16 恋する乙女の瞳
「待って欲しい。ごめんね、急に呼び止めちゃって…。
君にこれを渡したかったんだ。あ。今、びっくりしたでしょ?
僕も『渡すなんて柄じゃない〜』って思ったんだけど…どうしても、ね。ふふふ。その顔が見れただけで、僕は大満足さ。
あぁ、それと、その手作りチョコドーナツの返事をホワイトデーに返してよ。
勿論、3倍でね。待ってるから」
〜ハッピーバレンタイン〜
「貴方、花は好き?」
重い沈黙を破ったのは、レラーヌだ。
「は、はい。好きです」
「私ね、この花みたいだなって思うのよ」
そう言って掬うように優しく触ったのは、黄色い薔薇。
「嫉妬深くて、周りが呆れるほどに、重く愛してしまう」
悲しげに瞳を閉じる。
居た堪れない気持ちになったね。
コソコソ覗いている身だとしても。
「なら、他のものにその愛をぶつけてみてはいかがでしょう?」
僕は、他のもの=セレナと言う意味として受け取った。
(おぉ!?良い感じになるんじゃない??)
「それってどういう意味?」
「例えば、花を育てるとか小動物を飼うとか。そうすれば、人一倍重かろうと気にしないでしょう?」
ニコッと笑う姿はまさにヒロイン(双子の姉だが)。
(ちっ…。そっちかぁ…)
逆ギレしている自覚はあるが、期待を持たせてから落とされるのは一番辛い。ホント、悲しいね。
「そうね…そうしようかしら…。
ありがとう、セレナさん」
レラーヌはセレナと目を合わせる。
「ふふふ。お役に立てて良かったです」
この言葉と花が綻ぶ様な笑顔に、レラーヌが顔を朱く染めた。恋する乙女の目だ。
(よ〜〜しッッ!!これは堕ちただろ!!コロッといったよね!?)
さっきまで逆ギレしていた僕は、心の中でお祭り騒ぎをしていた。
面白かったらブックマークをポチッッッとしてね!!




