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19 管狐 掃除をする


 俺は管狐。

 今日は家でゆっくりしている。

 当然だ。

 ゴールデンウィークに入ってからというもの、外に出て遊んでばっかりだったからな。

 今日は奥さんが掃除を頑張ると言って、旦那さんをコキ使っている。

 お嬢ちゃんも自分の部屋を、頑張って掃除すると、息巻いている。


「ヨウコ〜。疲れたよ〜」


 いや、息巻いていた。

 開始早々、弱音が出てきたな。


「ヨウコも手伝って〜」


 物の移動なら任せろ。

 ご主人様の元で、こういう仕事はよくやっていたから、お手の物だ。

 ただ、どこに移動したらいいか指示が必要だがな。


「じゃあ、ヨウコは窓を拭いてね」


 窓!?

 想定外の要求が来てしまった。

 床や机ぐらいは拭けるのだが、窓は初めてだ。

 命令だからやるが、出来るかどうか……少し自信が無い。

 この布を使えばいいのか?

 あと、お嬢ちゃんはこのスプレーかけていたな。

 スプレーを窓の近くに転がしていって、立てる。

 そして、ここを押すんだったな。

 よし。あとは布で拭く。

 ふぅ……なかなか上手く出来ただろう。


「ヨウコ〜。上が拭けてないよ〜」


 当然だ。

 届かないからな。


「あ! 届かないんだ。怒ってごめん」


 いいんだ。

 俺も応えられなかったのが悪い。


「じゃあ、床の拭き掃除をお願いね」


 ああ。任せろ!

 この変な臭いのする湿った布を使えばいいのか?

 ご主人様の家と違って、雑巾じゃないんだな。

 絞るのが苦手だったから助かる。

 よし。ダッシュだ〜。


「ヨウコ。はや〜い」


 ふふん。得意分野だからな。

 それに、お嬢ちゃんのおかげで力も上がっているから、スピードも上がったみたいだ。


「でも、ちょっとしか拭けてないね」


 当然だ。

 俺は管狐。

 お嬢ちゃんのおかげで体が大きくなったと言っても、人間と比べると、まだまだ小さいんだ。

 ご主人様のところでは、九匹の管狐で一斉に雑巾がけをしていたから早かったんだがな。


「そうだ! ヨウコが空狐になったらいいんだよ。どの本だったかな? これこれ!」


 空狐?

 いつもと違う本を引っ張り出して来たな。

 どれどれ………人間じゃないか!!

 もうキツネの要素も少ない。

 女の子に耳と尻尾が付いただけだ。

 そもそも俺は管狐。

 人間にはなれない。


「これなら、一緒に学校も通えるし、尻尾もモフモフ出来るね」


 モフモフなら今もしているだろ。

 それにあやかしが学校に通えるのか?


「う〜ん。この姿で尻尾が九本にならないかな?」


 俺は管狐。

 人間にも九本の尻尾を生やす事も出来ない。


「ひより。掃除は終わった〜? わ! よけい散らかってるじゃない!!」


 それは当然だ。

 本を探すのに、放り投げていたからな。


「こ、これは……ヨウコがやったの!」


 俺のせいにするな!


「ヨウコちゃんは首を振ってるけど……」

「うぅぅ。ごめんなさい」

「反省してるのね」

「うん」

「ならよし。一緒に片付けよ」


 ホッ。

 俺のせいにもされなかったし、お嬢ちゃんもそんなに怒られなかったな。

 でも、お嬢ちゃんが恨めしそうに睨んでいる。


「裏切り者……」


 先に俺を売ったのは、お嬢ちゃんだ!


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