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ミリオン  作者: おこき
~第三幕~
58/76

第56章

 響くは大気震わす鉄音。

 揺れるは樹海広がる大地。

 対峙するは紫の武者、そして――蒼い騎士。

「リオン……これだけは言わせてくれ、お前は本当にアホだな!!」

「……うるせぇ。俺も後悔してんだよ! 何であんなこと言っちまったんだって」

 月花のコックピットで激怒するセレネを(なだ)め、リオンはゆっくりと操縦桿を握る。

「でも……あんな怪我人を戦わせるわけにもいかねぇだろ?」

 チョベリーは、立つのがやっとという重傷患者をメタルフレームに乗せようとしていた。

 白髪に充血した赤い眼、アルダイン以上にくたびれた――いや、世界に絶望したかのような顔立ちの男。

 精神、肉体共に摩耗した様子の彼がコックピットに座ろうものなら、それは拷問椅子に早変わりだ。

「“いかねぇだろう?”じゃない! 何で私達がチョベリーとジェノスの決闘に参加しなくちゃいけない? しかも、私の月花を使うなんて……破廉恥な!」

 何が破廉恥なのか理解できないが、セレネが月花に同乗してくれていることから愛想を尽かされたわけではなさそうである。

 月花はセレネがいなければ、まともに稼働できない。ノーションに造ってもらった魔石の片割れが操縦席にあるにはあるが、五分も戦闘すれば砕け散ると言われている。

「ん……本当に大丈夫? 私、ジェノスから手加減するなと……言われてる」

 メインモニターに決闘相手・リリィからの通信が入って来た。

 ジェノスとチョベリーはどうやらお互いの身内から決闘をさせる部下を選び、彼らの勝敗で賭け事をしているようだ。

 ルールとしては、“機体が動かなくなるまで殴り合う”という単純明快なもの。

 殺傷能力のある武装は外すように言われているが、何故か一番殺傷能力の高そうな巨大な刀が相手の腰に据えられていた。

 当然、抗議したリオンだが、「刀を捨てる時……それは誇りを捨てる時」とリリィが断固拒否したため、使用する気は無いが念のためにこちらもパイルバンカーを装着したままの決闘となる。

 リオンからの返事が無いことを心配してか、リリィが首を傾げて少年の名前を呼んだ。

「ん……リオン、聞いてる?」

「あぁ、手加減抜きでやってくれて……いや、やっぱり――あぁ! どんと来い!」

「ん……早めに降参して」

 リリィの願うような言葉と共に通信が切られた。

 アルダイン宅に押しかけて来たチョベリーに、怪我人を使うのを止めろとリオンが言った途端。

「なら、誰が戦う? お前が戦ってくれんのかい、小便小僧?」と極悪非道な老婆に脅し文句を吐き付けられ、引くに引けなくなったという次第でこの状況。

 怪我人を無理にでも戦わせようとするぐらいだ。MFを操縦できる者が彼以外にいないのだろう。

 実力がいくらあっても怪我人が戦うのとリオンが戦うのとでは、結果はあまり変わらないはずである。

 この試合、負けて当然。ならば、怪我人の代役をリオンが駆って出ても問題ない。

 人選以前にこんな条件で決闘に応じた老婆に責任があると言うものだ。

「小便小僧……せいぜい頑張りな」

 とても無理矢理決闘に参加させた人物の発言とは思えない。

 義賊のハンドレットの肩に我が物顔で腰を下ろす老婆は、暇を持て余しながら煙管を吹かして空を見上げている。

 怪我人に決闘させようとしたり、リオンのような戦闘素人を代理に立てるなど、彼女は決闘に勝つ気があるのか。

 言えない文句を胸内で思っていると橙色のサウザンドから通信が入る。

「んじゃ、お前らのタイミングで始めてくれ。どっちかがスクランブルになるまでの“どつきあい”だから死ぬこたぁねぇだろ。まぁ、秒殺だろうから安心しろ()オン」

 勝ち誇った笑みを隠し切れていないジェノス。彼の右腕であるリリィとリオンとでは試合にすらならないと嘲笑っているようにも見える。

 名前を間違えるな、という抗議すら出来ないままリオンは生唾を飲み込む。

 ジェノスが通信を切った瞬間、リリィの駆るMF【夜光】の空気が変わったのだ。

 決闘は始まっている。

 構えるでもなく右手に愛刀を持ったまま仁王立ちをしている武者。

 赤いカメラアイが月花を捉えて動かない。

「リオン……来るぞ!」

 セレネの声とほぼ同時、夜光が地を蹴り大きく跳躍。

 木々よりも高く舞い、太陽を背にして落下してくる黒い影。

 回転を加えた踵落としが、蒼い騎士を襲う。

「リオン、防御だ! 防御、ぉお!」

 セレネが先んじて防御を促したが、リオンは回避を選択。

 機体重量に加え、落下速度を考えると防御できたとしても、腕が引き千切れるとの判断。

 幸い高く飛び過ぎた夜光は、落下してくるまで時間がある。前方にブースターを吹かせ後退すれば――

「なっ! んでだよ! おぁぁっ!」

 落下地点よりも余裕を見て距離を取ったリオンだったが、夜光はブースターで落下地点の微調整を行い、月花の頭部に踵落としを見事に決める。

 大地が陥没する音、そして首部の機械靭帯がミシミシと軋みを上げた。

 加えて、着地と同時に振り上げられた武者の剛腕。

「ん!? 意外と頑丈……これはさっきの……お返し」

 リリィの悪戯な声の後、洒落にならないボディタッチが騎士の胸に食い込んだ。

 リリィが行ったことは、“胸を触る”という次元を超えている。魔科学装甲を陥没させているのだ。

 歯が浮くような鉄の悲鳴が樹海に轟き、蒼い甲冑は水切りをする石のごとく“樹海”を転がり跳ねた。

 十数本という大木を粉砕しながらようやく静止した蒼い弾丸は、木々をむしり取りながら立ち上がろうと試みるが、立ち上がれない。

「ったたぁ……だから、防御だと言っただろう! アホリオン! バカリオン!」

「っくぅ、いてぇ、悪かったよ! いっ!」

 アホリオン、バカリオン。まるで呪文の様なこき下ろし文句。

 既に全速力で駆けている紫の武者を捉えて声を上げたリオン。起き上がり様に更なる攻撃を仕掛けて“蹴り”を付けるつもりか。

「月花……ごめん」

 武者を駆る少女の気遣い。圧倒的な力の前に成す術も無く月花はまだ、地を這いつくばっていた。

 たったの二撃でこのありさま。

 まさに秒殺。夜光はこのままボールを蹴り飛ばす様に、月花の頭部を蹴り飛ばし戦闘不能にするつもりだろう。

 視界を失えば、降参するしかない。

「くそ……」

 力の差が歴然過ぎる。

 見様見真似で、月花の操縦を覚えたリオンと幾度の死線を越えて来たリリィ。

 差があって当然だ。しかし、納得行かない、納得したくない。

 わけのわからないまま決闘させられ。

 さんざん馬鹿にされて。

 たったの一撃も与えられない。

 良い見せものではないか。

「やられて――」

 ようやく立ち上がる月花。が、無防備な状態は変わらない。

「たまるかってんだぁー!!」

 叫びながらリオンは操縦桿を乱暴に突き出す。

 途端、蒼い騎士のカメラアイが輝き、頭部のバイザーが下りる。

 ようやく、――騎士が戦場に赴く――

 完成された全身鋼鉄(フルメタル)の戦装束。蒼い装飾を髪のようにたなびかせ碧眼(・・)の蒼い騎士が目覚めた。

 稼働を開始した全身のクリフォト・ドライブが音を立て魔力を放出。

 迫りくる敵は眼前。

 蒼い騎士は大きく踏み込み、片膝を付いて右腕をフルパワーで解き放った。

 鋼鉄の蒼腕に魔力がたぎり、肩部と腕部の接合ギアが勢いよく回転、爆発的な怪力が生まれる。

 更にパイルバンカーと言う重りが、この一撃をより強力なものに昇華させていた。

「反撃の前に頭を……!」

 対するリリィも最大速度に達した機体から、回し蹴りを月花の頭部へ叩きつける。

 地響きを思わせる衝撃音が二つ。

 樹海に住む生物達が一斉に声を上げては逃げ失せる。

 訪れる――静寂。

 追撃に来た夜光の蹴りは月花の顔面に亀裂を走らせたものの、地面にしがみ付いている月花の体は衝撃を地に流せるため微動だにしていない。

 しかし、軸足の一本で機体を支えている夜光。月花の重た過ぎる一撃を受け止められるはずもなく。

 衝撃波でも喰らったかのように、夜光は走って来た樹海を転がりながら逆走させられた。

 爆発音にも近い騒音。その音を否定するかのように、唸り声を上げる眼帯の男。

「んだと!? あの機体、化物みてぇな硬さだ……それに、姫さんの懐を抉るとは」

「機体さまさまってとこだね。今のリリィの一撃、並みの機体だったら生首が吹っ飛んで試合終了だったろうよ」

「まさか……ババァ。ここまで見越してあいつらを戦わせたのか」

「フ―ッ……さぁ、どうだろうね」

 舌打ちするジェノスに対して、チョベリーは煙管を咥えながら嬉々として砂時計を見つめている。

 一方で、大事な大事な“姐さん”を吹き飛ばしたリオンに罵声の言葉を浴びせる義賊達。幸いだったことは、サイが今にもハンドレットを駆って飛び出しそうな髭面強面のウィッツを必死に抑え付けていることだろうか。

「今の……俺が?」

「あぁ……まぁ、咄嗟の判断としては良かったと思うぞ、凄く」

 呆気に取られているセレネから、彼女が操縦したわけではなさそうだ。

 傷だらけの蒼い甲冑は、バイザーを再び頭上に戻し何事も無かったかのようにゆっくり姿勢を正す。

 リオンは操縦こそしたものの、あんな低姿勢からの右ストレートを放った覚えが無い。まるで――勝手に機体が自衛したかのような不気味な感覚。

「いや、月花が勝手に――」

「リオン、リリィの逆鱗に触れてしまったようだぞ」

 困惑しながら後部座席に振り返る少年は、そこに座るセレネに正面モニターを指さされ驚愕する。

 武者と騎士によって切り開かれた一本道。その先には、ボディアーマーが痛々しく欠けた夜光が排熱作業を行っていた。

 白い蒸気をフェイス、腕部、脚部などの各部から噴出する鎧武者の姿は、憤怒した阿修羅そのもの。

 刀を支えにしてゆるりと立ち上がり、夕日の様な赤き双眸(そうぼう)を“敵”に向けた。

「手加減……っく、不要!」

 感情を押し殺せていない声で銀髪の少女が言い放つ。

「やべぇ! 姐さんがキレたぁ!」

 サイの頭を掴みながらウィッツが絶叫する。

 刹那――メタルフレーム夜光が抜刀。

 峰を向けていることからルールの分別は付いているようだが、クリフォト・ドライブを経由して放出される赤い魔力が視認できる程の魔力量。

 魔力を主動力とするサウザンドの性能は乗り手の魔力量……素質に左右される節がある。

 視認できる程、高濃度の魔力が機体から発せられる乗り手など、リオンから言わせれば異常である。

 これが義賊“戦争のハイエナ”侍姫の力。

 蜃気楼のごとく妖艶に輝く銀刀。魔力を送られることで輝きを増したあの刀、恐らく魔科学兵器。

 ウインド村を襲った盗賊が使用していた“太刀”と同じ攻撃系統のものか、はたまた刀を思わせる防御系統のものか。

「セレネ、あれって」

「私にもわからん、とにかく刀には要注意だ」

 スッと下構えに銀刀を構え、徐々に速度を上げて接近してくる紫の武者。

 その疾走には先程のような音は無く、まるで地を滑っているかのような軽やかさだ。

 魔科学兵器の効力はわからないが、接近しなければ効力を発揮しないものと考えていい。

「リオン、こっちも何か武器を!」

「いや、武器なんて……」

 月花の周辺に武器などない。ふと、両腕に搭載されたパイルバンカーが視界に入る。

 しかし、コレは使えない。

 万が一、射出した先がコックピットならば乗り手は即死だ。“月花”のように正確な射出がリオンにできるとは到底思えない。

 それに先程の一撃がパイルバンカーの使用を恐怖させる。

 先程の一撃、あれはリオンにとって覚えの無い一撃だった。

 もし、リオンでない何者か(・・・)が自衛のために行ったのならば、パイルバンカーの使用は搭乗者……リリィを殺しかねない。

 だが、あの魔科学兵器に太刀打ちできる武器など他にあるはずもない。

 降参してしまうか、それとも素手で魔科学兵器の相手をするのか。

 思考するリオン。そこに陽気な声が通信で入ってくる。

「レオン! 使え、家の姫さんがルール違反した。お前も武器を持て」

 軽々と軍用ブレードを投げつけるジェノス機。

 高々と宙を舞い、無粋な音を立てて地面に叩き付けられた大剣。それは間違いなくサイに白刃取りされた大剣だった。

「え……使って良いのか?」

「丸腰でウチの姫さんに勝てるとでも? それに騎士様が剣を使うのは当然だろ?」

 敵が使って良いと言ってるのだから使って良いのだろう。

 盛り上がればそれで良いと言うのか、現状、敵であるはずのジェノスからの贈り物。

 柄を両手で掴み、牽制として大きく剣を振り回す蒼い騎士。

 が、一太刀浴びせようと駆けてくる武者に牽制など効かない。空を斬る大剣など恐れるに足りないのだ。

「それは、当たらない……隙を作るだけ」

 悪魔の呟きが微かに聞こえたかと思うと、月花のコックピットは激しい揺れに襲われた。

 まだ刀は振り上げられていない(・・・・・・・・・・)というのに。

「どうなってんだよ。おぉぉ!」

「あれは恐らく残像だ。レーダーを馬鹿にするんじゃなくて、肉眼までも馬鹿にする魔科学兵器なんだろう」

 (しろがね)の幻影が騎士を取り囲む。

 

 熱量や魔力量でレーダー上に残像を残すことは簡単だ。しかし、カメラアイや肉眼にまで残像を残すことは、自然現象でも困難極まりない。

 近接武器に残像が残るとすれば、白兵戦において絶対的優位に立てる。

 “斬られたことに気が付かない名刀”とはまさに眼前の銀刀を指す。

 峰打ちとはいえ、初撃で月花の装甲は更に陥没。

 加えて、恐るべき速度で連撃を加えている紫紺(しこん)の荒武者。

 荒々しくも太刀筋の整った剣の舞は騎士の重厚な鎧を痛めつける。

 幾多もの刃が眼前をうろつくため、もはや残像と実像の区別はできない。それ以前に、光速の太刀筋など視認も回避もできるはずがない。

 幾度も鉄の抉れる音は、さながら剣撃の狂想曲といったところか。

「ぐぅう! リオン、距離を取れ! ナマ()切りにされてるぞ」

「ナマス切りだ! ちくしょう、喰らえぇ!!」

 アラームが装甲ダメージの限界を知らせている。

 いくら月花の装甲が逸脱していても魔科学兵器の攻撃には歯が立たない。

 この窮地を一刻も早く逃れたくて、リオンは何も考えずに大剣を片腕で横薙ぎに振るった。

 月花の圧倒的な怪力で強風を巻き起こし、大剣は木々を次々と薙倒して行くが、あろうことか振り切った大剣が強靱な大樹に食い込み、囚われたのだ。

 ここは荒野ではない、周囲の状況をわからず闇雲に剣を振るえば少年のようなミスを犯す。

「な……しまった!」

「……私の勝ち」

 気の抜けたリオンの声に続くは、透き通るリリィの声。

 両膝を付いて、腕を全開に広げる蒼い騎士。“どうぞ斬って下さい”と言わんばかりの無様なポージングを決めている月花。

 首筋にスッと振り下ろされる銀刀。誰がどうみてもチェックメイトであろう。

「っくそぉぉ!」

 考えより先に、ブースターをフルスロットルまで捻る。

 六つの大型ブースターが膨大な魔力によって、点火。

「はっ――」

 リリィが息を飲んだその時には、蒼い騎士の頭部が夜光のカメラアイに激突。

 蒼い甲冑から繰り出される、頭突き。

 紫と蒼の装甲破片が空気中に舞う。

 騎士とは思えない野蛮な戦術を見て、ジェノスは口元を緩めている。

「往生際が悪い野郎だな。さっきの一撃といい……単なる素人ってわけじゃなかったってことか――って、ババァ、何してやがる」

「あん? あんたにゃ関係無いことだ。お前は黙って喧嘩を見てりゃいいんだよ」

 夜光と月花の決闘を見ながら、紙にペンを走らせる老婆。その様子は学者そのものであった。

「へん、相変わらず口の減らねぇババァだ」



「予想以上……」

「ぁっ、はぁっ、マジで……マジかよ」

 信じられないといった様子を見せるのは、リリィだけではなかった。

 リオン自身、自分が無様なりにも戦えていることが信じられない。

 搭乗している機体が月花でなければ、秒殺だったであろうが、抜きん出た防御力を誇る蒼い騎士は、彼を形だけでも戦士として機能させている。

 距離を取って相手の出方を覗う両者。

 月花から眼を逸らさず思考しているリリィに対して、リオンはこの現状を乗り切ったことを認識することで限界。

 次なる戦術など頭に思い浮かばない。

 まず、あの魔科学兵器をどうにかしなければ、次の接近で月花は行動不能になるまで切り刻まれるだろう。

 額に汗を滲ませる二人のMF乗り。

 すると、突然、月花の体がガクッと、まるで糸の切れた人形の様に(ひざまず)く。

「え? おい、どうした月花!」

 碧眼(へきがん)のカメラアイからも光は失われ、月花は活動を停止。

 コックピットの電源も落ちており、視界を照らすのは非常用バッテリーによる薄緑の光だけ。

 先程まで半分は残っていた燃料ゲージが空になっている。ブースターの使用がこれほどまで燃料を喰うとも思えない。

「セレネ、月花が――」

「むぅ……もう駄目だ」

 後部座席から擦れた声。月花ではなく、魔力を送っているセレネの身に何か起きたというのか。

「大丈夫かセレネ! 一体、何があった」

 リリィの使用した魔科学兵器には、乗り手の体調に影響を及ぼす効果があったのかもしれない。

 薄緑が広がる視界の中、身を乗り出してセレネの安否を確認しようとした矢先。

 きゅーっと小動物の鳴く様な声、いや、腹の音(・・・)がコックピットに響く。

「……おい、まさか腹が減って力が出ない、とか言い出すんじゃないだろうな」

「ぁ、ぁ……リオンよくわかったな、腹ペコだ」

 照れを誤魔化すように頬をぽりぽり掻くセレネ。

 すると突然、口元を抑えて苦しそうに声を絞り出す。

「うっぷ、残像を目で追っていたら吐きそうになってきた。あぁ、もう吐く、吐く。もう決めた、よし、吐こう」

「勝手に決めるなよ、おい、やめろ! 気をしっかり持て、早まるな! ちょっと待て! 待って下さい! 待って――ぎゃぁぁあ!!」

 決闘結果。

 月花――戦闘続行不可能なため、勝者・夜光。

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