40 妖狐 新しい仕事をする
俺は妖狐。
ひよりの家族だ。
二日間の休日を終えたお嬢ちゃんは、今日から学校だ。
いつも通り俺もついて行こうとしたら、奥さんに止められた。
もしも霊感のある同級生がいたら、俺の大きな体では隠れる事も出来ず、騒ぎになるかもしれないからだ。
お嬢ちゃんは俺と離れるのが寂しいのか、泣きそうな顔で学校に向かった。
なので今日は、旦那さんの仕事を手伝っている。
旦那さんの仕事は農家。
まだ初めて一年とのことで、ご近所さんの農家の人に助けられながらしているらしい。
ご近所さんは高齢なので、力仕事なんかは旦那さんは大活躍とのこと。
皆、持ちつ持たれつ。
助け合って、田畑を維持しているみたいだ。
俺の仕事は田んぼの草むしり。
これを疎かにすると、美味しいお米が出来ないので、重要な仕事らしい。
ご主人様のところに居た頃も、小さな畑があったので、たまに手伝っていたからお手の物だ。
しかし、広大な田んぼの手入れはドロドロになるから大変だ。
まぁ俺はあやかし。
数分経てば元の綺麗な姿になるから問題ない。
「そろそろお昼にしましょ〜」
奥さんが呼んでいる。
途中で居なくなったのは、お弁当を取りに行っていたのかな?
「はい。ヨウコちゃんはいなり寿司ね」
「ありがとう! いただきます!」
うん。うまい。
仕事をした後のいなり寿司は格別だ。
お嬢ちゃんが側にいないから、もっと腹が減るかと思っていたが、杞憂だったな。
「どう? うちの田んぼ。広いでしょ?」
たしかに広い。
そもそも、ご近所さんの田んぼと区別がつかないから、どこまでが旦那さん達の田んぼかわからない。
「ここに越して来て、頑張ったのよ。ひよりはあやかしが見えるでしょ? そのせいで、嘘付きと同級生に言われてね。学校に行きたくないってなったのよ」
まぁ見えない物を見えると伝えるのは難しいのだろう。
「奥さんだって悩んだのでは?」
「私の心配してくれてるんだ」
「ああ」
「まぁ少しはね。でも、私はひよりを信じているから大丈夫だったわ」
「そうか」
「それに、お隣の琴葉ちゃんの存在も大きかったわね」
「お姉さん?」
「そうそう。初めて出会った時に、ひよりが何か変な物を見ないかと心配してくれたの。その時に、世の中には見える人と見えない人がいるんだ〜って確信出来たのよ」
なるほど。
お嬢ちゃんが一人で話していても、注意しなかったのは、見えないけど信じていたのか。
奥さんはやはり、優しい人なんだな。
「実際にヨウコちゃんと出合えたから、信じ続けて正解だったわ」
「そうか」
「ヨウコちゃんのおかげで私の夢も叶ったわ」
「奥さんの夢?」
「私ね、動物にアレルギーがあるの。ペットを飼ってみたかったの〜。ヨウコちゃんなら、アレルギー反応が無いから助かるわ〜」
アレルギーがなんだかわからないが、俺は妖狐。
ペットではない!