34 多分だが、イリアは買い物に出かけた
(え?イリアが居ないんだけど…!?)
絶対に居ると信じて疑わなかった。
悲しいよ…あのサインをあげようと思ったのに…!
(いつでも渡せる様に鞄の中に入っているからね)
右手で握りしめていた鞄に目をやる。
「あ、兄貴…あの…」
左手には生まれたての子鹿の様にガクガクと震える子犬の手。
連れて来たんだったね。イリアの行方不明と言う悲しさで忘れていたよ。
どこに居るかくらいは予想が付くけどね。
「勝手を致しました。申し訳ありません」
切り替えて、営業スマイルを浮かべる。
「そんな事は良いんス!あの、助けてくれて…あ、ありがとうございます!」
もじもじと恥じらいながら語られた言葉はお礼。
それを言われる様な事はしてないんだけどね。
思わず、面食らってしまったよ。
「あの、名前を聞いても良いッスか?」
そう言えば、名乗ってなかったね。
「ルシア・ヴァイデットです。以後お見知りおき下さい」
「敬語はいらないッス!ルシア様!」
兄貴からルシア様になったよ!やったね!
じゃなくて!
「貴方様…ん゙ん゙、貴方の方が爵位が高いんだから、様付けは止めて欲しいかな…?」
「えぇ!?…じゃあ、ルシアさん!」
呼び捨てで良いのに…。でも、断ったら余計に拗れそうだから、黙っておこう。
「そっちの方が良いね。あ。あと、名前を教えてくれないかな?
お恥ずかしながら、僕は最近まで山小屋に住んでいてね。王族の名前とかを全く知らないんだ」
事実である。王乙も百合ルートしかやって無いから、そう言う知識チートみたいのも無いしね。
「オレは、オーウェン・グリーンリン。気軽にオーウェンって呼んで欲しいッス!」
王族を呼び捨てか。でも…
チラリとオーウェンを見る。期待の眼差しだ。これはこちらが折れるしか無いだろう。
「じゃあ、よろしく。オーウェン」
そう言っただけで、オーウェンの瞳はキラキラと輝いた。
やっぱり、この子は可愛いね。
オマケを3話だけ、〇〇視点みたいので書こうと思ってます!
感想と共に教えて頂けたら、幸いです。
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