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18 管狐 好物が出来る


 俺は管狐。

 ピクニックの昼食の際、レベルアップして家族に見えるようになってしまった。


「ヨウコちゃんはモフモフして、触り心地がいいわね」


 見えるようになっただけでなく、触る事まで出来るのか。

 本当に俺の体に何が起きているんだ?


「ヨウコちゃん。ひよりを助けてくれてありがとう。あなたのおかげで、ひよりが死なずにすんだわ」


 礼は受け取るが、大袈裟だ。

 迷ったのは、林の中と言っても数分のところだ。

 動かなければ、すぐに見付けられたはずだ。


「そうだ! ヨウコちゃんのお弁当もあるのよ。ヨウコちゃんの大好物のいなり寿司。お口に合うといいわね」


 そんな事、一言も言っていない。

 そもそも、お嬢ちゃんの家で厄介になってから一ヶ月、食事というものを貰った事すらない。

 当然だ。

 俺は管狐。

 お嬢ちゃんから漏れる霊気を吸って生きているからな。


「はい。召し上がれ〜」


 だから、無理だ。

 ご主人様の所に居た時ですら、物を食べた事がない。


「ヨウコも食べなよ〜。おいしいよ〜」


 お嬢ちゃんの命令なら仕方がない。

 食べれるかどうかわからないが、努力してみよう。

 まずは手を合わせてだったか?


「ヨウコちゃんは、お行儀もいいのね〜」


 一通りの作法は見ていたからな。

 そして、この三角形の物に噛み付けばいいのか。


 ガブッ!


 これは……うまい!

 ジューシーかつ、甘い物が口の中に広がる。

 そして、さっぱりする口当たり。

 お嬢ちゃんの霊気も美味しいが、これはこれで、違う満足感に満たされる。


「あら? 気に入ってくれたみたいね。もう食べ切ってしまったわ。まだまだあるから、好きなだけ食べてね」


 うまい、うまい。

 これで五個目だ。

 しかし、この体のどこに入っているんだ?

 食べた量は、体の半分ぐらいいったかもしれない。


「ヨウコ。おいしい?」


 ああ。うまい。

 こんなにうまい物を食べさせてくれて、お嬢ちゃんに感謝だな。

 このままお嬢ちゃんに主人になってもらうか?

 いやいや。

 俺を呼び寄せたのはご主人様だ。

 裏切る訳にはいかない。

 しかし、うまいな。

 俺用に用意されたいなり寿司が、俺の腹に消えてしまった。

 お嬢ちゃんのは、まだ余っているな……


「ダメ! これは私のなの〜!」


 そうか。貰えないのか……

 まぁ初めての経験で食べ過ぎてしまったかもしれない。

 少し体が重くなった気がするけど、気のせいだろう。


「「ごちそうさまでした」」


 おっと。

 作法だから、俺も手を合わせよう。


「お粗末さまでした」

「もう少しヨウコと遊んで来る〜」

「今度は絶対に遠くに行っちゃダメよ。ヨウコちゃんも止めてね」


 わかったが、お嬢ちゃんも、二度も叱られるような事はしないだろう。


「うん! もうしないよ〜。ヨウコ、行くよ〜」


 と、言いながら、チョウチョを追いおけるな!


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