19 相手は猫
「お誕生日おめでとう!イリア!」
「「おめでとう(ッス)!」」
3人が同時に鳴らしたクラッカーの中身が、イリアに降り注ぐ。
「…今日って、私の誕生日でしたっけ?」
ほけっとした顔で、呑気に言う。
「誕生日だよ!忘れてたの!?」
「はい。3人がなんかソワソワしてるなぁくらいでした」
誕生日プレゼントとか誕生日会とかで、めっっちゃソワソワしてたからね。バレてたか。
「ま、まぁ、取り敢えず、僕達が各々準備した誕プレを受け取ってよ!」
食事をする机に置いてある、誕生日プレゼントを渡す。
「え!?良いんですが!?嬉しいです!」
大小様々なプレゼントを受け取り、華やかな笑顔を見せる。
(可愛い!)
「開けていいですか!?」
「全然良いよ。開けちゃいな」
まず、1番大きなプレゼントを開ける。
「わぁ!これ、私が欲しかった小型掃除機です!」
最新の便利なやつだね。
「それは俺からだな。会話したくもない実家に頼んで、送って貰った」
アリア君か。金持ちムーブをかましてきたね。
「ありがとうございます!
次は…」
中くらいの誕生日プレゼントを開ける。
「あ!これ、いい匂いのハンドクリームですね!」
有名なやつだね。
「それはオレからッス!
バイトして貯めたんスよ!」
あれ?この学園ってバイトオーケーだっけ?まぁ…いいか。
「ちょうど、ハンドクリームを切らしてたんですよ!
これは結構、ポイント高いですね…!」
あれ?僕達って競ってたっけ?
「次は…」
1番、小さいのだ。これは僕のだね。
「これは…!」
中身はネックレスだ。
詳しく言えば、銀のチェーンで繋がれていて、縁が金色の鈴蘭の形を模したペンダントトップ。
「綺麗…」
お!これは好感触じゃないかな!?
(学園近くの領主に許可を貰って、路上でマジックショーをやった甲斐があったよ…)
めっちゃ稼げたので、またやろうと思う。
「大切にしますね」
「うん。そうしてくれると嬉しいよ」
下心ありだけどね。
「われは男児だ」
男の子なのね。
「リシアどのは?」
あ。今気がついたけど、この子、僕の事をリシアって言ってるね。僕、ルルシア(もしくはルシア)なんだけど…。
(リシア=六芒星ってイメージがあるから、止めてほしいなぁ…)
身バレに繋がっちゃうよ。
蛇足だが、この国…と言うよりこの世界では、『リシア』の名前は禁忌とされているので、世界中を探しても居ないらしい。あくまで、『らしい』だが
「僕は男だよ。それと、僕の名前はルシアだからね。ル・シ・ア」
サラリと偽名で教えてしまった。
「いや、おぬしはリシアどのだ」
何で胸張ってるのかな?
「リシアじゃなくて、ルシアだって」
ほんのちょっとだけイラッとしてしまった。我慢だ。相手は猫。
「われと、主従関係を結べるのはリシアどのの魂だけだから、おぬしはリシアどのだ」
うん?主従関係?
「普通の人間は、われと主従関係を結んだ瞬間に弾け飛ぶ。
だが、おぬしはわれと主従関係を結んでも右腕の血管が少しばかり変色しただけで済んだからな」
変色の言葉でスッと右腕を見たが、いつもと変わらぬ色であった。




