表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/64

02 管狐、野で生きる


 俺は管狐。

 どうやらご主人様に置いていかれたらしい……

 いやいや、優しいご主人様の事だ。

 気付いたら、すぐに迎えに来てくれるはずだ。

 動かず、ここで待っていればいい。


 しかし、腹が減った。

 ふだん俺の腹は、ご主人様から漏れる霊気で満たされていた。

 ご主人様から離れると、腹が減るんだな。

 心なしか体がしぼんで来ているような……まずい!

 早急に霊気を補充しなければ、ご主人様が見付けてくれる前に死んでしまう。


 こういう時、どうすれば……

 そういえば、ご主人様が庭の一角で瞑想する時に、「ここは霊気がみなぎっていて、力がわくっしょ〜」って、言っていたな。

 あの場所に辿り着ければ……


 ダメだ。

 ここがどこかもわからない……


 ならば、似たような場所を探せばいいのでは?


 その様な場所があるかどうかはわからないが、時間が無い。

 生きてご主人様に会う為には、霊気の出ている場所を探さねば!



 俺は決意を胸に走り出す。

 しばらく走ると、嗅いだ事のある匂いが鼻に入り、木の根元にある匂いの元に近付いて行く。


 この匂いは、やはり霊気の匂いだったか。

 わりと早く見つかってくれてよかった。

 これで命をつなげる。

 さっそく、いただきま〜す。



 俺は地から漏れ出る霊気を、大きく口を開けて吸い込む。



 む! これは……マズ〜〜〜イ!!

 ご主人様の霊気と、雲泥の差だ。

 しかし生きる為には、これを吸う以外の選択肢が無い。

 ご主人様が迎えに来るまでの辛抱だ。

 ご主人様には零号ジイサンもついているし、力を合わせれば、すぐに俺を見付けてくれるだろう。

 だが、今日はもう日が暮れてしまっている。

 俺が居なくなった事に気付いてはいるものの、探しに来るのは明日になるか。

 今頃、俺が居なくなって心配してくれているはずだ。

 明日からまた、ご主人様の仕事を手伝わなくてはいけないし、今日はこのまま休もう。



 俺は木の幹を枕に目を閉じる。明日から始まる新生活を夢見ながら……



 それから一週間……地獄だった。



 霊気が漏れ出ていた場所も、俺が霊気を吸っていたせいか、翌日の昼前には出なくなり、別の場所を探すハメとなった。

 幸いマズイ霊気なら、距離を開けると出ている場所はあったので、匂いで見付ける事が出来た。

 しかし、どこも俺が居ると止まってしまうらしく、移動を余儀なくされた。


 その移動の際に、犬、猫、カラスに追い回され、命からがら逃げ回った。

 ご主人様に占いを依頼しに来る人間には、見えていなかったのだが、どうやらアイツらは、わずかながら霊感があり、俺の姿が見えるようだ。


 何度も追い回されていたが、逃げ切ったとある場所で、うまそうな霊気のあふれる場所を見付ける事があった。

 腹も減っていたので、これ幸いと門を潜ったが、二匹の化け物に食われかけた。

 門の中にあった二体の犬のような石像に似ていたが、あの化け物は、いったいなんだったのであろうか……

 門から出たら追って来なかったから助かったが、あのうまそうな霊気の場所は、化け物の住みかなので、近付かないようにしよう。


 いや、もう近付く事は出来ない。

 その後、猫に追い回され、犬に追い回され、ここがどこかもわからない。


 ただ時折、人間が通るが、俺には気付かないようだ。

 俺の隣にある小僧のような石像に、手を合わせる人も見受けられるから、なんらしかの力があるのかもしれない。

 現に、ここの霊気は、そこそこうまい。

 せめて、このまま二日ほど休ませてくれると、ありがたいのだが……


 俺が考え事をしていると、懐かしい匂いが鼻に飛び込んで来た。


 ご主人様!!


「ママ〜。小さいキツネさんがいるよ〜」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ