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相談と提案

 

 迷宮攻略四日目、現在五十二階層。


 階層を進む毎に敵の脅威度は増し、攻略ペースは落ちて来ている。


「先ほどの動きはよかった。左手の剣に追随するように振るわれた右手の剣には、腰の捻りと回転による力が伝わっていた。だいぶ上達したな」


 今では両パーティ混合で戦闘を行い、それぞれ助言を貰いながら自分の動きを見直している。


「アランよ、君のパーティは機動力が高い。特に前衛の二人は並の攻撃は容易く避けるだろう。その場合は全ての攻撃を受け止める必要はないから、火力補助に回るのがいい。具体的には――」


 グリオンとアランは純粋な師弟関係に見える。


「なぁミーシャちゃん。ウチの技どうやった? カッコええか? ん?」

「レイラ、あなたの側に武器を振り下ろす時、当たる位置じゃないのに回避してるけど、そんなに信用出来ない?」

「そうじゃないの、まだ他人と組んで戦う事に慣れてなくて、反射で避けちゃうのよ……貴女の事は信頼してるから、その内慣れると思うわ」

「あれぇ!? もしかしてウチの声聞こえてへんの!?」


 ミーゼは……可哀想な人だな。絡む相手が悪かった。

 ギムルは相変わらずムスッとしてる。



「マナちゃんって、本当に精霊から愛されてるわねぇ」


 そんな中でリジーとマナの会話が気になった。

 いつかエルフのエモが言っていた事を、リジーも話していたのだ。


「精霊さんに? それってどうゆうこと?」


「そのまんまの意味よぉ。精霊さん達は、マナちゃんが可愛くて可愛くて仕方がないの。そうだ、マナちゃんは悪い人を直感的にわかったりしないかしらぁ?」


 その質問にはレイラが答えた。


「そうね、この子は人を見る目があると思ってたけど……それって精霊の影響だったの?」


「えぇ。精霊がマナちゃんを危険な目に合わせたくないから、必死に訴えかけているのよぉ……ねぇマナちゃん。試しに見回して欲しいんだけど、ここには悪い人はいないかしらぁ? 例えばほら、リュートちゃんとか?」


 悪ふざけみたいな口調で言ってみせたリジーだが……いや、勘繰るのはよそう。


「ししょうはとってもいい人だよ!!!」


 リジーの言葉に少し怒った様に語気を強めたマナだが、そのあと少し悩んだ様子で「でも……」と呟く。


「でも、ししょうの事は、少し可哀想って精霊さんは思ってるみたい」


 なんで精霊に同情されてんだよ。

 というか、エモは俺も精霊に愛されているって言ってたけど、それは憐れまれているの間違いだったのか? 可哀想だから力を貸してくれてるって事?

 俺が不満を溜めてる一方で、リジーは目を丸くしていた。


「まぁ! マナちゃんは精霊の感情までわかるのね! 本当に凄い子だわぁ」


「ううん、今初めて精霊さんの感情が感じられたみたい」


 よくわからないけど、マナも成長してるって事だな。

 ……と、そこまで考えて漸く初日のマナの戸惑いの理由がわかった。


 ――レガリスとリジーは俺たちにとって危険になるかもしれない。


 マナは二人を見て困惑していた。

 特に相談をしてこなかった辺り、二人に明確な悪意があるわけではないのだろう。

 しかし何かを企んでる可能性はある。

 それがきっと、ここ数日感じてる違和感の正体だ。


 どうする?

 迷宮攻略を中止して帰還するか?


 いや、それは大袈裟な気がする。

 二人とも俺たちに親切にしてくれているし、今の所は敵とは思えない。思いたくない。



「リジー、腹が減った。今日はそこの小部屋で休まねぇか?」


 後方から歩いて来たギムル。久しぶりに口を開いた気がする。


「そうねぇ、迷宮内にいるとわからないけど、もう夜なのねぇ」


 ポーチから取り出した懐中時計を見て、リジーは頷いた。


「レガりん、今日はここまでにしましょう。リュートちゃん、ご飯作るの手伝ってくれるかしらぁ? 貴方って意外な才能があるんだもの」


 料理の腕を買われて一緒に夕食を作る事になる。



 岩の小部屋に入ると、グリオンは歩き回り、岩の裏や天井を見上げ、罠や異変がないかを確認する。

 俺とリジーは早速食材と調理道具を出して料理に取り掛かり、レガリスはそれを眺めている。

 レイラ達やミーゼはテントを張っている。

 そんな部屋の中でギムルが口を開いた。


「今日はあんま戦ってねぇから寝付けそうにないな……おいアラン、テメェ俺のサンドバッグになりやがれ」


 疲れてないと寝れない理論を口にしたギムルは親指で部屋の外を示す。


 魔物に遭遇したら危険じゃないか、とも思うが……この二人なら平気か。


「はは、手合わせの誘いなら、喜んでお受けしますよ」

「チッ、腹立つ笑い方しやがって。おいリュート。オレらが出て行ったら部屋の入口塞いどけよ」

「はいはい」


 俺達に迷惑をかけない様に配慮してくれたのだろうか。

 二人が出て行ってから地属性魔法で岩を作り、外敵が入って来れないようにする。二人が帰って来たら消滅させて作り直そう。


「ったく、ギムルはホンマガキやなぁ。落ち着きってもんを母ちゃんの腹ん中に忘れて来たんとちゃうか?」

「……あなた、人のこと言えないと思うよ」

「ミーシャちゃんやっと話してくれたと思ったら辛辣やねぇ!?」


 仲が深まって来た(?)女子達を横目に調理場に戻ると、煮込みの待ち時間だからか、リジーが本を読んでリラックスしていた。


「なんだ、もう殆ど終わりか……」


 そう呟きながら何気なく本の表紙を見て、言葉を失った。


『奇異な魔術 その二』


 数日前のグラベルさんとの会話を思い出す。

 あの本には間違いなく巫術に関する事柄が載っており、殆ど世に出回ってない希少な本だ。


「あらぁ、戻って来たのねぇ……どうしたの? この本、気になるかしらぁ?」


 人参を目の前にぶら下げられた馬の気持ちがわかった気がする。

 何を対価に差し出せば読ませてくれるだろうか。


「ふふ、料理手伝ってくれたから、読んでいいわよぉ?」


 そう言って本を渡してくれるリジー。


「いいのか!?」


 問いながらも返事を待たずに受け取り、すぐに開く。


「ふふ、魔術を学ぶ人からしたら、とっても面白い本だものねぇ」


 座ることも忘れてその場でページを捲る。

 風を吹き上げて物を浮かせる浮遊魔術や、自分の体を魔力で縛り付けて鈍くする鈍足の魔術など、用途不明なものを含めた様々な魔術が載っている。

 その本の後半に、見つけた。




 ――――――




『巫術』

 魔術というのは、基本的には誰にでも扱える。もちろん学習と鍛錬を正しく行えば、という前提がつくが。

 そんな魔術の中の例外というものが、この巫術だ。

 術者の適性によって、巫術によって出来る事が大きく変わる。

 ……とは言え、具体的な術の効果を、私は知らない。

 何故なら、この魔術は魂に干渉する術であり、それは魔術学の第一原則を破る事なのだ。

 私は学者として、誤った道に踏み込むつもりはない。故にこの術に関してこれ以上知る事は出来ないのだ。すまなかったな、読者の諸君。


 ………………と、ここで終わらせたら色んな所からブーイングの嵐が飛んで来そうなので、巫術で出来る事出来ない事を、根拠を交えて推測していきたいと思う。


 まず初めに、皆んなは魂への干渉と聞いて何を思い浮かべる?

 そうだね、生死の概念だ。

 もしも巫術が使えたら、死者の魂を蘇らせる事が出来るんじゃないか。そう考えた人は多いだろう。

 しかし残念、それは恐らく不可能だ。

 理由かい? 簡単な話だ。世界の理に反するからだよ。

 肉体が死んだ場合、魂の大部分は輪廻に戻り、転生を行う。この輪廻っていうのが厄介もので、人が干渉する事の出来ない世界の理の一つなんだよ。

 覆せない世界の理っていうのは、輪廻に時空、夢境の三つだね。詳細は省くけど、これら三つの事象に干渉する事は人に許されていない。

 もしも魂を生き返らせる事が出来るなら、それは神の御業さ。


 じゃあ巫術で何が出来るんだよって声が聞こえてきそうだから推測の続きを綴ろう。

 皆んなは固有魔法を知っているね?

 今までは魔物の魔法だって言われて忌避されていたけど、近年では人に発現する事も多くなったよね。

 固有魔法っていうのはね、簡単に言うと魂に刻まれた魔法陣から放たれる魔法なんだ。

 だから固有魔法を使える人の魂を巫術で抜き出せば、その固有魔法を貰えちゃうってわけさ!


 ……え? 魂は輪廻に戻るから貰えないって言っただろ?


 うん、その通りだ。でも一ページ戻って欲しい。私は、魂の大部分は輪廻に戻るって言ったんだ。輪廻に戻らず溢れて消える部分もあるんだよ。消えたものは魔素に分解されて世界に溶けゆく。その僅か一欠片でも貰えれば、恐らく固有魔法は受け継げる。

 え? それは世界の理に背く事にならないのかって?

 うーん、考えてもみてよ。

 大量の金貨が詰まった袋を落とした人がいます。

 それを拾ったら持ち主に返すのが自然な事だよね?

 丸ごと盗んだら絶対バレてぶっ飛ばされるもん。

 でもさ、その袋から一枚だけ金貨を抜き取って盗んでも、多分バレないんじゃないかな? バレたとしても、「一枚くらいいっか」って許されるかもしれないよね?

 ……え? そんな事しないからわからない?

 ハハッ、この偽善者め(笑)

 とにかく、そんな感じで魂の欠片くらいなら貰えるんじゃないかなぁって思うよ。

 だから巫術で出来る事は固有魔法の受け取り――今わかっているのはそれくらいかな。


 ……念の為に書いておくけど、これは禁術だから手を出さない方がいいよ。固有魔法だって受け取った所で扱えるかは不明だしね。好奇心で身を滅ぼさないように気を付けたまえよ!




 ――――――





 もう疑いようがない。

 俺の固有魔法はギータが言った通り、死者の魂の一部を奪い取る巫術だ。それによって固有魔法を受け継いでいたのだ。


「ふふ、満足してもらえたみたいねぇ……」


 いつの間にか俺が読んでいるページを背後から覗いていたリジーに本を返す。


「あ、あぁ。ありがとう」


 それ以上はお互い何も言わずに、調理器具を片付け始める。


 様々な疑問が頭の中を彷徨い続ける。


 俺の固有魔法は巫術だ。禁術だ。

 シフティはそれを知っていたから分離させた魂の一部を授けてくれた。

 何故だ? 何故俺に肩入れする?

 寧ろ禁術使いの俺を討伐するべきだろう。

 そしてそれは、シフティの背後にいるフィオナに関しても言える事だ。

 巫術使いの特性的に、俺は戦えば戦うほどに魂を吸収して強くなる。

 ならば俺が巫術使いと知ってすぐに殺しに来るのが合理的な処分方法だ。放っておけばどんどん力を付けてしまうのだから。

 なのに俺を殺そうとする者などいなかった。


 もしかして、本当に殺すつもりなどないのか?

 じゃあ何故巫術使いを探していたんだ?



「――ト! リュート!」


「!? な、なんだ、アランか」


 考えながら過ごしている内に、就寝時間となっていた様だ。


 岩壁で小部屋の入口を塞いだとはいえ、警戒しておくに越したことはない。故に交代で二人ずつ、見張り番を決めているのだが、今夜の最初は俺とアランだ。

 尚、俺には危機感知のスキルがあるとレガリス達には伝えたが、それが通用しない敵もいるかもしれないと言われた。確かに災禍の迷宮に出たキメラは危機感知で察知出来なかった為、見張り番を立てる事を了承した。


「大丈夫かい? ずっと考え事をしている様だけど」


「あぁ、問題ない」


 短く答えて、小部屋の入口付近の壁に寄り掛かる。

 部屋の中には二つのテントがあり、その中で仲間達は眠っている。


「リュート、この迷宮に来てから……いや、正確に言えばレガリスさんやリジーさんと会話を重ねる度に、君は動揺と悩みを抱え込んでいる様だ」


 そう言いながらアランは俺のすぐ隣に来た。

 そして声を潜めて言う。


「君は今、僕らに言えない秘密に関する事で思い悩んでいる。そうだろう?」


「……」


 情けない話だ。

 自分の事ばかり考えて、仲間達に心配をかけていたらしい。

 けど、巫術に関する事は話せない。


 いや、或いは……俺が禁術使いだと話して、このパーティは解散させるか?


 グラベルさんも言っていた通り、禁術に手を染めた者は、リュドミラという一人の例外を覗いて皆処分されたのだ。

 そんな大罪人と共にパーティを組んでいたら、彼らまで罪に問われるかもしれない。


「アラン、俺は――」


「――言わなくていい。いや、言わないでくれ」


 しかしそれは、はっきりとした拒絶の言葉だった。


「君は今、自分がどんな顔をしているかわかっているのかい? 孤独を受け入れたような暗い顔をしている。どうせ次に吐き出す言葉は、パーティを抜ける、とかそんな言葉だろう」


「…………」


「君の助けになれない自分の無力さが腹立たしいよ」


「いや、そういう事じゃ――」


「そういう事だよ。僕らがもっと強ければ、君は僕らに頼ってくれたかもしれない。だから僕はもっと強くなると決めたんだ……でもそれじゃあ、今これから起ころうとしている問題には間に合わない」


「これから……?」


「ここからはギムルさんからの助言だ」


 アランはそう前置きしてから、より一層小さい声で話を続けた。


「君も勘付いているだろうけど、レガリスさんとリジーさんは君に疑いの目を向けている。いや、もしかしたら既に疑いの段階は過ぎているのかもしれない」


 まぁ、そうだよな。

 でも疑いって一体何を……。


 まさか、俺が巫術使いだとバレたのか?


 いや、バレてたらもっと明確な敵意を向けられてもおかしくない。

 でも巫術の事を嗅ぎ回っている事くらいはバレてるだろうな。

 考えてみれば、グラベルさんの友人のエルフというのは、リジーの事だろう。

 殆ど出回っていない『奇異な魔術二巻』を持っていた時点で気付くべきだった。

 それにしてもあの若づくりエルフめ、人の目の前にエサをぶら下げて探る様なマネしやがって……。



「心当たりはあるようだね。それで、ギムルさんが言うには、彼らは先生って人を呼んで君を処分するかもしれないって。だから逃げるべきだと言っていたよ」


「処分……」


 そんな明確な殺害予告を受けたのは初めてだ。


「勿論そんな事はさせない。リュート、今ここは五十二階層だ。最深部の攻略者が提供した情報によれば、五十五階層に帰還用岩盤があるらしい。君はそれで迷宮を出るんだ。理由はなんでもいい。仮病でも、怪我でも。僕らは攻略の続行を提案するから、君は一人で逃げるべきだ」


 帰還用岩盤とは、片道エレベーターの事だ。

 それに乗って出るという事は、迷宮攻略を諦めるという事。

 そんな提案をしてくるという事は、事態はそれほど切迫しているのだ。


「でも、もし先生とやらを呼ばれたら、僕らじゃ到底太刀打ち出来ない。そこで逃亡先の提案なんだけど……リュート。君にとってフィオナという人は、信用出来るのかい?」


「なっ……どうしてフィオナの名前を?」


 冒険の途中に、シャミスタの街で人に会う個人的用事があるとは伝えていたが、仲間達にフィオナの名前は出していない。


「ガイストさんから聞いたんだ。彼はフィオナさんを疑って、リュートを守ってやってくれって言っていたけど……君にとってはどんな人なんだろうと思ってね」


 ガイストめ……どこまでもお節介な奴だな。その優しさに苦笑しつつも、フィオナに関して今思うことをありのままに語る。


「最初は敵になるんじゃないかと考えていたんだが、ならもっと早い段階で俺を処分しに来ていた筈だ。なのにフィオナはシャミスタでただ俺を待っている。もしかしたら、敵というわけじゃないのかもしれない……何より、俺の大切な友達が尊敬する人だしな」


 結局の所、俺はゴブ太を信じる事にした。

 ゴブ太がフィオナの事を話す時、そこには憧れや尊敬が感じられた。

 フィオナが何を考えているのかはわからないが、ゴブ太が会いに行けと言うからには、会うしかない。


「でもどうしてそんな事を聞くんだ?」


「先生って人が君の元に来るなら、その人の強さに対抗出来る人に助けを求めるべきだ。僕は最初ガイストさんを思い浮かべたけど、レガリスさんが畏怖する程の人だ、ガイストさんですら対処は厳しいかもしれない。そこで思い出したのが、ガイストさんが凄い人と評していたフィオナさんの名前だ」


「……アランは、俺はフィオナの元へ逃げるべきだと思うのか?」


 俺の問いに、アランは頷く。


「でも、逃げてどうする? その後は? 俺には目的があって――」


「わかってるよ。でも、例えその場凌ぎの逃走だとしても、それで生き延びられるなら賢い選択だ」


 生きる事こそが大切なのだとアランに諭され、少し冷静になる。


「わかったよ……でも気になるのはギムルの立ち位置だ。アイツはなんでアランに助言をくれたんだ? レガリス達の仲間だろ?」


「彼も悩んでいる様子だったよ。多分、自分の中にある正しさと、レガリスさん達の企みが一致しなかったんじゃないかな。僕は彼を信用するべきだと思うけど、リュートは信用出来ないかい?」


 初対面でいきなり襲いかかって来た獣人。

 乱暴な言動ばかりする危険人物。

 だが――


「……まぁ、この前自分で言ってた通り、背後から殺しに掛かる様なマネはしなさそうだな」


 つまり、アランに嘘の情報を教えて何かを企む様な奴ではないと思う。


「ふふ、そうだね。僕もそう思ったから信用したんだ――」


 その時、テントから物音が聞こえ、俺とアランは咄嗟に黙る。

 声を潜めて会話していた為聞かれてはいないと思うが、物音の正体に警戒した。

 しかし、テントから現れた小柄な少女を見て安堵する。


「大事な話してた?」


 俺とアランを見て不思議そうに首を傾げるミーシャ。次の見張り番だから起きて来たのだろう。

 彼女には聞かれても問題無い……というか、話しておくべきだろう。

 そう思ったのだが、続けて顔を出した人物を見て口を閉ざす。


「ふぁあ……もう見張り番交代の時間か……ん? なんや兄さん二人、やけに距離近いけど、もしかしてそういう関係なんか? ま、ウチは理解ある女やし気にせんで……ほげぇっ!?」


 変な勘違いを始めたミーゼの腹をミーシャが殴り、黙らせる。結構強かったらしく、地面に蹲るミーゼを見て悩む。

 彼女がレガリス達の企みを知っているかは不明だが、黙っておくに越した事はないか。


「じゃあミーシャと……地面に這いつくばったクソ虫。見張りは頼んだぞ」


「うん、おやすみ」

「ちょぉお! アンタらウチの扱い酷すぎぃ!」


 その後、「ミーゼうるせぇ!」というギムルの怒鳴り声が聞こえてくるテントに戻り、俺たちは休息に入った。

 同じテント内にはレガリスもいるが、今の所は敵意も悪意も感じられない為、変に意識するべきではない。


 ただ、明日以降どうなるか、という不安は眠りにつくまで拭う事が出来なかった。


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