14 夢
「………」
_僕の周りで知らない人達が服を真っ赤に濡らして倒れている。
「僕は…こんな事がやりたかったわけじゃないのに…」
僕はズシャリとその場で膝を着く。
_悲哀と狂喜が入り混じった感情で昂っているこの胸が酷く気持ち悪い。
「あぁ、これでは貴族共と同じではないか…」
自分の口から出たとは思えないくらい狂った様に笑う。
_目の前が真っ赤に染まり、ドス黒く、それでいて悲しい衝動に身を任せた。
✼
「ぅ…」
ゆっくりと瞳を開ける。
(あぁ…生き残ってしまったのか…)
「起きた?」
スッと隣に目をやると、しゃがみ込む黒髪に金色の瞳の幼女が居た。
「君、危ないから僕から離れた方が良いよ」
人殺しで、どうしようもない僕。そんな僕を助けたのが、彼女だった。
「森に捨てられてたのよ。貴方は」
少し落ち着いた頃に、言われたこの言葉。
「ふぅん…」
(暴走して、そのまま捨てられたのか)
「復讐とかしないの?」
僕の中途半端な返事に顔を顰める。
「しないね」
怪訝そうな顔をされる。まるで、『お人好しね』と言われているみたいだ。
(僕はそこまでお人好しじゃないさ)
「だって、君に会えたもの」
ふわりと自分とは思えない程に穏やかな笑みを浮かべた。
その時の彼女の顔は忘れられない。熟れたリンゴの様に顔を真っ赤にして、毒を吐きまくる様子は照れ隠しにしか見えなかった。
✼
「ねぇ」
「何よ」
僕の傷の手当てをしている彼女に話しかける。
「僕さ、国を創りたいんだ。
種族も身分も関係なく、皆が笑い合える国」
「絵空事ね」
まぁ、そう言うと思ってたよ。
「でも、悪くないわ」
「へ?」
口を開けて呆けてしまった。
そんな僕の顔を見てニヤリと笑う。
「貴方が王様で、私は…そうね、補佐役の『宰相』とかどうかしら?」
「良いね」
絵空事だ。分かっている。でも、僕と彼女なら出来る気がした。
✼
「ねぇ、国王様」
「何?『宰相』君」
そう言って、笑い合う。人殺しの僕には似合わない幸せだ。
「そう言えば、貴方の名前は?」
貴方とか国王様とかで間に合ってたから、名乗ってなかった。
「僕はリシアだよ。女ならルルシア、男ならリシアって母さんが」
「へぇ。じゃあ、リシア国王ね」
「そうだね。
はーはっはー!皆のものー、リシア国王のおなーりだー!なぁんてね」
クスクスとまた笑い合い、そうやって毎日が過ぎて行く。
たまに街に降りて人助けをしたら、ドンドン仲間が増えて行って、本当に国が創れるのかもなんて考えた時もあったけど。
僕は人殺しだから。国王様なんて大層な役目は似合わない。
だから、僕が死んでぴったり1000年後。輪廻転生って奴があるなら、次こそは種族や身分関係なく笑い合える国を創りたい。




