64 番外編的な告知
俺は妖孤。
ひよりの家族だ。
念願のご主人様と再会を果たし、ひよりの家族になる事も許してもらえて、俺は満足だ。
だが、霊力を分けてもらったおかげで尻尾が増えて困っている。
お姉さんとお姉さんのお父さんが、俺を修行の道具にするんだ。
尻尾が増えてからと言うもの、手加減が無くなって、危険な術を使って来るからたまったものじゃない。
俺に攻撃が通じなくて悔しいのか、ひよりにも危険な術を教えるのも、いい加減にしてほしい。
何度、死にかけた事か……
だが、最近は少し変化が起きて、俺は心穏やかに過ごしている。
「お姉ちゃん、そっちの本、読み終わった?」
「もうちょっと待って~」
何やらひよりとお姉さんは小説にハマったらしく、修行そっちのけで読んでいる。
俺も読めと言われたが、漢字が読めないから、さっぱりわからない。
カタカナは読めるようになったのだが、「アイムキャット」?
白い猫が異世界をいろいろやらかして暮らしている話らしいが、それの何処が面白いのかもわからない。
ひよりは絵がかわいいと言って夢中になっているが、こんな丸い猫で尻尾が二本ある奴の、どこがかわいいのだ?
つい最近までは、俺をかわいいかわいいと言って撫でていたのに……
いや、嫉妬をしているわけではない……
「ひよひよ~! 面白い本、持って来たよ~」
「あ! ハナチーだ~」
ご主人様……
なんだか、ご主人様が来る頻度が増えている気がするな。
もう少し来る回数を減らしてくれないと、俺の体が持たない。
戦闘訓練とか言って、俺を攻撃して来るからな。
「これ読んでみ~?」
「……これ? ma-no先生の新作?? ハナチーありがと~!」
「いいってことよ~」
また本が増えたのか。
まぁ俺としては有り難い。
修行の時間が減るからな。
「う~んと……『攻撃の出来ない勇者は誰が為に拳を振るう・・・』? 変なタイトルだね~」
「だしょ? 錯綜してるわ~。でも、勇者と魔王が手を組むってのが、面白かったしぃ」
確かにタイトルでは意味がわからないな。
それに、確か勇者は魔王の敵だろ?
どうして魔王が勇者を頼ろうとしているのかもわからない。
「私は『アイムキャット』の方が好きかな?」
お姉さんは、魔王の話より、猫の話の方が好きなのか。
「あんな猫のあやかしがいたら、戦いたいな~」
あやかし?
たしかに俺と一緒で、尻尾が複数あるから、あやかしと言えるのか。
だが、お姉さんは、何故に俺を見る?
「まぁこの猫又は強いから、戦ってみたいのはわかるしぃ」
ご主人様まで……
二人して、そんな血に飢えた獣のような目で俺を見ないでくれ!
「そういえば、最近、本ばっかり読んで、修行してなかったね~」
ひ、ひより……
怖いから、その目をやめてくれ……
「ヨウコちゃ~ん?」
「ヨウヨウ~?」
「ヨウコ~?」
うっ……
こ、殺される……
何かで話を逸らさねば!!
「ほ、ほら! まだ本の途中だっただろ? 『攻撃の出来ない勇者は誰が為に拳を振るう・・・』も『アイムキャット』も読んでからにした方がいいはずだ!」
こ、これでどうだ?
「そうだったわ。続き続き」
「わたしも読もっと~」
ホッ……
お姉さんとひよりは読書に戻ったな。
なんとか助かった……
「ウチは全部読んでるかんな~……ね? ヨウヨウ? 一発やらして?」
うっ……
ご主人様が残っていたか。
言い方は艶めかしいが、その「やらして」は「殺らして」にしか聞こえない。
ならばここは……
「わ! 急に甘えてどうしたんだしぃ」
恥を忍んでのスリスリだ!
いや、ご主人様に抱かれるのは、大きくて柔らかい物が当たって悪くない。
「ハナチーだけズルい~!」
「私も撫でさせて~!」
こうして俺は、皆に愛想を振り撒く事で、命の危機を脱したのであっ……
「さあ、修行するぞ~」
「「「は~い」」」
お姉さんのお父さんの存在を忘れてた!!
こうして命を削られる修行に付き合わされるのであった。
俺は妖孤。
「アイムキャット」
並びに
「攻撃の出来ない勇者は誰が為に拳を振るう・・・」
を宜しくお願いします。