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第八話 だりぃ

 サイトウが飯を食って、寝ている間に日にちは過ぎていき、遂に実地演習の日がやって来た。

 聖都にあるワープを可能とする神器を使用し、学園の一年生と教師、そして聖騎士団の精鋭たちは聖都から西に位置するウエスタン地方へと来ていた。

 二年生はサザン地方、三年生はノーザン地方へとそれぞれ既に向かっている。


 サイトウたち一年生の目の前には既に魔界の入り口とも言われている”迷いの森”が広がっている。


 一度、足を踏み入れれば二度とは戻ってこれない。


 そんな逸話のある恐ろしい森だが、度重なる調査により数百年前と比べると中に入った人間の帰還率は大幅に上がっている。


「今回の実地演習の大きな目的はくんたち一年生に実戦の怖さを知ってもらうことだ。数年後には、くんたちは魔物と戦い自然界を守る立場になる。そのために、早い内から実戦の怖さを知っておくことは大きな意義がある。最後に、私からメッセージだ。――死ぬな! 必ず生きて帰れ!!」


 一年生全体を統括する学年長の挨拶が終わり、事前に決めていたグループに別れ、続々と生徒たちが森の中へ入っていく。


 生徒たちは三人から四人のグループを作り、各グループには必ず一人学園の教師か聖騎士団の騎士がついている。


 魔族の襲撃に備え、今回集められた聖騎士はいずれも例年を遥かに上回る実力者たちだ。

 おまけに、探索場所を狭める、常に後退できるよう逃げ道を確保しながら進むなど例年以上の対策が行われている。


 そんな中、サイトウは同じグループのアイベ、それとツバキという仮面をつけた少女と共にいた。


「サイトウさん、俺の成長を見ていてください!」


 ――だりぃ。


「サイトウさんはやる気ないみたいっスねー」


 やる気なさげなサイトウを見てケラケラと笑うツバキは、サイトウと同じクラスの白髪サイドテールの少女である。

 控えめな胸と、やや小柄な体格が特徴だ。仮面をかぶっており、その素顔は見えない。

 サイトウと同じグループに自ら入って来たという変わった人間である。


 鼻息荒くして気合を入れているアイベの横でサイトウがだらけていると、彼らの前にアカネとシルクが姿を現した。


「ふん、随分とだらけているのね。そんなんで生きて帰れるのかしら? まあ、いいわ。アイベ、この実地演習でより多くの魔物を倒した方が勝ち。それでよかったわね?」

「ああ! こっちはサイトウさんが見守ってくれているんだ! 負けるわけないぜ!」

「ふーん。まあ、いいわ。あんたもステラもツキヒも私は超えて見せる。そしたら、次はあんたよ!」


 ビシッとアカネがサイトウを指差す。

 しかし、サイトウはめんどくさそうに欠伸をしていた。


 その態度にピキと頬を引きつらせるアカネだったが、流石にサイトウの態度にも慣れて来たのか、突っかかることは無かった。


「行くわよ、シルク!」

「はは、三人も頑張ってね。お互い元気な姿でまた会おう」


 人のいい笑顔を浮かべたシルクはアカネの後ろを追いかけ、森の中へと入っていった。

 アカネが立ち去ると、次にステラとツキヒがサイトウの下へやって来た。


「フフフ、この戦いが終わればサイトウさんとようやく戦えるのですね。本当に楽しみで仕方ありません」

「お互い全力を尽くそう」


 穏やかな笑みを浮かべるステラと不愛想にそれだけ告げるツキヒ。

 対照的な表情の二人は同じグループなようで、それだけ告げると他のメンバーと共に森の中へと姿を消していった。


「相変わらずサイトウさんは人気っスねー」


 次々とサイトウに声をかける少女たちを見たツバキがサイトウに向けて「本命は誰っスか?」と冗談交じりに問いかける。


 それを聞いたサイトウは珍しく真剣に頭を働かせる。


 アカネは胸と尻があるが、少々うるさいところがいただけない。

 第一印象でステラはかなり高評価だったが、あいつも少々正確に難があることが分かった。それにビッチだ。

 消去法でツキヒになりそうだが、あの女は不愛想だ。不愛想なのはよくない。


 悩みに悩んだ結果、サイトウは「あの三人は違うな」と答えた。


「あの三人でもダメなんスね。てことは、やっぱり学園トップのクリスさん狙いっスか?」


 ――あの女はダメだ。監禁、盗聴趣味がある上にぺったんこだからな。


「ぺ、ぺったんこって……」


 サイトウの余りにストレートな物言いにツバキは仮面の中で必死に笑いを堪える。

 自分にサイトウの暴言が向いていないということもあるのだろうが、サイトウのクズながらも正直な姿勢はツバキからすると好印象であった。


「そろそろ私たちも森の中へ向かうぞ」


 サイトウたちを担当する冒険者の一声があり、遂にサイトウたちは森の中へ入る。

 その先で待つのは鬼か蛇か。

 

「サイトウさん! 絶対に優勝しましょうね!」

「これ大会とかじゃないっスよー」


 ――はあ、めんどくせぇ。


 ただ一つ言えることは、サイトウの目は珍しく本気になっていた。

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