42 妖狐 変化する
俺は妖狐。
ひよりに葉っぱを頭に乗せられ、「変化」と言ったら、体が光だした。
なんだ?
目線が高くなって来た。
もしかして成功か?
光も収まって来た……
「ヨウコ……ヨウコなの?」
「ああ。俺だ」
「やった〜! 変化出来たよ!」
「そ、そうか」
これが人間の感覚か。
お嬢ちゃんと目線も一緒で、不思議な感じだ。
「あれ? 変化出来たけど、尻尾が一本しかないよ〜」
「本当だ。イメージが足りなかったかもしれない」
「まぁいっか。慣れだよ。慣れ」
「そうだな。次は成功させてやる」
「それじゃあ、何して遊ぼうか?」
「その前に、自分の姿を見てみたいのだが」
「あ、そうだね。気になるよね! 玄関に大きな鏡があるから行こう!」
「あっ!」
コケてしまった。
うまく歩けない。
人間と言うのは、こんなに歩き難いのだな。
「歩けないの? わたしの肩につかまって歩けばいけるかな?」
「ああ。すまない」
う〜ん。
ひよりに負担掛けてしまっている。
歩くのにも慣れないといけないな。
あ、奥さんだ。
「ひより……その女の子はお友達?」
「ママ。ヨウコだよ! ヨウコは変化が出来るようになったんだよ!」
「そ、そうなんだ……」
珍しく奥さんが動揺しているな。
ひよりが見えない俺の相手をしていた時より動揺している。
「ケモミミ少女、キター−ー!!」
は?
どうした奥さん?
何か興奮して俺に抱きついて来たぞ。
「赤い着物もかわいいのね。尻尾はどうやって出ているのかしら? まったくわからないわ〜」
あまり触られると、こちょばいのだが……
「ママ……ひよりより、ヨウコの方がかわいいんだ……」
ひよりが頬を膨らませている。
あれは泣き出す合図だ。
奥さん。早くひよりの機嫌をとって!
「へ? そんな事ないわよ! ひよりが一番かわいいよ。よしよし〜」
うん。俺にしていたよりも、おさわりが凄いな。
奥さんもひよりの扱いに慣れているから、徐々にひよりの頬がしぼんで来た。
それはそうと、もう少しで鏡に辿り着けたんだが……
壁伝いに歩けばいけるかな?
よいしょよいしょ。
ふう。
あとは鏡の前で、バランスをとって立てば……
おお!
本のとおりの女の子だ。
やれば出来るものなのだな。
だが、俺は雄だ。
よくよく考えたら、変化するなら、男の子の方がしっくりくるかも。
「ひより。次に変化するなら、男の子になりたいんだが、どうだろう?」
「「「そんなのダメー!!」」」
「え……」
何故、旦那さんまで叫んでいるんだ?
「女の子の方が、かわいいもん!」
「ケモミミ少女……萌える!」
「ひよりに男なんて、まだ早い! がるる〜」
うん。
ひより以外の反応が怖い。
これはもう、変化なんてしない方がいいかも……