54 あやかし退治 閑話
俺は妖狐。
土蜘蛛を完全に食い尽くした。
ん? 何か硬い物が……ペッ!
なんだ?
きのこみたいな木が出て来た??
「ヨウコちゃん!」
「お姉さん。終わったみたいだ」
「ええ。見てたわ。よく頑張ったわね」
あ……
お姉さんに強く抱き締められた。
心配してくれていたんだな。
「それに尻尾も増えて、立派になったわ」
え?
増えたの!?
あ、本当だ。
二本ある。
これで立派になったって事なのか……
お姉さんがモフモフ言いながら撫でてる姿を見ると、よくわからないな。
「琴葉! キツネ!!」
「お父さん! 怪我は大丈夫!?」
「ああ。霊気を回復に回したからなんとかな。まさかあんな大妖怪に、この人数で倒してしまうとはな。完全体にはなっていなかったと言えど、信じられん」
「ほとんどひよりちゃんと、ヨウコちゃんのおかげだけどね」
「そうだな。俺達が逆に守られてしまったな」
たしかに……
最後なんて、戦っていたのは俺だけだったな。
だが、お姉さんがいなかったら、俺は土蜘蛛に辿り着けなかった。
おじさんも怪我をしているのに、ひよりを安全な場所まで運んでくれた。
俺達だけでは倒す事なんて出来なかったんだ。
あ! ひより!!
「ひよりは大丈夫か!?」
「ああ。霊気を出し過ぎて、寝ているだけだ。心配するような事じゃない」
ホッ。
大丈夫でよかった。
心配するのは当然だ。
俺の家族だからな。
しかし、寝顔を見ると幸せそうだな。
モフモフ言ってるし……
「お、お父さん。これ……」
「男根……」
「言わないでよ!!」
「あ、ああ。これがこの神社の御神体だったんだな。でも、なんの力も感じられない。土蜘蛛が使い切ってしまったか」
「どうだろう? ヨウコちゃんが吐き出していたから、食べちゃったのかも」
「食っただと!? キツネ。体は大丈夫か?」
「特には……尻尾が増えたぐらいだ」
「二尾か……お前も立派な大妖怪だな」
大妖怪?
土蜘蛛と同格と言う事は、俺は退治されるのか?
「まさか俺にも霊能者が集まるのか?」
「何か悪さをしていればな。悪さをしなければ、めったに見付かるものじゃないから大丈夫だ」
「お父さん。それじゃあ、解決になっていないでしょ。ちゃんと手続きをすれば、霊能者に見付かっても大丈夫よ。私の方でやっておくよ」
「お姉さん。ありがとう」
「問題は土蜘蛛の方だな。誰が倒した事にしたものか……」
「たしかに……。ひよりちゃんはただの小学生だし、ヨウコちゃんは元管狐だし……」
「説明するのが面倒だな」
「それにひよりちゃんが、他の大社に無理矢理、引き抜きとかされてもかわいそうね」
無理矢理?
かわいそう?
それは困る。
ひよりがそんな事に巻き込まれるって事は、俺も巻き込まれそうだ。
「手柄を横取りするみたいだが、俺達で倒したって事にする方が丸く収まりそうだな」
「そうね。ヨウコちゃんはそれでいい?」
ホッ。
面倒事に巻き込まれなくて済みそうだ。
「俺は構わないが、ひよりがなんと言うか……」
「そっか。ひよりちゃんの意見も大事だね。目を覚ましてから話そう」
「ああ。そうだおじさん。ひよりを俺に乗せてくれないか?」
「傷なら大丈夫だぞ?」
「いや。俺が運びたいんだ」
「わかった」
うん。寝ているが、しっかり抱きついている。
耳元でモフモフ聞こえるが、心地いい。
さあ。家に帰ろう。