29 管狐 お出掛けする
俺は管狐。
お嬢ちゃんは、今日は学校を休んでいる。
なので俺も、お嬢ちゃんの腹の上で寝ている。
お嬢ちゃんは昨日のマラソンが堪えたのか、グロッキー状態だ。
朝からあちこち痛いと言い、旦那さんが気持ち悪いぐらい心配していた。
そのせいで俺も心配になってオロオロしていたら、奥さん曰く、ただの筋肉痛で明日にはよくなるとのこと。
心配してくれてありがとうと言われたが、当然だ。
俺は管狐。
お嬢ちゃんの霊気が無いと生きていけない。
早くご主人様が迎えに来てくれるといいのだが……
あ、お隣のお姉さんが調べていてくれたはずだ。
お嬢ちゃんも動けないみたいだし、一人でお出掛けしてみるか。
紙に出掛ける旨を書いて……
「ヨウコ。お姉ちゃんの所に遊びに行きたいの? う〜ん……遅くならなかったらいいよ。気を付けて行くんだよ〜」
よし。許可が出た。
では、行ってくる。
歩き慣れた道だ。
間違う事は無い。
だが、猫に追い掛けられてしまった。
ダイエットのおかげで、体が元に戻っていてよかった。
じゃないと今頃、猫にいたぶられていた。
あの階段を登れば、お姉さんの家だ!
……忘れていた。
化け物犬二匹が俺を睨んでいる。
超怖い。
後ろからも猫が来ているから、逃げ場が無い。
前門の犬。後門の猫だ。
どうする?
「コマとマコ? 何か来たの!?」
お姉さん!!
助かった〜。
「くらえ〜〜〜!」
それは退魔の木刀!?
死ぬ! 死んでしまう!!
前門から鬼まで出て来た!!
「あ、ヨウコちゃん!」
ガシーッ!
おおう……
鼻先をかすめて、地面で止まった。
「ゴメンね。悪いあやかしが入って来たのかと思ったの」
そうなのだな。
でも、少しは相手を確認してから攻撃してくれ。
「今日はひよりちゃんはいないの?」
そうだ。一人で来た。
この手紙を読んでくれるか?
「くわえている紙を読めばいいの? なになに……ああ。調べてあるよ。ここじゃなんだし、私の部屋に行こっか」
それは助かる。
化け物犬がヨダレをたらして睨んでいるのは、居心地が悪い。
しかし、今日のお姉さんは巫女装束か。
ご主人様も仕事の時に着ていたが、ご主人様より似合っている。
でも、ご主人様は胸元が、もっと開いていた気がするのだが……
「どこ見てるの? これはサラシを巻いているから胸が目立たないのよ」
なにやらお姉さんが言い訳しているな。
だが、お姉さんが似合っている理由が分かった。
ご主人様は胸が大きかったから似合わなかったのだな。
お姉さんは怒っているように見えるし、似合っていると褒めておこう。
紙に書いてっと……
「似合ってる? ああ。貧乳だから似合っていると言いたいのね……」
そんな事は言ってない!
だからお姉さん……木刀は降ろそうか?