オマケ2 イリアの過去
残酷な描写があります!苦手な方はご遠慮下さい…!
_物心付く頃は、優しい両親が居た。
「母さん!父さん!見てみて!花冠!」
庭先で育っていたタンポポやシロツメクサで作った花冠を2人に見せる。
「まぁ…!上手に出来たわね」
_顔良し器量良しの美人な母さんは私の憧れだ。
「本当に上手に出来たなぁ…」
_明るく朗らかでイケメンな父さんは私の自慢だ。
「えへへ」
_少しだけ裕福な我が家では、いつも笑顔で満ちていた。
だけど…
「この女は貴様らに勿体ない。私が貰おう」
_暖かい生活理不尽に壊された。
女好きで有名な貴族の領主が強引に母を連れ去ったのだ。
それからは、父1人で私を育てるべく、より懸命に働いていた。
私もそれを手伝ったり、母さんに教わった料理を振る舞ったりしていた。
_その1年後にあんな事になるなんて知らずに…
「ほら、これやるよ」
下品な笑いを口元に浮かべながら、母を連れ去ったアイツはまたやって来た。
足元に転がされたのは、大きな縦の袋。
(な、何だか怖気がする…)
この袋を開けてはいけないと脳が警鐘を鳴らす。
アイツはそれを置いたまま帰って行った。暫く、その袋の前で立ち尽くしていたが、父が帰って来てしまった。
「あ、お、お帰り!遅かったね…」
父さんは手に持っていた鞄を放り投げ、その袋のチャックを開けた。
「ひっ…」
_中に入っていたのは、見るも無惨な母の遺体だった。
「父さん…」
真っ青な顔をして固まっている父さんは、膝から崩れ落ちてしまう。
「なんで…俺達が何をしたって言うんだ…!」
悲痛な叫びは、静まり返った家に鳴り響いた。
_それから1年も経たずに父は亡くなった。
大切な人もなくし、家も追い出された私は途方に暮れて、フラフラ歩いていると貧民街に流れ着いた。
まず、着ている服を売って、ツギハギだらけのワンピースを貧民街の子供から譲って貰った。
そのお金で、少しだけパンや飲み物に有りつけた。少しだけ、だ。
(お腹が空いた…このまま死ねば楽になれるかな…?)
そうすれば、母や父に会える?と少しの希望を抱いたその日の午後。
「わぁ、こんな所があったんだね。あれ?」
シクシクと泣いて蹲っている私に近付いてくる。
「どうしたの?」
艶々した赤髪の女の子だ。
この場に場違いなゴテゴテした服。直様、貴族だと気付いた。
「き、貴族の子供!?」
「うん、そうだよ」
やけにあっさりと頷く。それがまた癪に障った。
「許せない…!母さんを返せ!!」
ブンブンと腕を振り回すが、全て避けられてしまう。
「止めてよ。僕の可愛いお顔が台無しになっちゃう」
それでもまだブンブンと腕を振り回すが、疲れて一度やめる。
「はぁはぁッ…」
肩で息をしてしまう。もう、動ける気力はゼロだ。
「終わり?じゃあ、」
「どうせ、私を憲兵に突き出すんでしょ!?好きにしなさい!もう、お腹がペッコペコで動けないし!」
こうなったらヤケだ。地面に寝そべる。
「えぇ?そんな事はしないよ」
のんびりとした口調だが、私は余計に恐怖を覚えた。
そして、まさか…と思い至る。
「も、もしかして、奴隷にするつもりなの!?」
驚きのあまり起き上がる。
「ううん。僕専属の侍女且つ僕のヒロインになって欲しい」
「へ?」
信じられなくて間抜けな言葉がでてしまった。
「僕ね、よく物語を読むんだよ。それで、可愛らしいヒロインとカッコいい騎士の物語を読んだんだ。君は可愛いし、僕専属の侍女もまだ居ないし丁度良いなって」
ペラペラと喋られた言葉は信じられないものだった。
「う、嘘よ!そんな事言って、私を何処かに売る気でしょ!」
その言葉に心外だなと言わんばかりの顔をする。
「僕は、貴方のヒーローになりたいんだ。不安なら、約束するよ。君を絶対に傷付けない。さぁ、行こう!」
ニコッと笑い、私の手を引っ張る。
「ちょっと…!」
そんな声を上げたが、この人に付いて行けば良い事がありそうだなぁっと思った。
イリアのお母さんを殺した貴族の存在はルルシアやジェイコブさんが結託してヴァイデッド公爵家の権力を使って社会的に消されてます。ポツリと何気なく言っただけだったので、そこまで大事になっているとは知らないイリアでした。
次はいつもの16時30です!




