プロローグ
どうして俺が異世界に行くことになったかと言うと、、、
簡潔に言うと、あの日地球の時間が止まったからである。
気がつくと俺は真っ白と透明の間のようななんとも言えない世界に立っていた。
永遠なんてあるはずがないのに、そう思うしかないほどに果てしなく、その世界はずっと広がっていた。
こんな場所は一度も見たことも聞いたこともないはずなのに、なぜだか知っていた。
どれだけ考えようが一切何も分からないが、ただ知っているというのが分かる。
呆然とあたりを見渡す。
すると、果てしない世界の端っこに何かを見つけた。それは何かは全く分からなかった。
形がぼんやりとしていて、どんなものなのか予測することさえできない。
しかし、それは、とても大事な物のような気がした。ずっと、追い求めていた物のような、ずっと前に失くしてしまった物のような、、、。
気づけばそこに向かって走り出していた。
走っている感覚がとてもリアルに感じられる。
しかし、体は夢だと思うくらい軽かった。
そんな、夢か現実がわからないままただただ走った。しかし、どれだけ走っても全く近づいている気がしない。
むしろ、遠ざかっているような気さえしてくる。必死に足掻く、足掻く、足掻く、だけども一向に近づけるような気がしない。諦めようとしたその時、
「いい感じ」
そんな声が聞こえてきた。
その声は俺を応援しているような声であり、嘲笑しているような声だった。
あたりを見渡すが、ここには俺以外誰もいない。
さっきの声にどこか心当たりがあった。
これもまた、考えても分からないが、絶対に知っているものだった。
考えても無駄だと思い、また走り出そうと思った瞬間に、俺が目指していた何かがなくなっていることに気づいた。
すぐにあたりを見渡す。
俺に向かってとてつもない恐怖が襲いかかってくる。まるで、今まで信じていたものが、全て嘘であったかのようなそんな気がした。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い、そんな感情が俺を埋め尽くそうとしてくる。手足が震えて動かない。
それどころか、立っていることが精一杯で今にも崩れ落ちそうである。
どうしたらいい、どうしたらいい。
どこからか俺に向かって手が伸びてくる。
その手は俺を絶望に引き入れようとしているようだった。
やばいと思えど体は動かない。どんどん手がにじり寄ってくる。
掴まれそうになったその時、俺は気づいた、この世界から落ちていることに。
どんどんと下に向かって落ちていく。
気がつけば、さっきの手はもうどこにもいなかった。何かが起こる。そんな漠然とした考えが頭をよぎった。
そうして、平野 拓海は現実世界に向かっていた。