9 鬼ごっこ
「やめろ」
ヘレナを殴ろうとしたオレンジ髪の男子生徒の腕を強めに握る。
「なっ…!」
驚くのも無理はない。
だって、僕は少し離れた所から走って来たもん。足音立てずに。
(これは、ドラ達との鬼ごっこの成果だな…)
_数年前
別邸の周りにある森林の奥深くに僕は『宰相』に武術を教わっていた。今日は、お休み。
でも、なんとなく来てしまった。
「ねぇねぇ!王様、遊ぼうよ!」
これ幸いと、赤いドラゴンのドラが僕の服を引っ張る。
「ん。良いよ。何して遊ぼうか?」
「追いかけっこ!」
そんな話をしていたら、他の魔物の子供達が集まって来て、鬼ごっこをする事になった。鬼はドラ。
「10秒待っててあげる!
いーち、にーい、さーん」
ワラワラと森の中に隠れて行く。僕も例外無くね。
「探すぞ〜!」
ドシンドシンと足音を鳴らしながら走って来た。こっちに向かって。
「王様、み〜っけ!」
(何で分かったの!?)
その後も、ドラが鬼になると必ず最初に見つかった。
「ねぇ、ゴブちゃん」
「なぁに?」
ゴブリンの長の子供である、ゴブちゃんに話しかけた。因みに、鬼ごっこでドラが鬼になった時もゴブちゃんは最後まで捕まれない。なので…
「何で、鬼ごっこでドラが鬼になると僕が最初に見つかるのかな…?」
少し…いや、大分悔しかったので、聞いてみた。
「足音と呼吸音がバッチリ聞こえるから!ドラは耳が良いんだよ。だから、なるべく静かに歩いて、呼吸音もなるべく静かにするの!」
そう言われた。何だよそれはと思ったが、練習に練習を重ねて、足音と呼吸音を小さくしたら、1番最初に捕まらなくなった。
ゴブちゃん天才。ありがとう。本当に。
✼
「は、離せよ!!」
ブンブンと握られている腕を振り回すが、僕は依然として動かない。
「女子生徒を殴ろうとしたのは何でかな?理由によっては離すよ」
どうせ、無理難題でも押し付けて、嫌だと言われて逆上したんだろうけど。
「オレ様は悪くねぇ!!」
「はいはい。で?」
聞きたいのはそういう事ではないので、無視。
「兎に角、離せぇ!!!」
更に握られた腕をブンブンと振り回す。
「嫌だね。離したら、また殴りかかろうとするだろう?」
不動である。こんなもの、ドラに腕を咥えられて揺さぶられた時より全然マシだ。
そんな押し問答をしていたら…
「アストリア殿下ぁ!助けてー!」
と近くにいた短い金髪に碧眼のザ・王子様にヘレナが助けを求めた。
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