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1話
「あまりにも長く生きすぎた。」
当時、最強の魔王だったディスカルト・クレイチアはその一言を残し、自らに転生魔法をかけた。
彼は、魔王として生まれてから魔界の統制、部下の育成に尽力してきた。
そして最強の魔王として名を馳せ、幾度となくやってくる勇者たちを葬り去った。
だが、魔界は平和になり少しずつだが人類との共存の道も進み、ひたすらに退屈を感じていた。
昔思いついた転生魔法を完成させ、今度こそは穏やかで平和にそして寿命で死のうと思い、この一ヶ月準備に励んだ。
身の回りを整理し、側近たちと別れを惜しんだ。
いよいよ今日、転生魔法をかけ生まれ変わろうとする。
愛用してきたベットに横たわり、長年をともにしてきた四人の側近たちが見守るなか、魔法をかけた。
願わくば、人間の農民の子にでもと。
無秩序だった魔界を統一し、相容れなかった人と魔族の共存、この世界に多大な変革をもたらした最強の魔王がこの日を持って、消滅した。