57 妖狐 地獄モード突入
俺は妖狐。
おじさんの参加で修行がハードモードになって数日が経った。
いや、お姉さんとおじさんのサンドバックになって、地獄モードに突入した。
唯一の救いは、二人を相手にする時は、妖狐の姿ってだけだ。
「全然、攻撃が当たらないな」
「そうなのよ。避けるのが上手いのよ」
それは当然だ。
お姉さんは退魔の木刀。
おじさんは霊気の拳。
それを俺に殺気を放ってぶつけようとするから、避けるしかない。
「それに尻尾に当たっただけでは、ダメージにならないしな」
「霊気が集約されてるみたいね。私達の力では、足りないみたい」
避けるのをミスって咄嗟にガードした時に使って、気付いたんだったな。
楽に攻撃を捌けるようになったのだが、そのせいで二対一になってしまったんだ。
「ヨウコ。見て〜? 【火の玉】!!」
うお!
ひよりが、巨大な火の玉を放って来た。
なんとか避けきったけど、ひよりがたまに使う術が、一番死に近い。
練習なら向こうに放って欲しい。
「危ないから、俺を実験に使うのはやめてくれ! 死んでしまう!!」
「え〜。ヨウコは強いから大丈夫だよ」
ひよりの方が、俺の数百倍強いはずだ。
現に、お姉さんとおじさんが驚いている。
「あれって初級の術だよね?」
「そうだ……嬢ちゃんがやると、なんでもデカくなるんだ……」
「土蜘蛛に使ったのも初級よね?」
「ああ。俺がやっても、野球ボール大の穴が開くだけだ」
「唯一の救いは、あやかしにしか攻撃が効かない事よね……」
「そうだな。あんなのが社に当たったら消し飛んでしまう」
「なんだかひよりちゃんなら、実体にも影響を与えそうで怖いわ」
「そうだな……あまり強い術は教えない方がよさそうだ」
「「はぁ……」」
驚きを通り越して、自信を喪失しているな。
しかし、あやかしには効くのなら、俺が一番危険なのでは?
お姉さん達は救われているかもしれないが、俺は救われていないんだ。
強い術じゃなくても教えないで欲しい!
「次の術はね〜」
「ま、待て! 心の準備が〜……」
「かしこみ、かしこみもうす……」
そ、その術は……土蜘蛛に使った極太光線!!
「お姉さん! 助けてくれ〜!!」
「ひ、ひよりちゃん。休憩にしよ? おやつもあるわよ〜」
「おやつ? うん! 食べる〜」
ホッ。
おやつに助けられた。
いや、お姉さんに助けられた。
今日のおやつは、みたらし団子か。
これもまた、うまい!
「そうそう。後で話そうと思っていたんだけど、ヨウコちゃんのご主人様。見つかったかもしれないわ」
「え……本当か!?」
「まだわからないけどね。最近、関東でよく当たる占い師がいるの。その占い師が管憑きで、多くの管狐を使役しているらしいの」
「ご主人様だ……ご主人様は八匹の管狐を使役している……」
「そんなに!? かなり霊力が強いのね」
「ヨウコ……」
あ……お嬢ちゃんの顔が暗くなった……
「見付かってよかったね!」
「あ、ああ。でも、俺はひよりの側から離れないから、心配するな」
「ホント?」
「ご主人様には別れの挨拶がしたいだけだ。だから、これからもずっと一緒だ!」
「うん! ずっとモフモフさせてね!」
「ああ!」
……ん?
そこは一緒にいようではないのか?
流れで返事しちゃったよ!