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24 管狐 事件を目撃する


 俺は管狐。

 今日はお嬢ちゃんの学校について来ている。

 俺も授業を聞いているものの、何を言っているか、いまいちよくわからない。

 当然だ。

 俺は管狐。

 独学で覚えたひらがなしか読めないからな。

 算数も掛け算や割り算、ひっさんなんかが出てきて、足し算や引き算しか出来ないのでわからない。

 お嬢ちゃんも集中力が無くなると、俺を膝に乗せて撫で続ける。


 だが、次は体育。

 お嬢ちゃんは体育の授業だけは真面目にやっているのか、俺は教室に残される。

 しばらくの自由だ。

 お嬢ちゃんから小一時間離れても、体に変化も無いから問題ない。

 少し寝かせてもらおう……


 ………


 ん? 誰か来た。

 いつもはお嬢ちゃん達が居なくなると、帰って来るまで無人なんだが……

 あの男。キョロキョロして、何をしてるんだ?

 後ろの箱に何か入れて出て行ったな。

 もう少し寝ていたかったが……気になる。


 寝るのは後にして、何を入れたか見ておこう。

 よいしょ。

 小さいと、後ろの棚に登るのも一苦労だ。


 ふぅ。なんとか着いたな。

 たしか……この箱だったな。

 上から入れそうだ。

 よっと。


 この黒い物体は、なんだろう?

 どけて見たら小さな穴が開いているな。

 少し暗いし、外に出して見てみよう。


 カメラ?

 旦那さんの使っていた物と形状は違うが、ガラスの形が似ている。

 なんの為に置いて行ったんだ?


 まぁ俺には関係の無い事だ。

 寝よ寝よ。



 ………



 ん? 騒がしい……

 お嬢ちゃん達が戻って来たみたいだな。

 皆、着替えている。


「あ〜〜〜!」

「どうしたの?」

「これ見て!」

「なに〜?」


 なにか騒いでいるな。

 これもいつもの事だが、もう少し静かにしてもらいたいものだ。


「これ、カメラじゃない?」

「本当だ!!」


 あ……しまった。

 出しっぱなしにしてしまった。

 まぁアレぐらいなら、たいした問題じゃないだろう。


「大問題だよ!!」


 なんだと!?

 ちょっと、片付け忘れただけだぞ?


「先生に報告しよ〜!」

「うん! そうだね!!」


 あの先生か……

 優しい先生だと思うけど、怒った時の冷ややかな目は怖いんだよな。

 だが、俺は管狐。

 見えていないから、怒られる事はないだろう。


「ねえねえ。ヨウコ?」


 ん? お嬢ちゃんがコソコソと話し掛けて来た。

 学校では奥さんに話し掛けてはいけないと言われていただろ?


「あのカメラって、ヨウコが出したの?」


 いや、その、なんだ……


「怒らないから、本当のこと教えて?」


 ……そうだ。

 うなずきでわかるだろ?


「やっぱり! ヨウコ。お手柄だよ!」


 お手柄?

 何故、そうなる?


「どんな人が置いていったかわかる? バレないように、ノートに書いて」


 その前に、お手柄を説明して欲しいのだが……

 まぁいい。

 たしか、若い男だ。


「おっけ〜。後で先生に伝えておくよ」


 先生に伝える?

 俺が見た事を、お嬢ちゃんがどうやって伝えるんだ?


「カメラがどこにあったか教えてくれる?」


 おっと。先生が来たな。


「これは……」


 箱をよく見ているけど、何かおかしなところがあるのか?


「誰か。何か見たって人いない?」

「は〜い」

「ひよりさん? 何を見たの?」

「わたしじゃないんだけど、若い男の人が置いて行ったって聞きました」

「誰が見たの?」

「それは……」


 やはりな。

 伝えたのはいいけど、その先は考えていなかったか。

 俺を見ても、わかってもらえないぞ?


「まぁいいわ。次の授業は自習にします」


 ホッ。追求はなかったみたいだな。

 それどころでは、ないみたいだ。


「あぶなかった〜。もう少しでヨウコの事を話すところだったよ〜」


 うん。それぐらいの未来は俺でも想像出来たんだから、考えような?


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