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ハイヒールを否定はしない、が――女性の靴とフェティシズムと 机と椅子の話

作者: 堀田真裏

批判だけなのはあまりにも不親切だと思ったので……


こういう靴は当たりにくいということで、

堀田の姉妹の靴を撮影した(後書きに掲載)。ヒールの高さも色々だとわかると思う。

彼女はこれらの靴で六時間以上歩けるし走ることもできる―――


必ずしも美しい靴ばかりではないが、

実際に履いた姿としては十分女性らしい雰囲気も出せるものばかりだ。

何よりも、

たとえば 婚カツパーティーで出会った人と高級ホテルの素敵なディナーを一緒したとする(別に同窓会でも構わないが――つまり、たぶん多くの人が、きれい目の服装で着飾っており、スニーカーをはかないだろうシチュエーションだということだ。)


そこで災害発生!停電!降りる必要が出た!とする。

たとえば20階超のビルから非常階段をその靴で降りて、、そこから、避難所まで歩けますか。


そういう視点で考えてもらえるとありがたいと思う。


理想と現実の乖離、というと言い過ぎかもしれない。


が、古えより、中国の顛足(てんそく)をはじめ、ハイヒールもそうだが、女性に……本来の意味で歩きやすさを追究したであろう靴の形状からはかなり違う方向に向かったものを履かせて、


そこに「女性らしさ」を見出だしてきた文化風潮はあると思う。

そしてこれが厄介なことだが、それを好んで女たちに強いてきたのは、男なのか?というとそんなことはない。


女性らしい象徴を求めて、むしろ女性たち自身も――おそらくほとんど本人は意識しないままに、無意識にそれを美しいと、美しいと評価されることを求めて、憧れて採り入れてきたのだ。


今の時代に、顛足によってひどく変型した足を美しいと憧れる人は男も女も極端な嗜好をもつごく一部だろうが、その思想に染まったものが主流だった時代もある時期ある国家に普通だったように


私たちの嗜好や価値観も、実際には時勢の影響を受けて特定の方向に矯正されている可能性はけっこう高いと思う。


それは言うまでもなく私自身もそうだ。

確かに美しいとは思う。だからといって、持て囃される風潮はどうなんだと感じる面もあるからこそ、こういうイヤミったらしい文章を書きなぐって投稿しているのでもあるが。


まぁそれはいいとして


未だに、萌え絵の女の子達は戦う女子でも、ハイヒール(および、それに類する踵が高くてしかも細くて素材として固そうなもの)率がたいへん高い。


見映えがするのはわかる。

他の靴より圧倒的に描きやすいし。それなのに綺麗で脚のラインもキレイに見えやすい。


まぁ、それはいいのだが――

あなたは、自分がそれを履いて、たとえばアップダウンがある道を三時間以上歩き続ける自信はあるのか。あるいは50mでもいい。その靴はいて、全力ダッシュできるか?


おそらく、イエスと言える人は女性であってもほとんどいないだろうなと思う。


より厳しく言うなら、それを履いて一日中歩き回る生活を普通にしていたら、


たぶんその人は、そんな絵で戦う女の子を積極的に描くことはしないのではなかろうか(需要に応えるために描くことはあるだろうが)と思う。


それがどれだけ足に負担があるのか、己の身に痛みの記憶を伴って、叩き込まれて分かっているはずだから――だ。



現状として、女性の社会進出の影響だろうか。10年以上昔よりは、ずいぶん改善されつつはあるようだが、


それでもやはりオシャレな靴売り場に並ぶのは、長期間履き続けると、外反母趾(がいはんぼし)などの変形がひどくなるだろう靴が多い。


若いときにそういうものを履き続けて足が悲鳴をあげるようになるから、中年以降の女性で(あるいは早い人になると30代にもならないうちから)、“あんな靴が穿けたのは若かったからだ”と、言いながら若い頃にはけた靴がはけなくなる人が増えてくるのではないだろうか、と思うのは私だけか。


それは老化現象ではない

若くても起こる、病的な変形によりもたらされる弊害であるにもかかわらず。


ほどよくきれいで、だが、足の骨格を歪めるようなリスクは低い靴。長時間歩くことも、走ることもその気になれば可能な機能を備えた、それでいて、見た目もそこそこきれいな靴。


そういうものは未だに少ない気がする。

靴売り場は両極端なものが多いと思う。

なんでcrocsばりに極端な幅広靴と、足が痛くなりそうな靴ばかりが多いのか。


見極めるポイントは自分の踵の幅と靴を見る。あとは親指側が極端に内側を向いて曲がっていないことだ。

スクエア形は無難だがそうでなくても店によっては一見すると普通でも、こだわった形状のものを置いていたりもする。


こういう靴を若いときから履いていれば、女性たちはいつまでも、靴のせいで骨が変形して足に不調を抱えるような事態を免れて、その人なりの美しさを求めた靴を履き続けていくことができるだろうに、と思う。


できるだけ美しくありたい。それは決して若いときだけではないだろう。人生はその後も長く長く続いていくのだから。女性たちは、賞味期限のある花でもスイーツでもない。


おばさんになったらお洒落をすべきではないとか、かえってみっともない、なんていう人もなかにはいるが(都会では表だって言う人は10年以上前から少なかったが、地方都市では未だに聞くことがある)、そんなものは「若いうちがイイ!」という、古くさい男性優位社会のもとで生まれた、ただの年齢差別(エイジズム)だろう。当の女たちまで、そんなものに染まってどうするんだ。



※決して、“美しくありたいとは思わない”その人の価値観を否定しているのではない。見た目の美しさに関心がないなら、それもそれでアリだと思う。私も、外見がすべてとは全く思わない(むしろ外見の話ばかりする人間とは――イライラしてくるから、プライベートでは関わりたくないくらいだ)


若い女性にとっても、その考えは不幸を招く。

若いうちが華だ、そんなことを思うほど、不安になるはずだ。年は誰でも重ねるし老いてゆくのだから。


若いうちだけ、そんな発想は、女性たちを見えない鎖で縛り付け傷つけてゆく。


確かに、生殖に適した年齢というのはある。

が、それも、決して若ければ若いほどイイということは絶対にない(むしろ安定してくるベストな時期は22~あたり)。

それに、女性の価値は子を生むことだけにしかないのか?違うはずだ。


男は戦争のとき、命を懸けなければならない国家の道具じゃないはずだ。金を稼ぐためだけに存在する働き蜂でも、妻のATMでもないはずだ。

女性だって、家事ロボットでもなければ子どもを産むための道具なんかじゃないはずだ。


役割を果たすことが求められることはあるだろう。だが、人は誰もが、何者かに道具として使われるために存在しているわけではないし、たとえそれで“市場価値”を誰かに決められてしまうことがあったとしても、

そんな偏った価値観――誰も幸せになれない価値観のなかに自ら染まる必要はないはずだ。


――なんて思うのだ。


靴の話から大幅に逸れてしまったが、

なんだろう、だから、 ほどよいモノってもっとあってほしい気がする。


エレガントなスカートにも、すっきりしたパンツにもジーンズにも合うような、

形の美しさはそこそこで、足も痛くなりにくい、なんならそれを履いたまま、「暴漢から全力ダッシュで逃げること」「災害発生時に三時間以上歩いても大丈夫な程度には足に優しいもの」を満たすものという


ほどよい中庸のもの。



別に、ハイヒールをディスる気はない。ハイヒールであってもこだわり抜いたもののなかには、10cm程度高さがあっても思うほど足が痛くならないものもあるだろう。

これは本当に靴の形状であったり、その人の足にあっているかということがいかに大きいかを物語ってもいる。

(ついでに、その人の筋肉のバランスや、立ち姿勢歩き姿勢によっても変わる。)



歩きやすい靴万歳と言うつもりもない。

ついでにいえば、幅広靴が足に優しいというのは妄想だ。


踵の細い人が、踵までガバッと大きい靴をはくと、靴が抜けやすくなるので、小さい靴をはく。そうなると、足の指が曲がった形に変形する(ハンマートゥ)。また、広すぎる靴のなかで足がぶったくられるので、ヘタをすると外反母趾や内反が悪化する。扁平足もひどくなる。


もとの「踵部分の骨」が2Eとか3E、それ以上の人が日本全体のどれだけいるのだろう。


足に優しいをうたっておきながら、

そういう「単に幅が広いだけ」

「むやみに重い」「クッション性もいいか疑問」

の靴をけっこうな値段で売っているブランドも知っている(さすがにこれは批判になるので具体的にあげることはできない)


現実はけっこうそういうものだ。


本来の機能性をそこそこ満たしつつ、かつ、それなりの見た目の美しさも兼ねているものは、紳士靴のレベルではなくものすごく少ない(体感的には全体の5%以下)と感じている。


美しさというのは、

トータルで決まるものだと思う。


どんなにイラストとして美しい靴であっても、女性が長く履き続けていれば、やがては足がぶっ壊れるようなデザインのもの。


それで走れば高確率で滑って転んで捻挫する、いや、場合によっては足関節が変な形で開くようにおかしくなって 最悪、医療用の補強具をつけないといけない足になるかもよ……と思うようなデザイン。それはイラストの世界でも現実の世界でもやたらと多い気がするのだ。



何だろうな。靴って本当はファッションのなかで最もこだわるべき、大事なものだと思うのだ


机と椅子、どっちが高い?と問われたとき

自分で選んだことがある人は、椅子のほうが驚くほど高いことが意外に多いことを知っているはずだ(椅子にもよるが――)


人の身体を支えなければならない。

ぐらついてはいけないし、その足が折れたり外れたりしてはいけない。テーブルよりも遥かにキチンとしていなければならないものが椅子だ。


だからこそ、テーブルよりも遥かに地味で、使う材料も少なそうなのに、その割には高い。

でも考えたらそうだろう。椅子は適当だと人の安全にかかわる。


靴は違うのか?

あらゆるファッションのなかで、最も酷使する部分のはずだ。


上着は適当でも、体温管理や身体の動きに支障を来さなければ、身体の機能を害することはない。まして骨を変形させる、なんてことにもならない。スカートもそうだ。


でも靴は違う。

本来は、いちばん妥協してはいけない部分のはずなのに、扱いが適当になりやすい――気がする。


この作者は何が言いたくてこんなものを書いたんだ


靴とそういう価値観関係なくね?


ウザいタイプのフェミニスト!?


と思われたかもしれないf(^_^;

これだけ批判的なことを書いているのだから、人格や思考回路に妙な癖のある人物だ、と疑われても仕方ないのは理解している(ある面では事実だ)。


が、べつにわたしも人の好きなものや、世の中の主流を否定するのが好きなほど歪んではいない。

そういうことでマウントをとって気分よくなれるほど単純な思考回路をしているわけでもない。


強いて言うなら、

ハイヒールや、パンプスのうち、3割以上が女性の足に悪影響でないもので占めるようになるなら

私は色々言うつもりはない


ハイヒールやパンプスを挙げたのは理由がある。

ブーツや、これからの時期のサンダルに関しては、案外足に悪影響の少ないデザインのものの割合がグッと上がるためだ。


ただミュールはものによる……。



そう。健康にイイとまでは言わないが、足に優しいと言い難いデザインが大勢を占めていること。

なんだかそれが「女性らしさの象徴」っぽく扱われる現状を、ちょっと釘を刺したかっただけだ。


これを読んでくれたかたのうち、わずかでもいい。振り返って考えてくれる人がいればなぁと思っただけだ。もちろん、できれば読んでほしいのは男性ではなく女性。


それが若い人なら、これから先にお洒落をしていくなかでも、知識があれば

自分の足を守ることにも繋がると思うからだ。


もちろん、たまには履いていいと思う。全否定するつもりはない。

ただ、どんな靴が足に優しいのか。単に幅が広い靴が足にあたらないからいいのだ、というのは誤りであることは知っていてほしいし(子どもさんに靴を買い与える親御さんの立場のか他にも読んでもらいたい。これはハイヒールやオシャレな女性靴に限った話ではないからだ)


そういう気持ちで書いた。


足に優しい、オシャレにも履ける靴を扱う店は、昔よりは増えてきている。売り場の半分以上が、そういう靴のオシャレな店もあるにはある。


スニーカーを履けば良いじゃないか。という意見はあるだろう。が、学生の時期や、近場の散歩はともかく


きれいなファッションに合うスニーカーを探すのはかなり難しい。あわせかたにもよるが、少なくとも たとえばスーツのスカートのようなファッションに合うスニーカーを探そうとなると、


ゼロではないがかなり困難だ。そういう感じで、案外、スニーカーは 大人になるほどオシャレには履きにくい側面はあると思う(靴やファッションによる)


そして、いつどこで起きるかもわからない災害発生時。自身の命を守れる靴を履いていてほしいと願うのだ。避難所までなんとかたどり着ける、靴をはいていてほしいのだ。


ガラスの破片や危険物がいっぱいの道路を、靴下やストッキングの足で歩いてほしくないのだ。


イヤな批判が多いのは自分でも理解している。が、そういう気持ちも大きくて書いた。


賛同してもらえる必要はない。参考にしてもらえたり、何らかの気づきになれたら良かったと思っている。


挿絵(By みてみん)


この靴、実際に踵の高さを測ってみた。右から二番目の黒いもので7cm強(もしかしたら7.5くらいあるかも)

右端のピンクのサンダルに関しては、10cm超えていた!


が、右端のものはコルク素材で、実は爪先側も盛ってあるので爪先と踵の高低差自体は、7cm程度だ。


どちらも軽く、クッション性が優れているらしい(コルクは柔らかい)。

どちらも前にストラップが来て留めるタイプ。このデザインは、美しさとしては前にストラップがないものに劣る(邪魔なものがないほうが見た目的には美しく、足がきれいに見えるのは確かだ)が、踵が安定しやすいのが特徴だ。


つまりヒールが高くても、比較的足が疲れにくいという面があるのだ。

これは“オシャレ”と“機能性”の現実的な妥協点を探る上で押さえていて損はないポイントではないだろうか……と思う。


もちろん、転倒した場合のリスクはあるので、特に右のピンクのサンダルは、特に災害発生時安全とは言わない(捻挫のリスクが高い)。が、これだけヒールが高くても、足にあたらない靴はあたらないのだ!ということの参考にしてもらえたら嬉しいので、あえて載せてみた。



ブラウンの地味な落ち着いた靴などは、爪先が細く見えると思う。一見すると足にあたりそうに見えると思う。が、足裏側からみると、親指側のライン(足の親指の付け根あたりの関節がある場所。特に、ここの角度が重要なのだ)、角度がゆったりしており、網目のような部分が足の甲をやわらかく包み込むので、驚くほどあたらないのだという。


ブランド名が一部読み取れるがあえて放置した。

オシャレでありながら足に優しい靴が多い店を知らしめるぶんにはなんの問題もないと思うからだ。


すべての靴に共通していえる点がある。それは、


①親指の付け根の部分の角度がまっすぐ~かなり緩やかである、というのが一点(これは靴を見るとき、ひっくり返して靴底側から見てみると分かりやすい。)


②(履き口が)深く見えにくいデザインだが、足の甲の深い部分まで押さえているのと同等の効果があるデザイン(ピンクのサンダルと黒いパンプスはフロントストラップ。真ん中の茶のものは、網目のような部分がその役割を果たす。白い靴は真ん中が抜けていて、白なので感じにくいが履いた状況としては、履き口が深い靴と同じような安定性が確保される)


⏩つまり、踵が浮きすぎて不安定になるような状況になりにくい靴ばかり、ということだ。


ついでに、シンプルに履き口が深いだけのものになるとメンズライクになるので、フェミニンではなくなる可能性が高いことに注意は必要だ。


それもかっこいいとは思うが、たとえば、きれいめのワンピースや、結婚式のお呼ばれで着るようなドレスワンピには、そういう靴はたぶん合わない。


これらを押さえると、ものによっては、ヒールが高くても当たりにくいのだ。


※ただし、履くときは若干めんどくさい……らしい。

すべてにおいてパーフェクトというのは構造的に困難なのかもしれない。


ともかく、探せば、ファッション性が高い靴でも外反母趾になりにくい靴はあるのだ。

いざというとき、せめて、ちゃんと 避難所までの距離を、靴ずれがつらくて激痛に耐えかねて、泣きながら靴を脱いで、ストッキングや靴下で、危険物が散乱した路面を歩くしかない――そういう悲惨な状況にならず(高確率で足の裏を負傷する。普段の道路でも危ないのに、災害時はガラスやら木材やら金属やら危険物でいっぱいのはずだ)、まともに歩けるように。


できることなら、いつまでも足を痛めることなく、お洒落を楽しめる足でいられるように

そんな靴が増えてくれたらいいなと思うのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  保険の外交員のおねえさまがたは、スーツにスニーカーでもあんまり違和感ないです。  社交ダンスって結構高めのヒールでもやるのですが、あれはそのほうがダイナミック&脚が長く見えてかっこいい!…
[一言] 激しくうなずきながら読ませて頂きました。 私もヒールは極度に苦手で、特にパンプス系はヒールがあってもなくても脱げてしまい、挫折の果てに選んだのはブーツかおじ靴かのほぼ二択です…。 もう自分…
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