2 お嬢様!
「……さま、…お…さま!お嬢様!!」
ユサユサと体を揺らす感覚と僕の専属侍女であるイリアの声でゆっくりと瞼を開ける。
「…どうしたんだ…?」
自分の声は思っていたより低く、それでいて凛としていた。
カッコイイ系の中性ボイスだ。
「お嬢様!あぁ、良かった。お嬢様はバラ園でお倒れになられて…!私は、心臓が止まるかと思いましたんですからね!?」
メイド服を着たボブの茶髪に黒眼のイリアはとても可愛らしい。
「それはごめん…。ん?待て、お嬢様…?」
何かに導かれる様に斜め前を向く。
そこにある鏡台には、淡い青色のお姫様ベッドの上で上半身を起こす、紺色のネグリジェを着た少女が居た。
「え?」
同時に今世の記憶を思い出す。
僕はこの国、レッドレル国屈指の大富豪であるスターリル公爵家の長女、ルルシア・スターリルと言う事を。
お母様は私が6歳の時に流行病で亡くなり、それからはお父様が長女である私を本邸に閉じ込め、妹を可愛がっている。理由は単純。妹はお母様に瓜二つの性格と容姿だからだ。要は夫婦ごっこを別邸で行っている。因みに妹はまだ10歳だ。私は2歳上の12歳。お父様はロリコン。絶対にロリコン。それにヤンデレと言う付属付き。やべぇ奴だ。
(はぁ〜。こう言うのも何だけど僕が転生したのが長女の方で良かった…!いや、良くは無いな。どっちも女性だし…)
中身が成人男性ってキツくね?まぁ、元が女性なのもあり、ネグリジェは全然気にならないんだが。
「混乱しているから少し1人にして欲しい」
とイリアに言ったらすんなり下がってくれた。ありがたい。
「えぇっと。冷遇とかはされて無いみたいだからそこら辺は良しとしよう」
クルリと部屋を見た感じでは清潔感があり男でも女でもどっちでも住めそうな家具が揃っている。お姫様ベッドだけを我慢すれば良い。
「お母様は桜色のツヤっとした長い髪に瞳の色は…確か淡い黄色だったけ?って事は妹のフランリーラも同じかな。今はお母様の名前で名乗ってるんだっけ。アイリアって」
(思い出せば思い出す程お父様がやべぇ奴って事が分かる。普通自分の娘に母親の名前を名乗らせるか?僕は前世も今世も彼女が居ない歴=年齢だからあまり分からないね…)
「僕の見た目は、父方の祖母にそっくりだったんだよね。お父様は礼儀に厳しい祖母を酷く嫌って僕にも苦手意識があったって聞いた気がする…侍女達の話で」
顎で切り揃えられた強い意志を感じる赤い髪にキリッと吊り目で海を彷彿とさせる色の瞳。
しかも美形。男性とも女性とも受け取れる妖艶な雰囲気だ。こう言う女性、僕は大好きだけど。
あ、もう少し大人になってからだよ。今の幼女に恋愛感情を持っている訳じゃないからね?もしそうなら僕もロリコンになってしまう…。
「婚約者は僕もフランリーラも居無い。まぁ、フランリーラは作れないだろうけど。僕も要らないなぁ。男好きって訳でも無いし…」
女性同士の恋愛…百合は好きなんだけどね。可愛いじゃん。野郎共が絡み合ってるところを見るよりも幾分も良いし。
「あっ!そう言えば『3人の王子と奇跡の乙女』の続編が出たのに死んじゃってやれなかった!くっそー!あの乙女ゲームは悪役令嬢と主人公の聖女の百合ルートが最高で…あれ?」
(3人の王子はそれぞれ火の魔法が優れた国、水の魔法が優れた国、木の魔法が優れた国の王子様で…火の魔法に優れた国名は…)
「レッドレル国…」
(って我が国じゃん)
「やったーーー!!!モブ転生だ!!!!」
このデカい声で近くの木に止まっていたカラスが飛ぶ。
「え?もしかして百合を見れるのかな!!?火の魔法の国と水の魔法の国と木の魔法の国の貴族の子供達は必ず16歳でゲームの舞台『ホワイトナチ学園』に必ず入学する!ならば…!」
【聖女が悪役令嬢を選べば百合が見れる!!!】
少し長めだしルビ多めで読みにくくてすみません…!
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