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特別チーム

 

 井田さんとの話もあり、俺はアスカに協力する事を決めた。それを伝えた翌日、俺達は神蔵協会に集合した。


「君の協力を感謝しよう。詳しい話は……ダンジョンの中でどうだろうか」


 人が集まるロビーでは踏み込んだ会話が出来ない。その為にダンジョンに潜ろうと言うアスカだが――


「二人で、ですか?」


 周囲を見回しても、ケイやガンスケ達はいない。


「あぁ、この件に首を突っ込んでいるのは私だけだ。それに、皆こちらに引っ越して来たばかりで、荷解きが終わっていないらしい」


「チームって、いつも皆んなで行動してるものだと思ってましたけど、アスカさんのチームはそうじゃないんですね」


「そうだな、私達はメンバーを欠いたままダンジョンに潜る事もある。レイジなんか、ソロで活動する事も多いぞ」


 それは昨夜井田さんから聞いた情報通りだな。


「そういう事なら、行きましょうか。アスカさんさえいれば、深層まで余裕でしょうし」


「評価してくれるのはありがたいが、ダンジョンを甘く見るべきではない」


「わかってますよ」


 話ながら受付に向かう俺達の元に、割り込む人が一人。


「ちょーっと待ったぁ!」


 その声にドキリとする。

 けど、ここに来れば会うかもしれないと予想していた。だから大丈夫だ。


「なんですかお嬢様。なんでここにいるんですか? 暇なんですか?」


 そうだ、いつもこんな感じだった。


「ぐっ……あ、アタシがここにいる事より、アンタ達二人が一緒にいる事の方がビックリでしょ! 周りの反応見てみなさいよ!」


 話題を逸らしたのは、何かやましい事を隠しているからか?

 そんな疑念に脳内を侵食されそうになるが、呼吸を整えて落ち着きを取り戻す。

 疑念に侵される事も、盲信する事も、あってはならない。


 リカに言われた通り辺りを見回してみれば、確かに興味深そうにこちらを見る探索者達の姿。


「そう驚く事ではないだろう。原初のダンジョンの深層を知っている彼に案内を頼む事は」


 俺達が事件について嗅ぎ回ってる事は公に出来ない。だからアスカは当たり障りのない返答をする。


「案内ねぇ……。ま、いいわ。そういう事ならアタシも案内してもらおうかしら。確か三十階層に新種の魔物が出たんでしょ? それをカメラに収めたいのよ」


「そういえば、その魔物の発見者はリュートだったな。丁度良い機会だし、三人で潜ろうか」


 その言葉に焦った。

 今日は魔素異常の件について話す予定だったのだ、そこにリカを加えるのはマズい。

 もしもリカが犯人だった場合、俺とアスカが嗅ぎ回っているのを知ったら……。

 最悪の場合、後ろから刺されてもおかしくない。そうじゃなくても、俺達を警戒して行動が慎重になるだろう。そしたら尻尾を掴むことが出来なくなる。


「アンタもいいでしょ?」


 当たり前の事を確認するみたいに、リカは俺に問う。

 どう答えれば禍根を残さず断れるだろうか。


「……えっと」


「な、なによ? まさか断るつもりじゃないでしょうね!?」


 段々と語気が強くなって来たリカに、咄嗟に返事をした。


「すみません、アスカさんと二人きりで潜りたいんです」


「わ、私を揶揄っているのか!?」

「そんなの絶対許さないわよ!」



 どうやら失敗したらしい。






 ⭐︎






 三人で潜る事になってしまった。

 なってしまったものは仕方がないので、せめてフォローをする。


「アスカさん、リカさんの前では事件の話をしないで下さい」


 ダンジョンの一階でリカが配信の準備をしてる間に、小声でアスカに注意する。


「君はまさか、リカを疑っているのか……?」


「まぁ、はい。詳しくは後で話すので、お願いしますね」


「そうか、だから私と二人で潜りたいなどと……紛らわしい事この上ないな」



「ちょっとアンタ達! コソコソ何話してんのよ! いつの間にそんな仲良くなったわけ!?」


 やけに怒りっぽいリカに苦笑を返す。


「配信には映りたくないって話してたんですよ。上手い事立ち回ってくださいね?」


「はぁ、アンタ達そんなにカメラが嫌なの?」


「映像記録を残しておけば役立つ、とは思うが……私も正直、自分が映るのは好まないな」


「ふん、しょうがないわね。出来るだけ映らないようにするけど、リスナーにはアンタ達と潜ってる事説明するわよ?」


「あぁ、それでいい」

「仕方ありませんね」



 上手く話を誤魔化してからいざ出発。

 リカはいつも通りに配信しながら先頭を歩き、俺とアスカは後ろからついて行く。



「アスカさんのチームは誰も配信してないんですか? 噂によると、探索者のランキングでは配信活動も加点要素らしいじゃないですか」


「あぁ、カメラが苦手というのもあるし、ランキングにも興味がないんだ。だから配信活動は面倒でしかない。チャンネルの運営やファンとのコミュニケーション、ドローンの位置調節など……それらを平然とやってのけるリカは凄いと思う」


 確かに配信は面倒臭そうだ。周りで飛び回るドローンに誤って魔法をぶつけてしまう事もありそうだし。

 アスカの言う通りリカはよくやってるよな、なんて思いながら前方を見る。


「――え? アスカを映して欲しい? ダメダメ、シャイガールだから映りたくないんだって。ん? あぁー、リュートならいんじゃない?」


「ダメだって言いましたよね三歩歩いたら忘れる鶏頭なんですか?」


「……なんかアイツ、いつにもまして辛辣なんだけど。……まぁそういう事だから、残念ね」


 まったく、油断も隙もない。



 だがそれ以降は、リカは俺たちに無茶振りをしてくる様な事もなく、順調に階層を降りて行く。

 道中の戦闘は、前方からの魔物はリカが対処して、後方からの魔物はアスカが対処した。俺は氷の弾丸で敵の牽制をしただけで、あまり働いてない。


「流石ですね、二人とも。確かこのダンジョンは四十八階層が最高到達域でしたが、お二人ならもっと行けるのでは?」


 隣のアスカに聞いてみると、苦笑を浮かべながら首を振った。


「最深部を目指すにしても、リカは私とは潜らないだろうな。実は半年前のこのダンジョンの最深到達者は、リカだったんだ。一人で四十階層まで潜ったんだ……だが、私達のチームが三ヶ月前、それを更新してしまってね。それが今の記録なのだが、そのせいでリカは私をライバル視してる様だ」


 それは知らなかった。どうりでリカがアスカに牙を剥くわけだ。

 俺は今のところ、三十五階層までしか潜った事ないから、二人は完全に俺の先を行っている。もちろん俺も日帰りに拘らず、ダンジョン内で寝泊まりしながら先を目指せばもっと深層へ行けるだろうが、現状そこまでする理由がない。無駄に家族を心配させるだけだ。




「さてさて、ようやく三十階層に到達ね。ふふん、やっぱこのメンバーだと早いわね……さ、アンタ達! 準備はいいわね?」


 話してる間にも歩き続け、五時間程かけて三十階層に到着。

 階段を降り、草原地帯の奥を見据えて――


「……チッ、ハズレね。いつも通りワイバーンよ」


 狙っていた堕竜ブラキリアではなく、それよりも小さい飛竜、ワイバーンが飛んで来る。

 俺も初日にブラキリアに遭遇してから何度かここに来ているが、あれ以降一度も見ていない。やはりレアだったのか。


「落ち込んでいる暇はない。来るぞ!」


 赤い鱗に覆われた目立つ飛竜が、どんどんと近付いて来る。

 アスカとリカが前に出て、俺は立ち位置を調整しながら右手を掲げる。


「とりあえず撃ち落とします!」


 急遽共に潜る事になったチーム故に、阿吽の呼吸と言えるような連携は出来ない。

 その為、魔法を放つ時は必ず何をするかを伝える様にしている。

 その上で、射線から二人が大きく外れるように、魔法を放つ。


 作り出すのは二本の氷の槍。

 狙いはあの大きな翼だ。

 俺の狙いに気付いたワイバーンが翼を畳もうとするが――


「遅い!」


 的が大きい事もあって、両の翼膜に命中。鱗と比べれば遥かに柔らかい部位の為、氷槍は難なく翼を貫いた。


「――――!」


 甲高い鳴き声をあげて地面に落下するワイバーンだが、即座に二本足で立ち上がり――


「はっ!」


 しかし、実に呆気なく、アスカの刀に首を落とされ絶命した。

 光の粒子になって消えた後、魔石と数枚の鱗がドロップ品として落ちる。


「ふぅ。やはり優秀な魔法使いがいると楽だな」

「こちらこそ、確実に仕留めてくれる剣士がいるお陰で、戦いが長引かずに済んで助かってます」


 お陰で魔力消費は殆ど無い。これは魔法使いにとって非常にありがたい事だ。



「むっきー! アンタ達本気で許せないんだけど!? ねぇアタシの出番は!? ねぇ! アタシ! 配信中! お膳立てしろとは言わないけど! アタシが介入する余地を残してくれたって、いいんじゃないかしら!?」


 俺達が戦いを振り返っていると、リカが発狂した。

 うん、文句言われるとは思った。でも……


「リカ。戦いは無駄に長引かせるものじゃない。私達が行っているのは殺し合いだ。それを忘れてエンターテイメントに興じると言うのなら、私は君とはダンジョンに潜りたくない」


「ぐっ……」


 アスカの言う通りだ。

 倒せる時に倒さねば、その後どう転ぶかわからない。仮に余裕のある戦いだとしても、直ぐに終わらせなければ、相手を無駄に苦しめるだけだ。


 リカは助けを求める様に俺を見る。


「そんな目をされても、俺もアスカさんと同意見です。リカさんの配信は有益な情報を発信する価値あるものだと思っていましたが、単なる娯楽目的でやっているのなら……俺も関わりたくありませんね」



「…………悪かったわよ。初心を……大事な事を忘れてたみたい」


 そう言って落ち込んだ様子のリカだが、アスカは彼女の肩に手を置き微笑んだ。


「それを思い出せるのなら君は大丈夫だ。そんな君だからこそ、私も彼も本音を語れるんだ」


 フォローも欠かさないアスカのイケメン具合に恐れ慄く。アランを思い出すくらいだ……というかこの人は本当にアランに似てるな。


「さて、それでは帰ろうか二人とも――」


 アスカが上り階段の方を向いた時――階層が揺れた。


「なんだ!?」


 異世界の迷宮にとって、魔素は非常に重要なものだ。魔素が濃い場所は破壊された床や壁の修復が早くなるし、そもそも頑丈で壊れにくくなる。

 また、魔物の補充もそうだ。

 殺されて減った魔物は、迷宮が魔素を使って産み出す。だから魔素の濃い場所程復活が早まる。


 今まで俺は、迷宮とダンジョンが同じものだと考えていたけど、もしかしたらそれは間違いだったのかもしれない。


「あれは……君が言っていた新種の魔物か!?」


 何故なら、この場所の魔素濃度なら、魔物の復活にはもっと時間が掛かる筈だから。実際、過去にここへ来た時はこれ程復活は早くなかった。


『迷宮とダンジョンは別物……? 或いは何らかのギミックが発動して堕竜ブラキリアを産み出したのでしょうか』


 久々に発言したリュドミラの言葉に意識が向く。

 ギミックを発動したって事は、何か罠みたいな物を踏んだのか? 特に思い当たらないけど……。


『リュート君、申し訳ありません。私はダンジョンと迷宮を同じものと考えていましたが、そうではない可能性が高まりました。今後はそれを意識しておかなければ、異常事態への対応を間違えるかもしれません』


 確かに、迷宮ならこうだ、と決め付けてしまえば視野が狭くなり、誤った判断を下してしまうかもしれない。


「いや、俺も同じ様に考えていたし、謝らないでくれ……」


 小声で返事をしてる間に、地響きは強くなっていく。堕竜が近付いてきているのだ。


「リュート! 何をボサっとしている!?」


「――っ。すみません。すぐに動きましょう! 事前に話した通り、地面からの攻撃に注意してください!」


「了解!」

「わ、わかったわ!」


 三人一斉に走り出す。

 俺は戦った事があるけど、二人は初見の相手だ。すぐにフォロー出来る様に、二人が視界に入る位置で動き回るつもりだ。


 一人で戦っていた時にはわからなかったが、ブラキリアの魔力制御能力は非常に高いらしく、獲物が三人であっても、三本の土棘を同時に作りながら正確に狙って来る。

 アスカは魔力の流れがなんとなくわかるらしく、土棘の発生位置を察知して難なく躱している。


 問題はリカだ。

 彼女には魔力を察知する手段がなく、動き回る事によってどうにか攻撃が当たらない様にしているだけだ。

 そのまま走りながらブラキリアの近くまで行って仕留められれば良いのだが、奴に近付けば近付くほど、攻撃は苛烈さを増して行く。土棘の鋭さや頑丈さ、発生速度までもが増している為、魔力感知が出来るアスカですら苦い顔をしている。


「眺めてるだけじゃ勝てないな……」


 彼女らよりも後方にいる俺に対する攻撃は、比較的甘い。その為、土棘を避けた後、僅かに余裕が生まれる。


「援護します!」


 攻撃が途切れた瞬間に、前衛二人に声を掛けて氷弾を放つ。威力よりも速度を重視したが、距離が離れている為ブラキリアの防御が間に合う。地面から突き出た岩の柱が、俺が放った氷弾を受け止めた。

 ならば数で勝負と、堕竜の饅頭みたいにデカい胴体のあちこちに氷弾を放つ。


「――――――!」


 しかし煩わしそうに一声鳴いた後、俺とブラキリアの間に、巨大な土壁が生成されてしまった。氷弾は悉く防がれてしまった上に――


「分断されたっ!?」


 壁の向こうからアスカの焦った声が聞こえる。そう、アスカもリカも壁の向こうにおり、俺だけが阻まれてしまったのだ。


「まずい……っ」


 信用してないわけじゃないが、二人を見失った事で不安が募る。

 すぐに走り出し、壁を乗り越え――いや、壊した方が早い。

 走る速度を落とさずにそのまま義手の拳を壁に叩きつける。

 土壁が崩壊する事はなかったが、殴った箇所周辺がボロボロと崩れ落ち、そこから二人がいる戦場に入り込む。


「――来てくれたか! リュート、リカの援護を頼む!」


 右方向には、舞うように土棘を避けながら、ブラキリアの足を斬りつけるアスカ。どうやら敵の攻撃に慣れ、刀を振る余裕が生まれたらしい。

 アスカなら大丈夫だ。

 言われた通りリカの援護をしようと左を向くと――


「ちょっ、何よこれ、泥!? くっ、急速に固まって……」


 ブラキリアのブレスを食らったらしく、全身が泥に塗れていた。

 俺が戦った時は、泥を受けた盾を即座に捨てた為気付かなかったが、どうやらあの泥は短時間で固まり、動きを阻害するものだったらしい。

 そして動きが鈍くなった獲物を土棘で貫くのが、ブラキリアの戦い方なのだろう。


「危ない――っ!」


 堕竜が操る魔力がリカの足下に集まる。だけど、魔力感知出来ないリカはそれに気付けない。

 俺は即座に走り出し、勢いも落とさずリカに突進して、そのまま抱き抱えた。

「ぐえっ」と潰れたカエルの様な声を出したリカは抗議の目を向けて来るが、俺達が飛び退いた場所を土棘が貫くのを見て、青い顔をした。


「ご、こめんなさい……アタシ、足手纏いみたい」


 すっかり自信を失くした彼女を見て、あの時のミドリを思い出した。

 今この瞬間、協会の依頼の事も、離れた場所で戦っているアスカの事も忘れて、リカを救うべきだと思った。


「少し飛びますよ、その間に強烈な一撃を叩き込む準備をしてください!」


「え? ちょ、何を?」


 困惑するリカを抱き抱えたまま土棘を避け、巨大な土壁に向かって跳躍した。思い切り跳んだお陰で、どうにか壁上に着地する。

 身体強化を酷使した足が悲鳴を上げるが、休んでる暇はない。この壁が土である以上、ブラキリアはここからも土棘を生み出せる。

 ふとリカの様子を見ると、纏わり付いた泥を砕き落とし、右手の籠手に魔力を送っている。準備は万端な様だ。


 足下に集まる魔力を感じて、ブラキリアの攻撃が来る事を察知した。

 それから逃げるように、俺は大きく跳んだ――堕竜の背に向かって。


「リカさん、落としますよ!」


 ブラキリアの位置が俺達の真下に来た瞬間、リカをその場に落とした。


「えぇ、行くわよ――」


 リカは空中で腕を引き絞り、溜めた魔力を一気に解放した。


「名誉挽回熱光線パンチ!」


 身体が大きく動きが遅い堕竜に、躱す手段は無い。

 技名は酷いものだが、その威力は確かなもので。

 籠手の拳が突き出されると同時に、そこから放たれた熱光線がブラキリアの胴体を焼き貫いた。


 これにて戦闘終了。

 一足先に地上に着地した俺は、上から落ちて来たリカを受け止めてそっと地上に下ろした。


「あ、ありがとう……」


 まだいつもの喧しいリカには戻っていないけど、落ち込んだ気分は晴れただろうか?


「リュート! リカ! 二人とも素晴らしいコンビネーションだったな! 君達と共に戦えて嬉しく思うよ」


「ふ、ふふん! そうでしょうそうでしょう!」


 走り寄って来たアスカと、すっかりいつもの調子のリカ。

 その様子を見ながら……俺は自らの胸に生まれたモヤモヤした感情に悩む。


 目の前で困ってる人を助けたいとか、放っておけないとか、そういったものは殆どの人が持つ当たり前の感情だ。

 だけど、俺がミドリやリカを助けたのは、どうにも善意の類ではないような気がする。

 何かもっと、打算的な考えで俺は動いていた。或いは責任感もあったかもしれない。


 思い返せば、アスカ達が神蔵に来ると聞いた時、俺は歓迎した。強い探索者が来れば、安心だと思った。

 それは紛れもない本心。


 じゃあ、安心感を得たいから、ミドリやリカに探索者を辞めてほしくなかったんじゃないか?


 それもあるだろう。

 じゃあ、責任感の説明はどうなる?

 何故、俺が助けなくてはならない、と思うんだ?

 それは――――



 ――いつか俺がこの地を去ろうとしているから、じゃないのか?



 ふと浮かんだ答えに、自分で自分を嘲笑した。

 馬鹿らしい。

 俺はもうこの世界で暮らすと決めたのだ。

 家族三人で過ごすんだ。

 もうどこにも行かないって妹とも約束した。


 だから、この考えは間違っている。



「さて、今度こそ帰ろうか」


 そう言って階段に向かうアスカに続いて俺も歩き出す。


『…………』


 ふと感じた、俺の中にいる静かな気配。

 彼女から不気味なものを感じたのも、きっと気のせいだろう。



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