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ミリオン  作者: おこき
~第三幕~
64/76

第62章

「姐さん……どういう、意味で?」


 鉄同士がぶつかり合う無骨な音、重火器の発砲音、樹海は破壊の音で満たされている。

 視線を逸らさず表情画面を見つめるリリィ。


「私は一言もジェノスが怪我をしたことを皆に伝えていない……」


 伝える勇気がなかった、と小さく零す。

 別動班で先行していたウィッツは樹海の入り乱れた魔力のせいで、リリィと残った義賊の会話を拾うことができなかったのだろう。リリィも目の前にいる者達、特にMFに搭乗していない者にも声が届くよう機体同士の通信ではなく外部スピーカーを使用していた。

 ウィッツがいかに憶測で会話していようともジェノスが怪我を負い、しかもそれが見舞いが必要になるほどの重傷であることまでわかっているのはおかしい。

 もっとも、敵機によって踏み砕かれた瓦礫の下に取り残されていれば確実に死んでいる。

 それを認知しているのは、ジェノスがアルダイン宅に来た時に入れ違ったリオンとセレネ。そして家を吹き飛ばした本人、もしくはそれに加担した人間のみ。


「誰からジェノスがアルダインの家にいることを聞いたの」

「……頭から聞いたんですよ。解散した後、あの学者に用があるとかなんとかって――」

「普段のジェノスだったならそうだと思う。けど、今回に限ってそれは絶対にありえない。ジェノスはきっと人造人間絡みの話をしに行っていた。ジェノスが人造人間という言葉に敏感なのはウィッツも知ってるはず」


 義賊達の交戦が悪化するのを横目に、画面の男を注視するリリィ。

 ジェノスがアルダイン宅にいることは、リオンに言われるまで側近のリリィさえ認知していなかった。 人造人間絡み『人造魔女』という事柄について何かを聞き出すつもりだったのならば、ジェノスは確実に人払いをしているはず。場合によっては義に反する行動……口封じを行うためだ。

 そして何より、戦争のハイエナが今まで生き残ってこられたのは、集団逃亡戦に長けていたからだ。

 それを重々承知しているはずのウィッツが突撃を焚き付けるのもおかしい。

 少数精鋭ならまだしも、逃がさねばならない村人達を戦場へ連れ帰り、完全武装の軍用機に正面から激突すれば壊滅的なダメージを受けるのは明白。

 数で勝っている状況に酔ったのか、ウィッツの焚き付けに鼓舞されたのか、それとも自身に力があると過信してしまったのか、義賊達は戦闘を開始してしまった。加勢したいところだが、今ジェノス機から目を離せば何をされるかわからない。

 リリィが義賊達にジェノスの状態を報告しなかったただ一つの理由は、頭領のジェノスを置いて逃げることを考えていたからだ。

 もし、事情を義賊の各々が知ってしまえば士気が乱れ、首尾よく村から脱出することは叶わないであろう。

 何か言いかけたリリィだが、新緑の瞳を強面の男に向けたまま言葉を飲む。


「ウィッツ……私が樹海に付けた弾痕、全部踏み消した? それだけでもいい、教えて」


 リリィの質問にウィッツが目を伏せて【夜光】に銃口を向ける。潤んだ新緑の瞳でその姿を――共に戦ってきた武骨な緑色の機体を、楽しいときは遠慮なく笑うそのがさつなの男の姿を――受け止めようとするが力が入らなかった。


「正気ですかウィッツさん……貴方はいつもジェノスさんと一緒に国を変えるって、一生付いていくって言って――」


 言葉を遮るようにウィッツ機は青いハンドレットへ発砲。ウィッツ機の視線はそのまま一番の危険要素【夜光】のままで銃口だけがサイ機へ向けられた。

 リリィの腕前を知っている者ならば、彼女の間合いで視線を外せばどうなるか想像に容易い。


「サイよぉ。騎士ごっこをしているおめぇにはわかんねぇだろうな。……人間、背に腹は代えれねぇことがあるんだよ」

「僕にだって背に腹を代えらえないことはあります。銃を下してください。どんな理由があるか知りませんが、僕は今“戦争のハイエナ”に恩義があります。貴方がハイエナを裏切るというのなら僕は貴方を倒さなければいけません」

「はんっ……俺だって馬鹿じゃない。お前とまともにやりあって勝てると思うほど自惚れちゃいねぇよ……まともにやりあってな」


 身構えるサイ機だが、突如として動力が切れたように機体が地面へ沈み込む。

 青い機体のカメラアイから光は消え失せ、近距離通信も途切れる。それを確認してか、銃口は再び【夜光】へ。


「サイ! ウィッツ……サイの機体に何を!?」

「特段変わったことはしてませんぜ」


 攻防を繰り広げる義賊のMFだが、徐々に機体の動きがぎこちなくなっている。


『な、なんだ!? 機体の調子が』

『被弾しやがったのか? お前は退け! 俺が時間を……おい、動力停止だ? 燃料はまだ――』

『全員態勢を立て直せ! 俺の機体も様子が――っ』


 通信が途切れる者。仲間を庇って撃ち抜かれる者。次々と撃墜されている義賊のハンドレットの大半は、撃墜される“前に”動かなくなっていた。

 ただでさえ性能差があるというのに、無抵抗になったところをカーニンの部隊がライフルをコックピットに向けて発射していく。戦いにすらなっていない、これではただの虐殺である。

 対人装備しかない人間は撤退しようと進路を変えるが、MFの掃射を受けて見るも無残な姿へ変えていった。


「……みんな。これは一体」

「姐さん、俺は前から言ってたでしょう。“自分の機体ぐらい自分で整備するもんだ”って」

「みんなの機体に何をしたの? ウィッツのこと……信用していた。みんなも」

「みんなの機体と期待を裏切っただけですぜ。まさか本当に突撃するとはねぇ。姐さんの力を宛てにしてたんでしょうが、この数相手はアンタでも無理だ。テロリストだの、有力な賊だの言われちゃいるが……頭がいなきゃ今の“戦争のハイエナ”はこんなもんです。昔のハイエナならこうはならなかったでしょうよ。頭数だけ増え過ぎて本当の義を持ってるやつなんて今やほとんどいない。志あるやつらは死んでいく、頭の強さにぶら下がる連中は増えていく……頭は人柄が甘くなっちまった」


 自嘲気味に笑うウィッツ。ついに【夜光】の動力も停止。システムエラーの文字が画面を敷き詰める。

 確かにこんなまねは“戦争のハイエナ”の機体を全て整備してくれていたウィッツにしかできない。

 整備を任せきりにしていた自身を呪うリリィ。リリィが原因の探索と復旧作業を試みる中、ウィッツはほりの深さにいっそう影を落として呟いた。


「姐さん……いつからハイエナは貪る側から貪られる側になっちまったんですかね。それも烏合の衆なんかにね」


 カメラアイから算出されるデータから【夜光】の動力停止を確認。ウィッツ機は軍が整列している方面へ引き返す。今までウィッツ機の影で見えていなかった光景がリリィに網膜に焼き付けられる。

 とても先程まで人が暮らしていたようには見えない光景。

 荒れ果てた地表と破壊された家屋、歪に変形した鉄の塊達は朽ち果てて何年も経過した土地を思わせる。火の手が上がらないよう発火の恐れがあるものを軍人がMFで次々と踏み潰しているのが理由の一つであろう。この樹海に引火すればMFに搭乗していようとただでは済まない。ウィッツに義賊の機体を無力化させたのは撃墜時の動力爆破を恐れたためとも取れる。

 砂を踏みしめる音が止み、各機が一か所に集まり始めた。軍による義賊の掃討が完了した何よりの証だ。


「ウィッツ……どうして? ……どうしてぇ」


 少女の涙声を無視してウィッツは、白色のサウザンドの前に佇む。


「約束通り……“戦争のハイエナ”は壊滅だ」

「腑抜けが。まだそこに残っておるではないか」


 意地の悪そうなカーニンが顎で膝を付いた鎧武者を指す。


「燃料が空だ……あれはもう動かねぇ。それに乗ってるのもただの無力なガキだ。コックピットまで潰す必要はねぇ」

「先程、会話したから知っておるよ。あの機体のパイロットは年端もいかない少女だ。俗物に洗脳されたのか、狂った思想を持っておる」

「安心しろ。あんたに復讐しようなんて気はおきんだろうよ。第一、あんな小娘に何ができる? 例えここから生きて出られたとしても外は荒野……のたれ死ぬ」


 ウィッツ機の肩を叩く白い指揮官機。

 そのまま動かなくなった紫色の鎧武者へゆっくりと近づき、声のトーンを上げて可哀そうな生き物を見つめるように機体を――リリィを観察している。


「“戦争のハイエナ”を掃討した今、貴様の言う通りあの娘はただの無力な少女だ。ワシが保護して、教育しなおそうと思うのだが、どうかね?」


 奥歯を噛み締めながらウィッツは、表情画面に映るカーニン・マルカスを睨む。


「……止めときな。そのガキは異民だ。あんたの大層立派な孤児院に相応しくないぜ」


 ねっとりとしたカーニンの声にリリィは背筋に悪寒を感じた。

 カーニン・マルカスは軍人としては目立った功績はないが、自身の財を使って孤児院を運営していることで有名であった。また、そこで教育を施す教育者・思想家としても実績を残している。


「表情画面越しだったが顔だちは悪くはない。生かすも殺すも味を見てからでもよかろう。君の娘に似た(・・・・・)シェリーよりも稼いでくれると思うのだがな」

「……シェリーなんて名前じゃねぇ。あの娘の名前はファムだ!」

「そう怒鳴るでない。それは貴様がシェリーを飼って(・・・)から好きに呼べばいい。それまではワシが育てたシェリーだ」


 怒りで体を震わせるウィッツをカーニンは嘲笑っている。

 そして汗に塗れた顔をハンカチで拭いながら口角を引き上げるカーニン曹長。

 そこへ不穏な音がコックピットに鳴る。

 機体の不調ではない。装甲板が突かれているような音がコツ、コツと続いては消えてゆく。

 眉間の血管を震わせ、操縦桿を握り潰すように掴むカーニン。


「ふん……余程死に急いでいるようだな、ここの村人共は。よもや、戦時中に行われていた帝国の蛮行をしでかすとは……この野蛮人共がぁ!!」


 アラートすら鳴らない攻撃。村人がカーニン機の周囲、はたまた兵士達の周囲に集まりその場に落ちている小石を投げつけているのであった。

 泥だらけの服を纏い、多くの者が魔女狩りで付けられたであろう痛々しい傷跡が残っている。急いで逃げたためか素足のままの者、肌着しか纏っていない者までいた。

 保護してくれるはずだった義賊の男たちがやられてしまった今、彼、彼女達を守る者はいない。元より追いやられた彼らにこの村以外に住む場所などないのだ。戦って死ぬか、のたれ死ぬか、その程度しか選択肢はない。

 カーニン機は指揮官機ということもあり、対MF用狙撃銃の直撃ですら数発耐えうる特殊装甲に覆われている。小石など何の脅威でもない。

 だが一方で、そんな無意味で危険な行動をしてまでも敵意を主張する彼らには軍人に対して余程の想いがあるのだろう。


『……死ね、死ねぇ!!』

『そんなに人が殺したいか! たかが魔術が使えるだけの猿め!』

『どうしてこんなことを……許せない、軍人なんて、軍人なんて!!』


 自分達を陥れ、のうのうと生きている軍人が、本国の民間人が……憎くて、羨ましくて、気に食わなくてどうにもできなくなった感情が爆発している。

 猫背の身体にカサカサに乾燥した手、握り締められた冷たい感情を白く輝くカーニン機へ投げつける。中には泥を投げる者も現れる。。

 彼らの行動は街ならば暴動を起こしたとして留置所に送られる行為だが、残念ながらここは街ではない。

 ここに法律などない。

 カーニン機のライフルが小さな的達に向けられた。


「勝手に領土に住み着いたウジ虫共が、これが人間の行動か? 糞を投げつけるゴリラと大差ないではないか」

「何をする気……!」

「まったく汚らわしい。基地に戻って整備班に磨かせねばならんではないか。貴様達、うるさいゴミを掃除しろ」

「みんな、逃げてぇぇ!!」


 叫ぶリリィの声など誰にも届かない。予備魔力ゼロのサウザンドは声を上げることすら許されない。

 マズルフラッシュと空薬莢の落ちる音、地中に地雷が埋めてあったかのように土がめくり返っていく。

 静まり返った戦場は恐ろしいまでの砂塵と硝煙の臭いに満ちていた。

 自身の身体程もある弾丸を滝のように浴びせられては、村人にとって肉片が残っていればいい方であろう。


「うむ、大義であった。土地も耕せてちょうどよかったではないか。そういえば五番機の二等兵。貴様は畑が欲しいと言っておったな。この畑はどうだ? 今し方撒き散らした糞尿で肥料も十分、ここなら森林浴も可能だぞ」

「いえ、結構です。曹長、ここに住むぐらいなら街の便所に住む方がマシです」


 カーニンからのジョークに緊張した面影で答えるサウザンドの若者。率直な回答に周囲の兵達が笑いを堪えている。

 笑い声をあげているカーニンがカメラアイで【夜光】が立ち上がるのを確認。


「……む。まだ予備魔力でも残っておったか?」

「そんなはずはねぇ! 確かに【夜光】の燃料も抜き取った! 予備魔力なんてあるはずが」


 安易に解決しようとするカーニンに対して、ウィッツは声を荒げている。

 そんな中、通信からぽつりぽつりと言葉を絞り出すリリィの声。


「みんな……力が無いからジェノスに憧れて義賊になった……ウィッツもそうだったでしょ……? どうしてこんなことを見過ごせるの」


 亡骸が散り散りになった砂塵の中、【夜光】のカメラアイがまばたきをするように点滅を繰り返し始める。


「この村の人達もそうだった……。魔女狩りにあって何もかも奪われて、家族にまで殺されそうになって……恐いのもいたけどいい人もいっぱいいた。力が無いから力の無い人の気持ちがわかる……そう信じてジェノスは仲間を……増やして」


 涙で消え入りそうな声を必死に音にする。声より先に悲しみという感情が胸に詰まり呼吸すら危うい。

 拙い足取りのまま一歩踏みよるメタルフレーム。


「ジェノスが義賊で戦っていたのは、ウィッツにこんなことをさせるためじゃない!!」

「な、何が始まると言うのだ!? 貴様! しくじったな!? えぇい! 各機、構えよ!」


 燃料が枯渇したはずの【夜光】が嘆き悲しむように天へ吠える。クリフォト・ドライブから魔力が放出され、余波が密林を揺らした。

 紫色の鎧となっていた各部装甲がスライドし、異常熱を逃がすための放熱板が入れ替わるように装甲を覆った。放熱板から発せられる蒸気とゆらゆらと歩く【夜光】の様はさながら落ち武者である。


「白いサウザンド……お前だけには一矢報いてみせる。命に代えても絶対に……!」

「姐さん、止めろ! アンタ一人でどうこうなるもんじゃねぇ! 俺だってガキを殺す趣味はねぇんだ! 機体から降りろ!! ッチ、聞こえてねぇのか」


 ウィッツの通信など聞こえていないのか、燃料枯渇状態から再起動を果たした【夜光】は行動を続ける。瀕死の落ち武者が最後の悪あがきをしようというのか刀型の魔科学兵器に手を伸ばし――全速力で走り始めた。せめて、一太刀浴びせねば死にきれないとでも言いたげに。


「撃てッ! 奴を決して近づけるな! 中の娘はもう、どうでもよい! 誰かアレを、アレを止めろぉ!!」

「うあぁぁあ!! お前を、斬る」


 兼ねてから装甲の分厚い鎧武者、掃射される弾丸によって放熱板、装甲板こそ削ぎ落とされているが、突撃を妨げるには至らない。

 放熱板から発せられる蒸気が相まって【夜光】のその様は阿修羅を思わせる。

 しかし、突如として大破する落ち武者。胸から黒い煙を噴き出し無様にも地面を顔面で滑りながら活動停止。

 解き放たれた放熱板と身を守る装甲板の間――狙って狙える隙間ではない。しかし、()は狙ってみせた。

 機体内部へ直に弾丸を叩き込まれかれてはいくら装甲の厚い鎧武者と言えど一撃で沈黙する。


「おぉ……イダデルか。忠実に仕事をこなしておるではないか。今まで何の援護も無かったことについては目を瞑ってやろう」


 カーニン曹長は消えゆく【夜光】のカメラアイの光を見守りながら狙撃者を評す。 

 リリィの抵抗も虚しく今やカメラアイの点滅速度も遅くなり、紫色の鎧は鉄の塊へと戻る。

 数分であったが燃料が空の状態から活動していた。この事実はメカニックの心得があるウィッツにとって納得しがたいことであろう。

 新たに燃料が補給されない限り【夜光】は動けないはずなのだ。どこから燃料を補給したというのか。

 ある結論に辿り着いたのか、目を見開いたウィッツは息を飲む。


「姐さん……アンタまさか、自分の魔力を」


 恐れるものがなくなったからか、悠長に膝小僧を掻きながらカーニンは鼻で笑う。


「馬鹿も休み休み言え。起動分の魔力を自身の魔力で補えばとおに死んでおるわ。燃料を抜き忘れていただけだろうに。自身のミスも認めんとは……基礎中の基礎だ、MFの起動にどれだけの魔力が必要かも知らんとは」


 カーニンがぶつぶつとウィッツに対する嫌味を並べるが、ウィッツは信じがたいものを見るように地表を削った鎧武者を唖然と眺めるだけだ。

 酷く消衰した状態のリリィは肩で息をしながらも表情画面を睨みつけている。普段は艶やかな銀髪に隠れている両耳が“異形のモノ”へと成り果てていることを垣間見たのはウィッツだけらしい。


「そういうことですかい。人間離れした綺麗さだと思っちゃいたが……頭が気に掛けるわけだ」

「動いて……夜光。うご、い、て」


 重い手取りでシステムを起動させようと試行錯誤するリリィだが、装甲の内部を貫かれた【夜光】は単なる燃料切れではなく大破状態だ。壊れたモノが動く道理はない。


「また起動されても面倒だ。念のためにコックピットからパイロットを引きずり降ろしておけ。抵抗すれば殺せ。だが、しおらしくしていれば保護しろ。銀色の髪は珍しいのは確かだ。好き者相手ならば金髪よりも良い値が付くかもしれん。ワシの孤児院で一生預かることにしよう。恵まれない子供は疲れた大人の心も懐も潤してくれる良い商品に生まれ変わるのだからな。ぶひゃひゃひゃ!!」


 状況を飲み込めていない部隊長は距離を取り、部下達に【夜光】のコックピット摘出を命じ始める。

 紫色の武者を囲む五機のサウザンド。各々がナイフやマニュピレータでリリィの纏う鎧を一枚、また一枚と喰いちぎる肉食動物のように剥ぎ取っていく。

 大破した【夜光】は抵抗することもなく兵士達のされるまま。泥が付着した無骨な鎧武者は光こそ失っているが、屈辱に顔を歪めているようであった。

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