25 途端に機嫌が良くなる
「ひっ…あの第3王子殿下だわ…!」
「悪魔の!?」
女子生徒も男子生徒も皆一様に怯える。
(僕が六芒星だって分かったら、これと同じく…恐怖に震えるんだろうね)
何だか親近感が湧いてきた。
身分も近いし、前世で見慣れている黒髪だし。
「第3王子殿下にご挨拶申し上げます。ふふふ、前置きはこれくらいでよろしいでしょうかね?」
サッと立ち上がり、側に寄る。
「?」
猜疑心と喜びとが、グッチャグチャに混ざり合った気持ちが全部顔に出てしまっている。
それはそうだろう。
普通なら、悪魔だと言われている人には話しかけない。
「サインを下さい」
「は…?」
ニパッと笑う僕と、信じられない様な目で見てくる殿下。
「…何て言ったか聞き取れなかったよ」
「ですから、サインを下さい」
『休み時間に第3王子殿下に会ったら、この紙にサインを貰って来て欲しいです』と言う言葉と一緒にイリアに持たされた、2枚の白紙の紙をポケットから取り出す。
「ペンはお持ちでしょう?」
「も、持っているが…」
煮え切らない態度だ。
「あ。もしかして、何か怪しんでますか?」
無理も無い。初対面でサインを強請るなんて、完全に不審者だもん。怖いよね。ごめん。
「安心して下さい。ただのファンなので」
僕はちょっと違うけどね。単なる好奇心だから。
イリアは、昨日なったばっかりだけど…ファンだと思う。




