、その対象を1から作り上げるのが魔術!」
大声で答える。小さいと剣がぶつかり合う音で掻き消されてしまうからね。
「3分の1正解です!」
満点回答では無かった為、激重ブレスレットか外される。
その瞬間、僕の喉元に剣が添えられた。
「参りました…」
降参である。
「さっきの答えは、魔法は対象を2倍や3倍にする。でも、個人差や魔力量によって倍にする数が変わるのよ。魔術はその対象を『世界の理』と言う大きな式から作り出すって事。
付け加えるなら、魔術だけは平民や貴族関係なく使えるのよ。さて、それは何ででしょうか?」
また負けた為、悔しくて転がっていたがムクリと起き上がる。
「魔術は、『世界の理』に干渉さえ出来れば使えるから」
「そう言う事。でも、魔法が貴族しか使えないのは不思議なのよね。だって、魔術より魔法の方が簡単だもの」
その顔は、何か心当たりがあると言う様に曇っていた。
✼
(結局、分からなかったし…今度会ったら聞いてみよっと)
サラサラと魔術式を書き始めた。
明日は休む…と思います。申し訳ありません…




