空からこんにちは!
短いです。
皆さんは、1度死にたいと、この人生をお終いにしたいと、思ったことはあるだろうか。
ない人もいるし、ある人もいる。そう、それが現実。
とある1日、私は死にたいと思った。
いじめが辛くて。まるで、自分が世界の中で存在していないかのような感覚が、何より苦しくて。
夜中、私は自分の部屋の窓から飛び降りる、予定だったのだが……信じがたいことが起こった。
ドーン!
空から人間が落ちてきたのである。
恐る恐る下を覗き、声をかけてみる。
「あの、大丈夫ですか?」
てんてんてん。
だ、だよね〜、空から落ちてきたもはや死体同然なブツだもん。返事するわけないよ。
「んんん。」
?え、なに?ブツ生きてるの?
これは見過ごせないね…、さすがの私も空から落ちてきた生きてるブツを見過ごせるスルースキルは持ってない。
「そこのかた〜!そっち行くから少し待ってて!」
夜中なのでくらい。
月明かりと懐中電灯を頼りにブツのもとへと向かう。
「ちょっと?大丈夫?」
触った感じはバッチリ人間。
骨とかちょっと私よりゴツゴツしてる感じがするから男の子だろう。………多分。
しかーし、全然喋らないね、ブツ。
「あれ?さっきは生きてたと思ったんだけど…。」
ちょっと失礼しまーすと声を掛け、胸らしき部分に耳を当てる。
ドクンドクン。
よし、生きてるね。
呼吸は?過呼吸とかにはなってないと思うけど。
これまた失礼しまーす。
耳を口らしき場所に近づける。
よし。普通。うん、人間。
ふ〜、あんし
「何方ですか?」
んっ!瞳ぱちくり。
偉い、偉いぞ私!
よくぞ耳にいきなり聞こえたイケボに絶叫しなかった!絶叫したら奇跡的にさっきのドーンで起きなかったご近所さんアーンド我が両親・妹が起きてしまう。
「僕を助けてくれたのですか?」
イケボ第二弾!耐えろ〜!
「そうですけど…。何か?」
恐る恐る目を合わせる。
・・・。なんじゃこりゃー!
何このイケメン!何何何?眩しー。
私の目はチカチカしてるのに、発光体のブツは、
「こんな可愛い方に助けてもらったなんて僕は幸せものです。」
とか、
「僕とお話しませんか。」
とか、しまいには、
「僕と結婚してください。」
とか、言い出したんだよー!
もうさ、可哀想だから家に入れてあげようかな、なんて気持ちは消え失せるわけね。
っていうか今の感じは単なる変態……じゃなかったとしても変な人!家に入れるわけにはいかないもん!
と、言うわけで真夜中。
私と発光体君は、人っ子一人いないであろう、ベンチが一つあるだけの少し離れた広場へと移動をしたのである。
しかし無言ということも無いわけで。
ちょっぴり気が合うかも、と思ってしまった私達は敬語を外したわけなのです。
「僕さ、君らが言うところの宇宙人なんだ。」
「・・・そうなの。」
「驚かないの?」
いやいや、空から人間落ちてきた時点で感覚がおかしくなってるからね。今更宇宙人でしたって言われても正直やっぱりね、って感じだよ。驚きゼロ。
「それは、空から落ちてきた時点で普通の人だとは思っていなかったから。」
「ふーんそうなんだ・・。何かつまらないな。もうちょっと驚いてくれると思ったのに。」
死ぬ覚悟のできた人間のメンタルなめんなよ。ちょっとやそっとじゃあ驚きません!
ははは。
「まあいいや。それより、君は何でこんな夜に外みてたわけ?」
げー!
それ聞く?今聞く?
死にたいからとかいうのは言えないよな。
「内緒。」
とでも言っておけば何とかなるだろう。
しつこく聞かれても言わないものは言わないもんね。
「そう…。」
「意外とあっさり…。しつこく聞いてくるかと思ったのに。」
ワリとマジで。
「聞きたい気持ちもあるけど、内緒なんでしょ。内緒じゃなくなったときまた聞くよ。」
ふーん。意外といい人。
「よし、僕決めた。ここ、地球で暮らす。」
「えっ?何?いきなり。」
「そっちこそ何?地球で暮らすって言っただけなんだけど?」
「えっでも…」
「親とか呼ぶし、家でも建てればいいんでしょ?」
えっ、えっ?
「そうと決まれば!活動開始!すぐ準備するからね!」
✾✾✾
ピーンポーン!
「あら、お客様?紫乃さん、私今忙しいから出てくださる?」
趣味の料理に精を出す母はお手伝いの紫乃さんに出迎えを頼んだようだ。
どうせ私には関係のないこと。
そう、思ったのに…、
「萌歌さん!ご友人様がいらしてますよ。」
「友人?」
「ええ、西園寺さんっておっしゃってました。」
西園寺?聞いたことないんだけど。
しかし、母は何かと首を突っ込んできた。
「萌歌ちゃんのお友達?紫乃さん、ご用事ないようだったらこちらにお招きしてちょうだい。ご挨拶したいわ。」
「お呼びしますね奥様。萌歌さん、お待たせしてますから行きましょう。」
「ええ。しかし西園寺さんなんていたかな…?」
本当に私の友だちかな?ちょっと怖いんだけど…。
「お待たせいたしました。萌歌さんです。」
しかし、あっという間に着いてしまう。
「わざわざありがとうございます。萌歌さん、こんにちは。近くを通ったから少しご挨拶に伺ったんだ。いきなりで、ごめんね。忙しくなかったかな?」
・・・・・。君か。
あの夜からまだ2日なんだけど…こうも完璧になるものなのか…。
恐るべし宇宙人。
驚きに声を失った私に気づいた紫乃さんが口を開く。
「奥様がぜひとも西園寺様に挨拶したいと仰って、このあとご用事はございますでしょうか?」
「いえ、特には。」
「ではぜひ、どうぞ。」
「お邪魔致します。」
あ〜、どんどん話が進んでいく。
頭がついていかない。
かかってきた電話に出るとことか正直なところ、顔が整ってるからかな。めっちゃ絵になるし。リアル発光体。紫乃さんもほっぺに手を当てちゃって乙女モードになってるし!
石像の様に動けない私にほほえみかけた西園寺?君は、私に言った。
「お母様にご挨拶させてね?」
と。
私の母の息子になるつもりなの?君は。
もう逃げられないのかもしれない。
そう感じた出会いから2日の昼のこと。