44 妖狐 確認する
俺は妖狐。
女の子の姿で、お隣のお姉さんに会ったら驚かれた。
「かわいいのね〜。モフモフ〜」
いや、抱いたり撫で回されたり、尻尾をイヤらしく触られている。
その間、ひよりはひよりで、狛犬と遊んでいる。
「ひより。そろそろ本題に入ってくれないか? お姉さんも離れてくれ」
「あ! 忘れてた」
「え……もう少し……」
もう十分いじり倒しただろ?
まだ尻尾から手を離さないよ……
「お姉ちゃんに聞きたい事があって来たの」
「聞きたい事? いま、裏庭の掃除中なんだ。そこでもいい?」
「うん!」
お姉さんは仕事中だったんだな。
だから巫女装束だったのか。
胸を見ると怒られるから、見ないようにしておこう。
………
ここが裏庭か。
表も綺麗にしてあったが、こちらも綺麗だ。
これだけ綺麗なら、掃除の必要は無さそうに見えるが、お姉さんはホウキで枯葉を集め出したな。
「それで聞きたい事ってなに?」
「ヨウコの尻尾が、どうやったら増えるか知りたいの」
「尻尾?? 私としてはヨウコちゃんが女の子になっているのが知りたいんだけど……」
「あ、そっか!」
「ヨウコはね〜。妖狐だから変化が出来るんだよ!」
「う、うん。なるほど」
お姉さんの心の声が聞こえて来そうだ。
絶対、疑問に思っている顔だ。
「ヨウコ。戻っていいよ」
「わかった。『変化』」
「わ! キツネになった!!」
この姿は知っているはずなのに、大袈裟だな。
「もう一回、女の子になれる?」
「出来るけどおそらく、あと少ししか維持できないぞ」
「そうなんだ。少しでいいからお願い」
「わかった。ひより。頼む」
「は〜い。葉っぱを乗せてっと……よしよし〜」
「『変化』」
「女の子になった……なるほど。ひよりちゃんの霊気を分けてもらって変身しているのね」
お姉さんはさすがだな。
一連の流れを見ただけで、変化の秘密に気付いている。
「でも、葉っぱは必要なの?」
「たぶんいらないな」
「そうなの!? それなら言ってよね〜」
「まぁ雰囲気があるから、いいんじゃない?」
「そうだね!」
そうなのか?
わざわざ葉っぱを探す必要が無いからいいと思うんだが……
「そうそう。尻尾だったわね。管狐を使役している人とは付き合いがあるんだけど、妖狐を使役している人とはないんだよね。だから、私にもわからないわ」
「そうなんだ〜」
「妖狐の生体なら少しわかるよ。年をとれば成長して、上位種になるの」
「どれぐらいかかるの?」
「百年とか、千年とかかな?」
「ほんと!? ヨウコ。やったね〜」
ひより……
そうなったら、ひよりは生きていないだろ?
「あ、ダメ! もっと早く尻尾を増やしてくれないと、モフモフする前に死んじゃうよ〜」
気付いたのはいいけど、俺を九尾の狐にしたい理由って、やっぱりモフモフしたいだけなんだな……