23 管狐 朝のお仕事
俺は管狐。
どうやらお嬢ちゃんは、今日から学校に行くみたいだ。
だが、休みが長かったせいか、なかなか起きてくれない。
いつの間にか、お嬢ちゃんを起こす仕事をしている俺にとっては大問題だ。
奥さんが起こしに来る前に、なんとか起こしたいのだが……
致し方ない。
強行手段に出よう。
まずは腹の上に乗って飛ぶ!
………
ダメだ。
体重が感じられないせいか、全然効いていない。
ならば、勢いをつけてやってみよう。
勉強机に登って……ダイブだ!
「う、うう〜ん……」
起きたか?
「ヨウコがモフモフ〜。やっぱり九本の尻尾は違うね〜」
増えてないから!
どうやらお嬢ちゃんは、幸せな夢を見ているみたいだな。
勢いをつけても起きないみたいだな。
次の一手だ。
尻尾を鼻先に近付けて……コチョコチョ〜。
「む……むむむむ……蚊が……」
ぐふっ!
お嬢ちゃんの振った手が、俺にクリーンヒットしてしまった。
子供の小さい手と言えど、小さい俺には大ダメージだ。
この方法でも起きないか。
う〜ん……
奥の手を使うか?
お嬢ちゃんが苦しむ姿を見たくなかったが、仕方がない。
顔に乗って、口と鼻を体で覆う!
「う……苦しい……」
お嬢ちゃん。早く起きるんだ。
「う……うう……もう!」
な!?
体を鷲掴みにされて、持ち上げられてしまった。
いや、これで起きたのであろう。
「ヨウコ。モフモフ〜」
しまった!
抱き抱えられてしまった……
これでは身動きが取れない。
力、及ばず……
お嬢ちゃん。すまない。
しかし、お嬢ちゃんの温もりに抱かれると、俺も気持ち良くなって眠気が……
「スピーーー」
スピーーー
………
「ひより。いつまで寝てるの! もう朝よ!!」
「ムニャムニャ。あと、5分……ムニャムニャ」
ムニャムニャ。あと、5分……ムニャムニャ。
「もう! 二人して気持ち良さそうに寝て〜。コチョコチョコチョコチョ」
「あ、あはは。あははははは」
「起きた〜?」
「あははは。起きたからもうやめて〜」
スピーーー
「む……ヨウコが寝てる……起こしてって言ったのに〜。コチョコチョコチョコチョ」
あ、あはは。あははははは。
お、お嬢ちゃん。やめてくれ!
あははは。
奥さんに起こされると、お嬢ちゃんは必ずこちょばされるから、早く起こしたかったんだ。
そして、俺もとばっちりを受けるからな。
あははは。
もうやめてくれ〜〜〜!!