38 あやかし狩り 閑話
俺は管狐……いや、妖狐だ。
まさか本当に妖狐になれるとは思ってもいなかった。
大きなあやかしに飲み込まれた俺とお嬢ちゃんは、無事、あやかしから脱出し、ついでに退治までしてしまった。
現在は大きなあやかしが遠くから見えたのか、霊能者に囲まれ、お説教されている。
「また嬢ちゃんには驚かされてしまったな。ガハハハハ」
「お父さん。笑っている場合じゃないでしょ。もう少しで、ひよりちゃんがあやかしに取り込まれるところだったのよ」
「ああ。そうだったな。一人でこんな所まで来てはいけないぞ」
「うん……ごめんなさい!」
「よし! この話はこれでおしまいだ。それよりコイツだな。コイツがさっきの管狐か……」
「管狐じゃないよ。妖狐だよ」
お嬢ちゃん。たしかに今は妖狐だが、ついさっきまで管狐だったんだ。
「あ、ああ。たしかにキツネだな。どうやったらこんな姿になるんだ?」
「今日は管憑きの人が来てるでしょ? その人に聞いてみましょ」
「そうだな。その前にゴミ掃除をしてしまおう。お嬢ちゃんのおかげで、散らばっていたゴミが一ヶ所に固まっているから楽が出来る。ありがとうな」
「お父さん! 注意する時は注意する!!」
「あ、ああ」
「ひよりちゃん。もう無茶しないでね。何かあったら、悲しむ人がいるんだからね」
「うん。お姉さんも心配かけて、ごめんなさい」
「よし。それじゃあ、ゴミ拾いしよっか!」
「うん!」
「ヨウコちゃんも手伝ってね〜」
「ああ!」
その後、俺達は手分けしてゴミ拾いにあたる。
あやかしは大きなあやかしになって消えたせいか、新しく出て来る事はなかった。
霊能者達は、出番がなくてガッカリするかと思ったが、山の中を歩き回る手間が減ったので、お嬢ちゃんに礼を言う者が多かった。
お嬢ちゃんはその礼を受けても舞い上がることはなく、申し訳なさそうに謝っていた。
お嬢ちゃんは我が儘な事を言うけど、謝る時は謝る良い子だ。
「ふぅ〜〜〜。こんなもんかな?」
「いつもより、多くゴミを集められたね。これで九十九神が出て来ても、宿る先が少ないからイタズラも減るわね」
「これも嬢ちゃんの……いや、なんでもない」
おじさんはお礼を言い掛けて、お姉さんに睨まれているな。
お姉さんはそれほど、お嬢ちゃんの事が心配だったのだな。
「それじゃあ、ベースキャンプに戻ろう。一休みしてから、ドライブだ!」
「ヨウコ〜。疲れた〜。乗せて〜」
いや、俺の体は……
大きくなったんだったな。
今ではお嬢ちゃんとたいして変わらない。
これなら、お嬢ちゃんぐらい乗せられるかも。
お嬢ちゃんが乗りやすく少し屈んで……
「これで乗れるか?」
「うん! ありがと〜」
よっと。
うん。これぐらいの重さなら、走る事も出来そうだ。
お嬢ちゃんも俺にしがみつき、気持ち良さそうにしている。
俺は管狐だった。
ついにお嬢ちゃんの夢を叶え、妖狐になってしまった。
これでお嬢ちゃんも満足してくれただろう。
「モフモフ〜。次は九尾のモフモフだね!」
九尾のモフモフ!?
キツネじゃないのか!!