50 あやかし退治 其の三
俺は妖狐。
「がった〜い!」
ひよりが勝手に背中に乗って来た。
いや。ひよりを背に乗せて蜘蛛のあやかしが、うようよいる所を走り回れとお達しが下った。
「準備万端だな」
ひよりを乗せたまではな。
心の準備は出来ていない。
「それじゃあ、ヨウコちゃん。ボスに向けて走って!」
俺達が先頭?
おじさんの方がいいと思うのだが……
「ヨウコ。行くよ〜!」
はぁ……
お願いされては断れない。
まぁひよりの謎呪文があれば、俺が安全に進めるはずだ。
行くか!
ダッシュ! ダッシュ!! ダッシュ〜!!!
「ヨウコちゃん! もう少し速度を落として!」
あ、お姉さんとおじさんがついて来てなかった。
俺は走るのが速かったんだな。
おっと。
ひよりの息継ぎだ。
よっ! とう!!
よし。尻尾を振り回して三匹倒した。
「なんまんだぶつ。なんまんだぶつ……」
ひよりの謎呪文も戻ったな。
お姉さん達も追い付いて来た。
これぐらいの速度で走ればいけるかな?
うん。追い付いて来ている。
あとはひよりのの息継ぎの度に、尻尾を振り回してっと……
「おし! もういいぞ」
ふぅ。
思ったより土蜘蛛の元まで早く着いたな。
さすがひよりだ。
土蜘蛛まで一直線だ。
「ひよりちゃん。ヨウコちゃん。ありがとう。あいつは私達に任せて!」
「琴葉。行くぞ!」
「はい!」
おお!
二人はあの馬鹿デカイ土蜘蛛に恐れもせずに突っ込んで行く。
お姉さんは足に何度も木刀を振るって、おじさんも反対側の足を殴りまくっているな。
……でも、効いているのか?
「ヨウコ。お姉さんとおじさんに、小さい蜘蛛が近付かないようにするよ!」
「あ、ああ。わかった」
「なんまんだぶつ……」
ひよりを乗せた俺は、二人に近付く蜘蛛がいれば、スピードを上げて、ひよりの謎呪文で消し去る。
二人が安全になれば、子蜘蛛が多く集まっている場所に突っ込み、消し去って行く。
そうこうしていると、子蜘蛛は全て消し去る事に成功した。
「やった〜! わたしたちの勝利だね!」
「……そうだな」
「どうしたの?」
「お姉さん達、苦戦しているみたいだ」
「え? 本当だ。二人とも辛そうだね」
「まぁあの二人なら、大丈夫だろ」
「そうだよね……あ!」
お姉さん!
危ない!!
「おじちゃんが……」
お姉さんが土蜘蛛の足で吹っ飛ばされて倒れたところを、おじさんが庇って、背中を爪で斬り裂かれてしまった……
「ヨウコ。行こう!」
二人が危ない。
怖いとか言っている場合ではないな。
「おう!」
俺達は土蜘蛛に向けて走り出した。