36 あやかし狩り 其の五
俺は管狐。
山中に走って行ったお嬢ちゃんを見つけたが、お嬢ちゃんは小さなあやかしの集合体に飲み込まれてしまった。
「ひよりちゃん!」
今のところ透けて見えているが、このままだと大きなクマのぬいぐるみの腹の中に収まりそうだ。
「あやかし達……ひよりちゃんに引き寄せられてる? まだひよりちゃんの力に抵抗されているけど時間の問題かも……やるしかない! てえい!!」
お姉さんが退魔の木刀で斬り付けた!
だが、表面を斬っただけで、奥まで届いていないみたいだ。
何度も木刀を振るっているが、あやかしが集まるスピードの方が速い。
そのせいで、ダメージになっていない。
「くっ……ダメね。お父さんがいれば……」
「俺が呼んで来ようか!?」
「その前に、ひよりちゃんが完全に飲み込まれてしまう」
「じゃあ……」
「私に考えがあるわ。ひよりちゃんは中で気を失っているの。だから目を覚ませば、抵抗力が上がって抜け出せると思うわ」
「なるほど。呼び掛け続ければいいのだな?」
「いえ。ここからでは声が届いていないわ。だからヨウコちゃん。あなたが行くの」
「俺が?」
「さっき斬った感触から、ヨウコちゃんぐらいの大きさの穴なら開けられそう。そこをヨウコちゃんが進めばいいのよ」
「え……それって失敗したら、俺はどうなるんだ?」
「おそらく……あの大きなあやかしの一部になるわね」
「そうか……わかった。お嬢ちゃんに助けてもらった命だ。ここで返そう」
「もう! ヨウコちゃんも生きて戻って来るのよ! そうしないと、ひよりちゃんが悲しむんだからね!!」
「……わかった! やってやる!!」
「行くわよ! 我が力よ。神の依り代である剣に宿れ」
おお! お姉さんの木刀が光輝いている。
俺でも凄い力が集まっているのが見てとれる。
「喰らえ。【真突き】!!」
凄い……お嬢ちゃんまでの道が開いた。
「長くは持たない。急いで!!」
「お、おお!!」
呆けている場合じゃなかったな。
開いた穴にダッシュだ!
よし! 中に入った。
だが、今にも閉じそうだ。
急げ……急げ!!
ぐっ……狭くなって来た……
あ……
俺まで押し潰されそうだ……
お嬢ちゃんは、もうそこなのに……
くそ!
これが管狐の限界か……
お嬢ちゃん……
いや、俺は妖狐だ!
お前達のような弱いあやかしと一緒じゃない!
大妖怪だ!
お前達なんかに喰われてたまるか!
俺が喰ってやる!!
ガブッ! ガブガブッ!!
マズイ!
だが、おかげで俺も力が湧いて来た!
もっと喰ってやる!!
ガブッ! ガブガブッ! ガブガブガブッ!!
お嬢ちゃんまで、もう少しだ〜〜〜!!