45 妖狐 イモを食べる
俺は妖狐。
お姉さんの話では、尻尾を増やすには、どうやら年月が掛かるみたいだ。
変化も解けてしまって、今はお姉さんにブラッシングされている。
ひよりは諦めたのか、諦めていないのかわからないが、焼き芋を頬張っている。
「ヨウコちゃんも食べる?」
「いや。俺はそう言うのは……」
「いなり寿司だって食べれるんだから、他の物も食べれるんじゃない?」
「そうか。じゃあ、ひとつ貰おう」
「はい。あ〜ん」
「あ〜ん」
ほう。これはこれでうまいな。
だが、いなり寿司には勝てないな。
「うまいな」
「やっぱり食べれたわね。いなり寿司だけじゃ、栄養が片寄るから、他の物も食べた方がいいよ」
「そうなのか?」
「あ……人間の場合だけど……」
「ヨウコには長生きしてもらわないといけないから、ママに頼んでみるよ。その方が、早く尻尾が増えるかもしれないしね!」
たしかに奥さんの作った料理は、いい匂いがしていたな。
いなり寿司もうまく作れるんだから、他の物も食べてみたいかも。
「なんだ? 嬢ちゃん来てたのか」
「あ、おじちゃん。こんにちは」
「ああ。こんにちは。琴葉……このキツネ、イモ食ってるのか?」
「ええ。なんでも食べれるみたいよ」
「どこまでも変わったキツネだな」
たしかに。
零号ジイサンでも食べてなかったからな。
まぁ俺は、管狐ではなく妖狐だ。
食べれても不思議じゃない……と思う。
「おじさんは、ヨウコの尻尾を増やす方法、知らない〜?」
「普通に考えたら、年月だよな」
「それは私が言った」
「そうか。じゃあ、霊力が増えればいけるんじゃないか?」
「霊力?」
「あ! そういえばあの時、ヨウコちゃんはあやかしを食べていたわね。だから、管狐から妖狐になったのね」
「それだけじゃなく、嬢ちゃんからも良質なに霊気を貰っているのも大きいんじゃないか?」
「たしかに……ひよりちゃんは、質、量共に霊能者並み……いや、それ以上ね。お父さんより凄くない?」
「俺の方が強い! と言いたいところだが、凌駕している……。まったくこの嬢ちゃんの、どこにこれ程の力があるんだか」
う〜ん。
だいたい俺の考えと合っているな。
妖狐になった事で、賢さも上がったのかもしれない。
「はい。ヨウコ。あ〜ん」
「あ〜ん……あ!」
「あはは。引っ掛かった〜」
イモにかぶり付こうとした瞬間、引かれてしまった。
「く、くれないのか?」
「しょうがないな〜。あ〜ん」
「あ〜ん。うまいうまい」
「どう見ても子供だな」
「ヨウコちゃんもね」
「「へ?」」
前にもこんなやり取りをしたような……
「そうだ!」
うお!
お父さんは体もデカければ、声もデカイ。
ビックリするから、急に大きな声を出さないで欲しい。
みんなもれなく驚いているぞ。
「お父さん。急にどうしたのよ?」
「こいつにあやかしを食べさせたらどうだ? そうすれば、早く尻尾が増えるんじゃないか?」
またよけいな事を……
そんな事を言うと、ひよりが乗り気になってしまうからやめて欲しい。
「ヨウコ……そんなの食べたらお腹壊すよ」
お! ひよりが珍しく止めてくれそうだ。
ここは乗っておこう。
「そうだな。出来れば俺も食べたくない」
「じゃあ、修行だな。あとは霊気の湧き出る場所で、あやかしと戦わせればいいんだ」
なんでそうなる?
あやかしを食べなくても、危険な目に合うじゃないか!
ひより、止めてくれ!!
「それ面白そう!!」
乗り気になってしまった……
「私もそれに付き合うよ!」
お姉さん……
怖いから殺気を放つのはやめてくれ!