第一章 <彼女との出会い、そして入学>
朝長は、入学初日からどうやら友達ができたようです。陸陽朝長が入学し、月島涼夜に出会うところまでの話です。
入学式の日
「今日から高校生かぁ•••」
ある学校の正門に一人の青年が立っていた。
僕の名前は陸陽朝長、今日からこの星楼高校に通うことになった。
家からは少し離れた場所にある高校で、評判は良いらしい、学校があまり好きではないからか入学初日から元気が出ない。
「よし、行くか」
頬を叩き気合いを入れて、正門を通って校舎へ向かった。
どこのクラスかは、下駄箱前の扉に貼り出されていた。
「えーと、僕の教室はどこかなぁ•••とあったあった」
クラスは三クラスあり、成績関係なくバラバラに振り分けられている。
僕は二組らしく、すぐに二階にある教室に向かった。
教室の前に立つと、緊張しているのか鼓動が高い。
そして扉を開け、教室へ入るとまず思ったこと•••
多いな•••
見ただけでも、四十人程度の机と椅子が置かれていた。
一クラスにしては多いのでは?と疑問に思ったが、黒板に書かれている自分の名前と席をすぐ確認した。
「お、ラッキー」
一番後ろの席でしかも窓側、かなり良い席で声が出てしまった。
自分の席に座り、窓から気持ち風が入ってきたので酔いに浸っていた。
「よぉ、朝長!これから一年間よろしく!」
いきなり前の席から声をかけられ椅子を引いてしまった。
「あはは、そんなびっくりしなくてもいいのに」
「あぁ、ごめん•••えっと•••」
「あぁ名前言ってなかったな、俺の名前は中原清明、中原でも清明でもどっちの呼び方でもいいさ」
馴れ馴れしいなこいつ
初対面の相手に、これほど馴れ馴れしい人は初めてだ。
髪はツーブロックで茶髪、顔をかなり美形で、体付きはしっかりしている、かなりモテそう。
しかも、ものすごい笑顔でこっちを見てくる。
僕には眩しいな
あれ、その前に、なんでこいつは僕の名前を知っているんだ?
素朴な疑問が脳裏に過ぎった。
今日は入学初日、まだ一人一人挨拶もしていないのに名前がわかるはずがない。
「清明くん」
「くんはいらねぇよ、普通に呼び捨てでいいよ」
「わかったよ清明、質問なんだけど、なんで僕の名前を知っているの?」
と質問すると、清明は笑って答えた。
「いやー、名前を覚えるの得意でね。最初に教室に来たときに、黒板に書いてあった全座席の人の名前を覚えちゃってね。顔と名前はまだ知らないから一致しないけど、席と名前は一致するんだ」
いや、天才かよ
流石に、初日で全員の名前を覚えるなんてできるはずがない。
なのにこいつは、初日で全員の名前を覚えたと言った。
普通に感心してしまった。
「すごいね、僕だったらすぐにそんな覚えられないよ」
「いやー、頭は悪いんだけどねー」
悪いのかよ
そんなくだらない話をしている時、放送が掛かった。
『全生徒は、体育館に移動してください。繰り返します、全生徒は、体育館に移動してください』
「お、体育館に移動だってよ、行こうぜ」
「うん、行こうか」
体育館集合とのことで、清明と一緒に体育館に向かった。
「おぉ、広いなここの体育館」
「そうだね」
確かに広かった。
普通の体育館の二倍ほどの広さに、二階建てらしく二階には観戦できるスペースが設けられている。
「それにしても、なんでこんな広いんだろう」
「たしかここの学校、運動部がそこそこ強くて、力入れてるって聞いたことあるぞ」
「あぁ、なるほど」
事前に、この学校ことを調べてなかったからわからなかった。
確かに学校に入った時、運動場も広かったような•••
「あぁ、あと文芸部にも力入れてるらしくて、部活用の別棟もあるってよ」
「え、そうなの?知らなかった」
かなり設備がしっかりした学校じゃないか。
調べておけば良かった。
そんなことを考えていたら•••
「おーい、朝長、はやく並ぼうぜー」
「あぁ、今行くよ」
清明に呼ばれ、自分のクラスの列に並ぶ。
周りを見渡すと、かなりの人数がいた。
全生徒合わせると、600人いるかもしれない。
「多いな」
「うん、かなり多いね、びっくりしたよ」
「そうだ、良い事教えてやるよ」
「良い事?」
「今回の新入生挨拶、かなりの美少女がやるらしいぜ」
なんだよ、そのどこかのドラマかアニメあたりにありそうな展開。
「しかもな、今年はかなり可愛い女子が入学しているらしくてな、男子達は競争しているらしいぜ」
「ふーん」
「おいおい、興味なしかよ⁈気にならないのか?」
「そんな興味ないかな」
どこからそんな情報を手に入れたのか、気になるところだが。
可愛い女の子か•••
あまり俺には関係ないな
あまりそういうことに縁がなかったのか、あまり興味が持てない。
僕はただ平穏に高校生活をしたいだけであって、青春をしたいわけではない。
だから、そういう話を振られても正直困る。
『校長先生からのご挨拶です』
「校長からの挨拶かよ、はやく終わらないかなぁ」
「たしかに、だいたい校長先生の話って長いもんね」
『えぇー、皆さん、おはようございます。こんな良い春の(以下略)』
十数分後、校長からの長い挨拶が終わり。
隣に立っている清明は疲れた表情をしていた。
『新入生代表挨拶、新入生代表月島涼夜さん』
「はい‼︎」
「お、きたきた」
先程までの疲れた表情が、嘘だったかのように清明の顔は笑顔だった。
そう思っていたら、新入生代表月島涼夜が演台に登っていた。
制服を綺麗に着こなし。
綺麗な白髪で腰まで下ろしている。
透き通った青い瞳、それに合った眉。
綺麗すぎるほど整った顔。
腰は細く、しなやかな指。
純白の素肌は、見るだけでなめらかさがわかるほど。
男子や女子もその姿に見惚れていた。
「綺麗だなぁー、月島さん。そう思わね?」
「清明、静かに」
そして、彼女が演台に立ち、周りを見渡している時、一瞬自分を見ているように見えた。
うん、きっと何かの勘違いだろう。
そんな馬鹿な話があるかと、そう自分に言い聞かせ、皆と同じく新入生代表挨拶をする月島涼夜を見ていた。
だけれどこの時の僕は知らなかった、あの一瞬の出来事から始まっていたのだと•••
次回は、月島涼夜視点で書こうと思います。
できるだけ更新できるよう頑張ります。