55 妖狐の休日
俺は妖狐。
ひよりは今日も元気に学校に向かった。
途中まで送って行ったが、お姉さんの方がしんどそうにしていた。
それは当然だ。
ひよりはほとんど、俺に乗っていたからな。
ひよりは学校に行き、旦那さんと奥さんは田んぼに行き、俺はお留守番だ。
昨夜は、帰ってから俺が倒れたらしく大変だったから、ひよりが今日は休めと言っていたので、日当たりのいい縁側で寝ている。
と言っても、家に帰るなり、疲れて寝ただけだ。
当然だ。
自分より大きな土蜘蛛と戦っていたんだからな。
思い出すと、今でも身震いしてしまう。
それにずっとひよりを乗せて歩いていたから、疲れるに決まっている。
朝に少しひよりと話したが、土蜘蛛を倒した手柄は、ひよりも断ったそうだ。
どうも、自分がした事はたいした事じゃないと思っているみたいだ。
それよりも、おじさんとお姉さんが両親に謝っていたのが、気になっていたみたいだ。
ひより曰く、「楽しい所に連れて行ってくれたのに、なんで謝るんだろうね〜?」だとさ。
本人は危険に気付いていなかったみたいだ。
奥さん達も、礼を言って、お姉さん達を帰したらしい。
その事を聞いて、俺にも思う事がある。
ひより家族は暢気だな……と。
まぁひより以外は、あやかしが見えないから、大変さは伝わらないのだろう。
見えるあやかしと言えば、無害な俺しかいないからな。
「ただいま〜」
奥さんの声だ。
そろそろお昼かな?
出迎えに行こう。
「おかえり」
「ヨウコちゃん。ただいま。すぐにお昼の準備するね。その前に……」
奥さんは尻尾を触り出したな。
二本の尻尾がそんなに気になるか?
「ヨウコちゃんは本当に不思議ね。フェレットからキツネになったかと思えば、尻尾が二本になるんだから」
そうだな。
俺も不思議だ。
ご主人様と一緒にいた時はこんな変化はなかったのに、本当に俺の体に何が起こっているんだろう。
「そうだ! 変化ってヤツ、やってくれない?」
「変化? アレはひよりがいないと出来ないと思う」
「そうなの? 尻尾が増えたから出来るんじゃないの?」
たしかに、力は上がったから出来るかも?
「ためしにやってみる。【変化】!」
お! 出来た。
手を見る限り、いつもの女の子になれたはずだ。
やはり葉っぱは必要なかったんだな。
「やっぱりその姿、かわいい! 尻尾も二本のままだね」
なんだか以前と違って、楽に出来る。
力を使っている気がしないな。
「それじゃあ、料理作るの手伝ってもらおうかしら」
は?
まさか、そのために変化させたのか?
「はい。行くよ〜」
後ろから抱き抱えて連行しないでくれ!