20 管狐 化け物と再開する
俺は管狐。
今日は奥さんと旦那さんは、庭の手入れをするらしい。
なので、お嬢ちゃんは手伝う事が出来ないので、お隣のお姉さんと遊ぶみたいだ。
お隣のお姉さんには、一度怖い思いをさせられたが、今では学校に通う道すがら、撫でられ続けている。
そういえば、いつも歩いている道で待ち合わせしているのだが、お姉さんの家を見た事がなかったな。
隣と言うからには近いと思うのだが、それらしい建物は木の多く生えた場所に見えるぐらいだ。
どうやらそこに向かうみたいだな。
ここは……見覚えがある。
犬の化け物が居た場所だ。
お嬢ちゃん。ここは危険だ。
すぐに逃げた方がいい!
「ヨウコ。どうしたの? 行きたくないの?」
そうだ!
お嬢ちゃんより大きな犬が居るんだ!
「怖いの? 神社が怖いなんて、ヨウコは子供だね。お化けなんて出ないから、大丈夫。行くよ〜」
お化けじゃない!
俺は管狐。
似たようなものだから、怖くない。
怖いのは犬の化け物だ。
お嬢ちゃんも行かせたくないのだが、命令されたからには、ついて行くしかない。
もう出て来ないことを祈るしかないな。
「ふぅ。この長い階段を登りきれば……到着! ほら。怖くないでしょ?」
今のところはな。
あのデカかった犬は……居ない。
どこだ?
「たしか鳥居をくぐる前にお辞儀。はい。ヨウコもね」
ああ。ペコリ。
出て来るなよ〜。
……お嬢ちゃん! 危ない!!
「え? あ! おっきいワンコだ〜」
ダメだ!
お嬢ちゃん。近付くな!!
「かわいい〜」
デカイから、怖いの間違いだろ?
早く逃げよう!
「「ぐるるぅぅ……ワン! ワワン!!」」
「あれ? ヨウコに吠えてる?」
俺だけ?
お嬢ちゃんもじゃないか?
「ヨウコをイジメちゃダメでしょ! メッ!!」
そんなこと言っても無駄だ。
相手は化け物だ!
「「くぅ〜ん」」
へ?
「よしよし。怒ってゴメンね。でも、ヨウコと仲良くするのよ?」
「「くぅ〜ん」」
はい?
お嬢ちゃんが、化け物犬を撫でている……
化け物犬も、腹を見せて絶対服従になっている……
どういうことだ?
「ひ、ひよりちゃん! コマとマコも何してるの!?」
お姉さんも慌てているな。
気持ちはわかる。
お姉さんよりデカイ犬が、絶対服従しているからな。
「お姉ちゃん。この子達、コマとマコって言うんだ。かわいいね〜」
「う、うん……」
デカイし顔も怖いもんな。
そんな反応になるだろう。
俺もだ。
「えっと〜……どうなってるの?」
「この子達が、ヨウコをイジメようとしたから叱ったの。そしたらわかってくれたみたい」
「あ……ヨウコちゃんがあやかしだから、コマとマコが出て来たのね。この二匹は狛犬って言ってね、悪いあやかしが入って来たら、追い払ってくれるの。二匹は仕事をしただけなのよ」
「そうなんだ。エライね〜。でも、ヨウコは悪いあやかしじゃなくて、妖狐なんだよ。だから、次からは吠えないでね?」
「「くぅ〜ん」」
悪いあやかしでは無いけど、違う。
管狐だ。
「コマとマコが、ひよりちゃんになついてる……」
お姉さん。
気持ちは痛いほどよくわかるぞ!