新婚さんが化け物になったよ
「あなたの見た目が好きです。結婚してください」
そういう告白があって、私たちは結婚した。
その後まもなく夫は一年ほど単身赴任した。
その間に私はある病気になった。
それは地球由来のものではなく、宇宙人が地球に来た時に持ち込んだウイルスによるものであった。
最初は高熱になって、それが一週間経っても一向に治る気配が引かないので、病院に行くとその病気であると診断された。入院して数日ほどで高熱は収まったが、久しぶりに鏡で顔を見ると肌が紫に変色していた。一か月ほどかけて徐々に症状は悪化していった。
目の玉が片方抜け落ちて、体は肥大化し、右腕だけが異様に長くなった。ここまでで悪化は止まり、この状態から良くも悪くも変化しないのがこの病気らしい。小手先だけの脂肪切除手術は意味をなさず、すぐこの状態に戻るのだそうだ。
私は退院して家に帰った。帰路、タクシーの運転手は私と一切目を合わせなかった。
家について、リビングの床に体を投げ出した。ぼてっと肉の塊が床の上に転がった。
天井を見上げて旦那のことを考えた。
この病気は隠してもいずればれるわけだが、打ち明ける気にはなれなかった。
彼は私の見た目が好きで結婚してくれたのだから。
彼は単身赴任してからも一週間に一度は電話をかけてきてくれるので、入院中も彼とは話していたが、ビデオ通話を頑なに拒むことを疑問視されていた。
幸い声だけはもとのままだったので、何とか隠し通せていた。
それからも何度もビデオ通話を拒み続けた。肌荒れがひどいから、最終的にはその理由に行きついた。
そして、夫が単身赴任から帰ってくる日になった。
玄関で鍵穴にカギを指す音がして、ドアが開く音がして、廊下の床を小刻みにわずかにきしませる足音がして、リビングのドアが開かれた。
旦那はひどく驚いた顔をして、狼狽していた。
「あの、びょうきになっちゃって」
その声と話し方で、旦那は目の前の化け物を私と認識できたはずだ。
「これは驚いたな、でもどんな見た目になっても関係ないよ」
そんな飄々としたことを言ってほしかったけど、無理があるとわかっていた。
すると、夫は突然キッチンに行き、包丁を取り出した。
そしてそれを自身の顔の高さにもってきた。私は彼が自殺をするのだと思った。
「ちょっと、待って!!」
彼は自分の両眼を横一線に切りつけ、血を流しながらこう言った。
「これであなたを愛し続けられる」