21 管狐 秘密を知られる
俺は管狐。
今日はお隣のお姉さんの家に来たが、化け物と再開した。
なのにお嬢ちゃんが従えてしまった。
どうなっているんだ?
「とりあえず、私の部屋に行こっか?」
「うん! コマとマコも行こ!」
「えっと……コマとマコはこの場所から動けないんだ〜」
「そうなの? じゃあ、また遊ぼうね〜」
「「くぅ〜ん」」
どうやらお姉さんの部屋に行くみたいだ。
二匹の犬は、お嬢ちゃんと離れるのは寂しそうだな。
「はぁ……ビックリした〜」
お姉さんは部屋に入るなり、ため息を吐いたな。
俺も緊張がやっととれたから、気持ちはわかる。
「なんで〜?」
「ひよりちゃんは凄い事をしたのよ。コマとマコは、普段、人には見えないし、見えたとしても、なついたりしないのよ」
「ふ〜ん。でも、いい子だったよ〜」
「そ、そうね。いい子だよね」
「あ! お姉ちゃん……おトイレ借りていい?」
「うん。出て右に行った所にあるよ」
「ありがと〜」
奥さんにトイレに行けと言われていたのに、行ってなかったからな。
仕方がない。
肩に乗ってる俺もついて行くしかない。
「あ! ヨウコちゃんは留守番ね」
うお!
お姉さんに鷲掴みにされてしまった。
お嬢ちゃん以外の人に、触られるのは慣れないから、いきなり触るのはやめて欲しい。
おかげで、お嬢ちゃんに置いていかれてしまった。
「ヨウコちゃんにも驚かされたけど、ひよりちゃんにも驚かされてしまったわ。霊力が強いとは思っていたけど、あそこまで強いとは……」
独り言か?
それなら、俺はお姉さんの膝に乗せられる意味は無いのだが……
「ヨウコちゃんも驚いたよね?」
俺と話していたのか?
まぁお嬢ちゃんには、驚かされてばかりだから、うなずいておこう。
「そうよね。そういえば、ヨウコちゃんはひよりちゃんに、どうやって使役されたの?」
使役された訳じゃない。
ただ、命令に逆らえないだけだ。
「あ、話せなかったわね。ちょっと待って。鉛筆とノートを……はい。これにひよりちゃんとの出合いを詳しく書いて」
詳しくか……
ならば、ご主人様のところから書くか。
「へ〜。ご主人様と離れ離れになったところを、ひよりちゃんに救われたんだ」
違う。殺されかけたんだ。
「え? そんな方法であやかしが消えるの? なむあみだぶつって、唱えるだけで消せるなんて……有り得ない……」
そうだな。
でも、事実だ。
「ひょっとして、ヨウコちゃんは無理矢理使役されているの?」
半ば無理矢理だったが、今ではお嬢ちゃんに感謝している。
「ふ〜ん。いい主に出会えて良かったね」
いや。今でもご主人様が迎えに来てくれるのを待っているんだ。
「そっか〜……じゃあ、私が探してあげる」
出来るのか!?
「管憑きの霊能者を調べれば、すぐにわかると思うよ。どこの出身か……は、わからないか。名前はどう?」
それならばわかる。
「クリスティーナ・フラワー・ナターシャ? 外国人なの?」
日本人だ。
肌は普通の人より黒いがな。
「ハーフね。それなら少ないから、すぐに見付かるね」
そうか。
これでご主人様の元に帰れる。
ありがとう!
「お姉ちゃん。ヨウコと何してたの?」
「ちょっとお話してたの」
「え?」
あ! お姉さん。それは秘密に……
「ひらがなは書けるみたいよ」
「ヨウコ……どうして教えてくれないのよ!」
当然だ。
「毎日お話、出来たのに〜」
それが面倒だったからだ。
ただでさえ、毎日話し掛けられて迷惑していたからな。
「でも、わかったから、毎日お話しようね〜」
うっ……
お姉さん助けてくれ。
目をそらすな!!