39 言ってはいけない事
「あ。この奥」
背負われながら指示を出す。
「ここからは、一人部屋じゃないか」
スッと2人を見る。
要するに、同じ部屋って言ってたけど、一人部屋に3人で暮らしてるのか?って言う疑問だろうね。
「居候だからね。ちょっと狭いけど、楽しいよ」
あれ?グレイ兄さんから黒いオーラが…
「ぐ、グレイ兄さん…?」
「うん?なんだ?」
いつものグレイ兄さんだ。
見間違いだったかな?
✼
「この部屋だよ」
グレイ兄さんが扉を開ける。
後ろから2人も追随して入って来る。
「お帰りなさいませ!」
元気なイリアがお出迎えしてくれた。
だが…
「!?」
「お、おい…!」
動揺しているのは、オーウェンとアリア君だ。
「何かおかしいところでもありますか!?もしかして、寝癖が…!」
ササッと自身の髪を撫でて寝癖を確認する。
可愛いね。でも…
「イーリーアー!」
力が入らない足を無理矢理魔術で動かして、イリアに抱き着く。
「わぁ!ど、どうしたんですか!?」
驚いている。それはそうだろう。僕は人前では抱き着かないからね。
「ごめーん!可愛すぎて抱き着いちゃったよ!」
テヘっと舌を出す。
(認識阻害の魔術式の構築…)
ズァァァッと頭の中に魔術を使う為の式が浮かび上がる。
少し…いや、大分気持ち悪い。
(しくった…一度死にかけた事で、これが解けちゃうなんて…)
死んでも解いちゃいけない魔術が解けた事に歯噛みする。
「??」
抱き着いたまま動かない僕に不思議そうな表情を向けてきた。
「どうしたんですか?」
「いや!何でもないよ!」
パッと手を離す。
ズキンと鈍く頭が痛む。足も痛いし、ぶっ倒れたい。
「い、イリア。お前の瞳の色…」
言うな。それ以上は駄目だ。
「「黒だったのか?」」
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