47 妖狐 心配事が増える
俺は妖狐。
尻尾の操作を覚えてからの数日、地獄でした。
お姉さんは攻撃を俺に受け止められてからと言うもの、本気になってしまった。
俺も必死に尻尾を受け止め、チャンスがあれば、尻尾で攻撃するのだが、お姉さんには届かない。
攻撃した事で逆に殺気が膨らみ、お姉さんの攻撃が激しくなるばかりだ。
そのおかげか、避ける事に関しては自信が付いた。
まぁ避けないと、そこに待っているのは死だからな。
お姉さんは普通の木刀だから、当たっても大丈夫と言っているけど、信じられない。
今も殺気を振りまきながら、俺を殺そうとして来るからな!
………
「ふぅ〜〜〜。今日はここまでにしよっか」
やっとおしまいか。
今日も生きて、一日を乗り越えられた。
だが、まだ空は明るい。
早く終ったのはいいのだが、何か嫌な予感がする……
「いつもより早いんだな」
「だって明日は本番だからね」
「本番?」
「ヨウコちゃんのデビュー戦よ」
「は?」
「あやかし退治に行くのよ。なかなか動きが良くなって来たから、その調子でやれば、バッチリよ!」
マジか……
ついにこの日が来てしまった。
「危険な場所には、行きたくないのだが……」
「そんなこと言ってたら、早く尻尾が増えないぞ」
「そうだよ! ヨウコのためにやってるんだからね!」
俺のため?
違うだろ?
戦闘狂のお姉さんの相手をさせられたあげく、ひよりの我が儘を聞くのが俺のためだと?
俺は安全にのんびりと尻尾が増えればそれでいいんだが……
二人のあの目は、俺の意見なんて聞いてくれないし、絶対参加か……
「ひよりも参加するのか?」
「うん! わたしも簡単な術を教わったんだ〜」
「ひよりは小さいけど、危険は無いのか?」
「ええ。今回の場所は大丈夫よ。私とお父さんだけでも多いぐらいなのに、ヨウコちゃんとひよりちゃんがいたら、私達の出番は無いかもね」
「それでも、ひよりの両親が心配するんじゃ……」
「それもちゃんと事情を話して、許可は貰ったから大丈夫。……もしかして、ヨウコちゃんは行きたくないの?」
その通り。
怖いから、出来れば行きたくないんだ。
「ヨウコは怖がりだもんね。わたしがついてるから大丈夫だよ」
ひよりがついていても、頼りになるように見えない。
おじさんがずっと側にいてくれたら安心感はある。
あの太い腕なら、どんなあやかしが来ても、俺を守ってくれそうだ。
「行きたくないなら、私と稽古する? 今度は退魔の木刀を使おっかな〜」
お姉さん。それは脅しだ!
あやかしも怖いが、お姉さんはもっと怖い。
うぅ……行くしかないのか。
「行かせて頂きます」
「心配しないでも、帰って来たら、またしごいてあげるからね」
お姉さん。
そっちの心配の方がデカイんだ!!