昼間は学校、お友達と公園
一部例外を除き職場はリモートが主流、そして各教育機関もそれに準じている。
「さて、美桜。今日の番号は?」
私のお部屋でパパがタブレットを開いて聞いてくる。えと……、席についてクリップボードをタップする。
「603」
よし、登校準備が始まる。いっぱいパスワード入れて、生体確認を済ませたあと、最終チェックの光彩認識でパパと私を確認。それからさっきの番号を入力。目の前のメインモニターに、校門のビジョンがパッと出る。
「ふう、じゃ行ってらっしゃい」
「行ってきます。パパ」
シュッとエアロックの音。パパが出て行った。すると何時もの出欠を取る先生の声。
「おはよう、ミオさん」
「おはようございます」
あいさつをすませると、校門から教室に変わるビジョン。ふう、登校するのは大変。高校生になったら、全部独りでするってママが言ってたけど、パスワードいっぱい、こんなの毎日出来るようになるのかな。
日直のさちこちゃんが、はじめの会を始めますってごあいさつ。学校が始まる。
――、はじめの会、算数、国語、理科、体育、お昼休み、音楽、おわりの会
今日の時間割。はじめの会で昨日出された宿題を送信。たくさんあるからひとつひとつ確認しながらクリック。ピロリーン、ピロリーンと受け取り音。それからお勉強。
休み時間はお友達とおしゃべり。こっそり制服のポケットに入れてきた、ピンクエメラルドのカードを見せる。いいなあ、私、開けたら『悪のレディ、ブラックオニキス』だったんだよ、とさちこちゃん。
サブモニターで見せ合いっこ。ピロロとアクセス音。タップする。パッとさちこちゃんから変わるサブモニター。そこにはもうひとりのお友達。音声を拡張しておく。
「よー、ミオ。この前のゲームあんがと」
「うん、しょういち。そだ。次の日曜日ね、お誕生日会するの、大丈夫?」
「へえ、そうなの?日曜日……、多分いいよ!家に帰って聞いてみるけど……、大丈夫とおもう」
「ほんと?やった!あと、ママがご飯デリバリーしてもらうって、という事だから、お家に聞いておいてね。さちこちゃんもお返事メール帰ってから飛ばしてね、あ!体育だよ、着替えなきゃ」
慌てて着替えた。授業はVRを使う。今日はアスレチックをした。途中からタイムを計りますよと言われて、ものすごく焦った。ちょっぴり、しょういちが手伝ってくれたのはナイショ。
――、お昼のチャイムでお昼休み、届いたお昼をママとパパと一緒に食べる。お昼はデリバリー、今日はコーンスープとサンドイッチとチキン。
時間までに戻って、音楽の時間。皆で合唱をした。おわりの会で、明日の番号をひとり一人先生から教えてもらって、さちこちゃんのあいさつで学校はおしまい。
さちこちゃんと帰る前に遊ぶ約束の話をする。しょういちも誘ったのだけど、今日はお稽古があるからさっさと帰っちゃった。
「ねえ。ミオちゃん、何時にする?ママが宿題すませてからって!ねー!すーぐしゅくだい、今日たくさんあるよね!」
私も!しゅくだいしてからって、大人ってケチ!帰ってメールするね。話をして一度バイバイ。登校は大変だけど下校は簡単。
「先生、さようなら」
「はい、さようなら」
これでいいんだもん。学校のビジョンが消えた。今日はもう中には入れない。タブレットに宿題をインストール、こうしとけば、わからない所はママやパパに教えてもらえる。
今日の宿題は、算数と国語のドリルと、理科のワーク1ページずつ。
ふええ!先生、ひどいよ。遊ぶ時間無くなっちゃう。
着替えてからリビングに行くと、ママがおやつを用意してくれている。ママとパパも一緒に休憩するんだって。
「パパは?」
「なんか会議が長引いてるみたいね」
ふーん、今日のおやつはお昼のデリバリーで頼んでいた、いろんな味のマフィンがいっぱい!やったぁ!それとココア。
「ここのマフィン美味しいよね、ママ大好き」
「うん!私も大好き!ねぇねぇ、お誕生日のケーキ、どこの?」
「ンフフ、ナイショ。晩御飯は、映画見ながら食べようね、ママ、頑張ってご飯作る!」
「わぁい!唐揚げとポテトが食べたいな」
「ハイハイ、了解しました。さっさと食べて宿題、ママももう少しお仕事頑張ってくる」
紅茶のマフィンを食べて、ごくごくって、コーヒーを飲むとお仕事行ってきます!と立ち上がったママ。大人って……、おやつもゆっくり食べれない、つまんないな。
「ふぐふぐ……、宿題終わったら、さちこちゃんと遊んていい?」
「良いけど……、ポポいろ公園って5時半に閉門じゃなかった?」
はう!ごくんと口の中にあった、キャラメルをとろりとかけて模様がかいてあるマフィンを急いで飲み込んだ。今何時だっけ?タブレットを開いて時計を見る。
「えええー!今3時半だよ!宿題終わるかなぁ……、あ!さちこちゃんからメール」
ピロロロ、チロリーン。開いてみると……、
『(ヾノ・∀・`)ムリムリ、宿題おわらない、算数ゲキムズ、こんどにしよ!』
「ふぇぇ!ドリルそんなに難しいの?さちこちゃん、算数得意なのに……」
返信を送ってから、ドリルを開いた。そこの問題を見て。
「……!ママ!もしかして宿題終わらないと……」
じゃぁ、がんばってねー。と出ていくママに聞いてみた。返事は、
「終わらないと今晩のお誕生日、なし無しね」
ふぇぇ!算数苦手なのに!そんなの無いよおぉ!ここでやるかそれともお部屋で……、ママが居なくなりガランとしたリビング。どうしよっかなと考えてると。
「あ!ここでやろう、うふふ」
テーブルの上にはパパの分のマフィン。もう少しするときっとパパが来る。
「他の宿題してて、パパが来たら、答えをおしえてもらおっと!」
イイ事思いついた、ニコニコのわ、た、し。
まだいつくか残っているそれ。パパはダークチェリーが好きだからら……、お酒の匂いのそれって、おいしいとは思えない。だからそれは残して。
「もうひとつ、たあべよっと!」
レーズン、プレーン、チョコチップとある中で、ホワイトチョコのマフィンを選ぶと、はむ!と口いっぱいに頬張った。